最新高校入試傾向2019

先日、新大阪で最新の入試分析会があり、出席してきた。講師はエデュケーショナルネットワークの向井菜穂子先生。

【全国的な方向性】
◎国語
+文章を読んでも文意の理解できない子どもが増えている
+情報の扱い方の授業が小1から始まる
+読む→情報(資料)を整理する→自分にとって必要な情報を取捨選択する

◎英語
+全国的に、英語が出来ない生徒の救済は「しない」方向の作問
+文法単体の問題よりも、読解の内容把握が中心になる(国語と変わらなくなる)
+長文のなかで文法・単語を把握する(読解のための文法)
※2020年4月、小学校教科書全面改訂。以降、順次中学・高校の教科書が変わる
→全国的に全科目で問題が長文化する(文章量・ページ数が従来の1.8倍)

◎数学
+手間を掛けて努力で解答を導く問題よりも、知識活用の問題が増える(類題演習が必須)
+計算問題で確実に得点する
+数学の問題のなかで「抽出」という言葉を用いただけで正答率が40%も下がっている(「抽出」という語彙を知らないだけで、ヒントを与えられれば解ける生徒が多い)
→つまり「数学×国語」のように教科の枠が取り払われつつある。ここに防災・キャリア教育の要素が作問に入ってきている。長文のなかから自分に必要な情報を取捨選択して自分の持っている知識と組み合わせて表現する

※数学教科書について
紙面にQRコードが増え、動画とリンク。練習問題は従来580問が今回760問に増加(平均)。さらにQRコードで演習問題へ紐づけされる。

◎理科・社会
+会話形式の問題文になり、あえて読みづらくしている
+文字量が増え、「何を言っているのか」を読み取らせる形式
+一問一答の問題は減りつつあり、1問につき2~3答の混ざった複合問題になる
+これまで以上に正確な理社知識が必要で、中3からの受験勉強開始では間に合わない

【大阪府立】
◎国語
+『知の体力』(永田和宏・著)=著者は細胞生物学者であり歌人。観点の複合化が進んでいる(例:雑草の研究を人間の生態に置き換えて読む)
+馴染みのない漢字が書けていない(正答率30%以上の漢字を書ける=出来る生徒、正答率30%以上の漢字が書けない=出来ない生徒)

◎英語
+A・B・C問題でレベルがはっきり分かれた
+B問題を目指す生徒はA問題を固めてから
+C問題は英検2級~準1級レベルの大学入試に対応できる生徒を求めている
+長文読解力をつける(地域固有の課題が問題文に反映されている=例:大阪の話題+科学の話題の融合、Youtuber、災害時のSNS利用)
+高校入試の英語は「ミス」に注目される問題(文法のミスで減点)
+数学よりも英語が苦手な生徒が多い
+学力下位の高校では、高校3年間で中学の授業内容を繰り返すことになる
+英作文は同一表現の繰り返し使用で減点。必ず筋道を立てて書く

※2022年、高1教科書改訂・・・論理・表現が加わる
→旅行で使える英語力ではなく、論戦できる英語力が求められる

◎数学
+計算結果の数値が全国で最も汚い(129/628など)
+最頻値を求める問題のように日ごろ慣れにくい問題の正答率が低い
+全国の公立入試問題を練習しても力がつく
+「合同・相似の証明」から一歩進んで「二等辺三角形であることの証明」など増加
+過去問で慣れのある問題は解けているが、演習の不足している問題は解けていない
→私立の難関校or大学付属の入試問題を練習する

◎理科
+生物は暗記中心
+物理・化学は実験手順を理解する(石灰水が白く濁ったのはなぜか=原理と結果の理解が無いと出来ない)
+知識を習得したら、あとは新傾向の問題に慣れる

◎社会
+一問一答形式で正確な知識の定着が最重要
+他県の頻出問題が出題されるので、上位生は他県入試の記述問題を活用する

以上。

↑の話題と共通する内容も多い。

要点としては、

◎教科の複合化が進んでいる
社会科なのに統計問題が入って数学の計算が必要、英語なのに国語のような読解が必要、といった教科の枠組みが薄れつつある。

◎長文化が進んでいる
問題文がやたらと長くなり、長い文章から要点を自分で見つけ出さないといけない。これはまさに情報化時代を象徴しており、インターネットのあふれる情報から真贋を見極めて、必要な情報を見抜く力が大切。そういった現代社会の状況と入試問題が完全に連動している。

◎やはり、基礎力
基礎を勉強して基礎的な問題が出題されるのではなく、基礎を盤石に固めて応用問題にトライすることが主流になっている。従って、「基礎が出来て当たり前だよね」という風向きになっているので、基礎さえできない状況であれば置いてけぼりを食うしかない、厳しい時代でもある。