感染症の危機のなかで

私立学校によってはオンラインでの授業再開、また大手学習塾ではすでにオンラインに授業を切り替え、と「オンライン授業」という言葉をよく聞くようになった。今はYouTubeも含めて分かり易い、高品質な授業がオンラインで提供されるので、上位3分の1の生徒にとっては、これまでの教室での授業を聞くよりも効率的に、より高度に学習することがオンライン授業で出来るだろう。

上位3分の1の生徒はそれでよい。問題はその他3分の2の生徒だ。その他3分の2の生徒にとって、学習環境で最も重要なのは「チェック機能」である。

チェック機能の存在しない授業はあり得ず、チェック機能のない授業があったとしたらそれは何の意味も持たない。この点で、学校のような大人数を一斉に扱う教育現場において、オンライン授業を提供したものの、チェック機能をどのように実行するかが最大の問題点となっているだろう。

授業は理解したか、理解していないか、は意味がなく、問題が実際に解けるか、解けないか、が最も大切なはずである。「この子は授業を理解してるけど、問題が解けないのよね~」というのは、授業を理解しておらず、その指導そのものが意味をなしていないことを先生自身が暴露してしまっているようなものである。

対面授業に代わるチェック機能は真の意味で実現できるのであろうか、というのは私の中で結論が出ていない。むしろ、学校や大手塾といった「密集・密室・密接(3密)」の大量生産・大量消費型の教育モデルは崩壊し、学校が出現する以前の時代の、分散型で超少人数の寺子屋的なモデルに教育が戻らざるを得ないのではないか、という気もする。ま、これについては当塾が良いのか、という訳でもないと思うので議論の余地は多々あるだろう。クオリティや環境の問題も踏まえて、あくまで何となく、という話だ。

休校中の学校の話に戻ると、果たして現在の状況で5月7日に学校が再開するとも限らない。場合によっては5月中は休校を延長し、夏休みを無しにして夏から再開ということも考えられるかもしれない。となると、学校としては休校中の打つ手が無くなっていくから、大量に課題を出すケースが出てくる。もう生徒の手が止まらないくらいに膨大な量を、だ。

この場合、意味のある宿題ならばまだしも、やはり生徒の理解や発達段階によって出題すべき宿題を変えなければならないところを一斉宿題となると、これは生徒のための宿題というよりも出題側の「出してますよ」的なアリバイ作りのための宿題ともいえる様になってくる。こうなったらしわ寄せを食わされる子供が最も悲劇である。

授業の停止については、2ヶ月授業が停止したら、停止した地点から再開すればよいわけではなく、「現状維持は衰退のもと」であるので停止した時点でどんどん学力が下がっていく。そのため、全国的に恐ろしいほどのレベルで子供たちの学力が現在低下していることは言うまでもなく、これはこれで国家百年の計として深刻である。授業再開は過去1年以上の復習から始めるべきで、恐らくそれは時間の問題で実現しないだろうから、進度についていけないギャップを抱える子供がまたこれから大量に生み出されることは容易に想像できる。極めて深刻だ。

体力面で見ると、
休校中の最大の問題は学力面と同じくらいに体力面の落ち込みがもっとも不安要素になる。というのは、不登校の生徒に起きやすいパターンだが、成長期の小・中・高校時代に不登校になってしまう最大の残念な点は、基礎体力が養われないためその後18歳以降になってスタミナが持たなくなるということである。体力は気力の母であり、体力がないと眠気を催すから集中力や学力にも影響を及ぼす。毎朝同じ時間に起きて学校に行くことも、体育だけでなく、教室移動や掃除といった行為にも体力づくりの基盤が含まれていたりする。

運動不足はネガティブな気分もため込んでしまうので、性的な欲求も含めて良いことが無い。なので、人との接触の少ない河川敷などでランニングや親子でキャッチボールをしたり、ということが出来るならば出来る限りしておきたい。もちろん、そんな悠長なことを言っていられないご家庭もほとんどだろう。

以上を踏まえて、当塾に出来ることは一日でも長く通常通りに開塾することであり、勉強面・体力面・メンタル面で少しでも何らかの足しになるよう続けていきたいと願っているが、生野区の病院で大規模クラスターが発生するなど危機的な状況が更に迫っており、大阪府の病床数がひっ迫している現状を見ると、当塾でさえ現状の開塾でこのまま推移できるとも言えなくなるだろう。無症状感染というのも本当に厄介である。

とにかく、世情が長期的に不安定になるため特に女子生徒においては、GPSで家族が位置確認できるようにすること、防犯ブザーの常時携帯、必ず本町通など表通りを通って裏道を歩かない、ご家庭の送迎が可能であればビルまたは途中地点での出迎え、といった通塾時の身を守る策は更に必須になる。

長い歴史のスパンで見れば、80年周期説または78年周期説といわれるサイクルがあって、ちょうど2023年頃が厳しい状況の谷底になるという見方がある。COVID-19はたまたま一つのきっかけに過ぎず、地震等の災害が同時に頻発していくことも考えられる。不安におののくのではなく、こういう危機の時代にこそ渋沢栄一のような先人の教えを学び、手前の危機に対処するだけでなく、盤石で不変の思想を一人ひとりが身につけて、次の新時代に自ら繋げていく必要がある。