大阪府立高校入試の傾向

ちょっと前になるが、5月に梅田で行われた教育開発出版の「大阪府公立高校入試分析」でメモしてきた内容をそのまま記してみる。講師は全国47都道府県の公立高校入試をくまなく解き、長年にわたり分析し続けておられる株式会社サイラブの白井孝明氏。

ランダムに箇条書きで並べるが、近年の入試傾向がはっきり読み取れる。

◎文字数の多い問題には読まなくてもよい文字が多く含まれている可能性がある

◎大阪府の公立高校入試問題
→理社を中心に古風な問題が多い
→英語B問題=文法・知識問題が多い
→英語C問題=本質は読解(国語力が必要)。文法ではなく読解。通読・・・文脈を読まないと解けない。特定の単語を見つけるだけでは解決しない。書いてあることから書いていないことを導く(推理・推論)、隅々まで文章を見て推理する。
→数学B問題=図形問題が多い
→数学C問題=難問が多いため、今はまだ従来型の難問を多く解けばよい

◎京都府の問題は独特で変わっている

◎資料問題が増えている県は新しいもの好き

◎各教科ともに資料問題(データの読み取り)、教科融合問題(社会科なのに算数の比の計算が入っている)が増えている。資料問題だけで夏期講習の1科目にしても良いくらいで、これからの生徒は数値が扱えなければ致命的になる。

◎英語と国語の連動した問題(塾で先生が1人ならよいが、教科ごとに複数の先生だと大変)。Speaking,Writingの試験において、文法の骨格を押さえているかどうかが暴露されてしまう。

◎10年前の大阪の国語で出題された問題が、現在英作文で出題されている、今後それがSpeakingへの出題と変化していく。(内容は同じだが、出題形式が変化していく)

◎大阪府の数学はまだ従来型の難問の練習で良いが、今後はこれらのパターン練習では通用しなくなっていく。

◎複線型読解の数学
→いつでもすぐに数学を使える状態になっているか?が問われる問題の出現(数学は何のために必要か?という問いに対する作問者の反撃か?)

◎知識を問わない情報型の問題が増えている

◎複線型読解=あれもこれも見ないといけない、正確にきちんと読める力が必須

◎神奈川県2018年、地図読み取りの問題
→問題文を読まずに地図を見て直感的に答えたら不正解になる問題。この問題において地図は意味がない。間違えた生徒に問題文をよく読むことを教えたら正答率が上がった。すなわち、問題文が面倒で読まずに不正解になっているケースが非常に多い。

◎たくさん問題を解いてパターンを覚える方法は通用しなくなっていく。情報化時代は問題パターンを変えて出題してくる。

◎答え合わせだけをしても意味がない。なぜ間違えたのか、どこを間違えたのか、フィードバックが重要。

◎何も考えないでテスト直しをしている生徒が多い

◎読解力は通塾・読書量に相関しない

◎「わかる」とは「分ける」ことから始まる。基本は「分割」して整理すること

◎下手な作文=問われたことに答えていない

◎国語の対策=「スラッシュリーディング(切れ目を入れながら読む)」「音読」「語彙」

情報化時代ということで、大量の情報を手際よく区別しながら正確に処理していく力が必須で求められているということだろう。
また、知識そのものはGoogleで検索すればPCでもスマホでもすぐに得られるので、知識の多い・少ないにそれほど価値はなく、考えて仕事しているか否かに価値が置かれる時代である。そんなこと当たり前の話だが、世の中に情報やモノがあふれるほど無思考になって受け身の態勢になる人が増えている(選挙の投票率の低さもそれであろう)のも事実だ。「あー、この人は仕事ができるな」と思わせる人はやはり自分の頭で考えているし、「駄目だな」と思わせる人は自分の頭で考えていない(思考停止)ことがほとんどだ。

あと、教科融合問題が増えているというのも今の時代のニーズに沿っていて、AIに仕事を取って代わられて無職になるのではなく、AIにどういった既存の業種を掛け算したら新しいビジネスが創出できるかを考え続けなければならない「掛け算」の時代にこれから入っていく。となると入試問題も、数学なのに社会、国語なのに理科、英語なのに数学、のように教科の境目が読めない融合問題に柔軟に対応できる生徒が評価されるようになるということも、必然の流れであろう。