初芝立命館中学校・高校(堺市)

新今宮から南海高野線の急行で17分。北野田駅を降りた瞬間「北野田に、来たのだ!」と天才バカボンのパパの口調で言いたくなったのは、きっと血迷ったオヤジだけではないはずだ。西出口から府立登美丘高校のある住宅街を1.2km南下すると、大阪初芝学園の広大な敷地が見えてくる。

送迎バスは敷地の南側を半周しながら、はつしば学園小学校の先にある正門に到着。駅から乗車した距離はざっと2kmか。徒歩ならば東門から入れるので北野田駅から約15分。

■大阪初芝学園
学園本部は「初芝立命館中・高」「はつしば学園小」を含む北野田キャンパスに設置。前身は昭和12年(1937)創立の大阪初芝商業学校で、平成20年(2008)に学校法人立命館と提携。翌年、初芝堺中学校・初芝高校を初芝立命館中・高に改称した。

<その他の系列校>
◎初芝富田林中・高(大阪府富田林市、近鉄長野線・滝谷不動駅)
◎初芝橋本中・高(和歌山県橋本市、南海高野線・林間田園都市駅)
◎はつしば学園幼稚園(大阪府堺市、南海高野線・初芝駅)

学校法人立命館の理事長である森島朋三氏が本学園の理事長を兼任。これは現在、大阪初芝学園が学校法人立命館により実質経営されていることを意味する。

■先生方のポテンシャルが高い理由
私には本校の先生方一人ひとりのモチベーション、ポテンシャルが高い印象がある。昨年の説明会は急遽欠席することになったが、当日朝の連絡で電話応対してくださった事務の方の印象が私にはすこぶる良かった記憶。その理由を今回の訪問で知ることになる。

花上徳明校長は千葉県の暁星国際中・高を経て、京都の立命館中・高の副校長などを歴任後、2020年4月から本校に着任。

この日の説明会で花上校長と共に登壇された川崎昭治副理事長は立命館宇治中・高を設立の後、北海道にある立命館慶祥中・高の校長を経て、現在は学校法人立命館の理事でもある。

という風に、大阪初芝学園は幹部を立命館本体の出身者が占め、名実ともに立命館グループの一翼を担いつつある。

堺出身の川崎副理事長は「大阪北部に後れを取っている大阪南部、特に堺を教育で盛り上げたい」と本学園への奉仕を自身の人生最後の仕事として位置づけておられる。

■考え方×熱意×能力
川崎副理事長は、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が設立した稲盛経営哲学研究センターにも従事。人間には「考え方×熱意×能力」の三本柱が必要で、このうち「考え方」が間違えていればどうしようもなく、「考え方」をきちんとしないと学校も人生も上手く回っていかないという。

そこで、教職員・生徒の「考え方」に踏み込んで手を入れることを学園改革の手始めとする。その結果が、入学する生徒層の年ごとの変化に如実に表れているようだ。

大阪では今尚その傾向が強い「一斉授業・一斉講義・長時間拘束」の従来型の学校では、教員は教えるだけで満足してしまう。ここを脱して、教員のコーチ力を高め、それぞれの生徒が個々の課題に向き合えるカリキュラムへの転換を進めている。

個々の課題を認識した生徒は自分が次に何をすれば良いのか、その段取りが自ずと見えてくる。課題を認識して、克服する。本学園がこれまで公立学校の授業についていけない生徒を数多く受け入れ、丁寧にサポートし続けた教務力を活かしながら、個に根差した新しい学びを本校で実現しようとしている。

通り一遍の説明会ではなく、「教育の現場」としての思考の披歴(ひれき=心の中を打ち明けること)。こういった幹部の先生方による人間としてのハイレベルな感化が、本校に所属する教職員・生徒に波及しているのだろう。

■立命館大学への進学
本校の中学・高校入試のレベルは年々上昇しており、今春でも昨年比で偏差値が3ポイント程度UPで「入りづらい学校」化が進む。高校入試で併願の戻り率も10年前の10%から今春は23%へ上昇しており、併願の中でも「選ばれる学校」に変化しつつある。

コースは中高ともに「アドバンスト(他大受験)」「立命館(内部推薦)」の2コースに大別。
立命館コースは立命館大学・立命館アジア太平洋大学(APU)の進学率97.3%(在籍111名に対して108名出願。立命館104名・APU4名進学)で、希望した全員が立命館に進学可能。うち8~9割は希望する学科・専攻に内定している。

100%から97.3%を引いた残りの2.7%は、高校での転コースが出来ないため、立命館コースに在籍して他大を受験する生徒とのこと。

立命館コースの在籍生徒は現在、立命館大学で充分通用する学力を蓄えつつあり、中学受験では立命館付属校の中でのトップ、将来的には同志社香里中と同等の学力帯を目指している。

■立命館コース以外の他大合格実績(卒業生200名のうち)
◎国公立13(阪大1、大阪府立大2、大阪市立大1、他)
◎関関同立43
◎産近甲龍125
◎摂神追桃95

この比率から、立命館コースは現状かなり「お得な」コースであることが分かる。現在は他大進学のうち産近甲龍が中心層に見えるが、いずれ関関同立が中心層に移行していくだろう。

■年々高まる、中高をひとつに繋げた成果
私は大阪に居なかったのでリアルタイムで触れていなかったが、今から20年前に本学園の不祥事が続き、これを救済する形で学校法人立命館が本校の経営に乗り出したと推測される。先の川崎副理事長のお話に見られるように、「考え方」の根幹に手を入れるからこそ、上辺だけではない学校改革が着々と進行している。

同じ土俵に載せてはいけないかもしれないが、阿倍野の明浄学院が将来的に化けるかもしれないと思うのは、私から見ると本校の経緯とイメージが重なるからである。

話を戻すが、
不祥事が続いた直後の平成22年(2010)まで中学・高校は別校舎だったが、その後の中高の校舎統合により、特にこの4~5年で中高一貫校としての安定感が出てきた。校内の雰囲気や落ち着き、授業における教員の生徒掌握度も激変したと教頭の東野先生が強調する。

学校改革は、外部から見ればダイナミックな変化に期待感を持つものだが、既に本校に在籍している生徒・保護者、または長年勤務する教員にしてみれば混乱を招かない訳ではないだろう。中間テストの廃止など、大きな変化は戸惑いとストレス、学校への不信を生むのも確かである。しかし、川崎副理事長の話を繰り返すが、「考え方」の根幹から手を入れる改革は見せかけではない本気の進化を学校にもたらすものであり、今後の本校の動向には大いに期待しながら注視していこう。

※追記
本校の中学入試では、大阪の私学の半数が定員割れを起こす中、2019年度以降連続して定員超過となっている。志願者の推移、2019年386(入学114)、2020年416(入学124)、2021年544(入学128)を見ても、急激な難化を迎えている。

ここに至るまでの試行錯誤のひとつであった、2016年度の「難波会場入試」。校外での入試会場設定は画期的なものだったが、大阪私立中高連の「私学はひとつ」の足かせに引っ張られ、次年度以降の中止を余儀なくされた。新しい試みを導入したい本校の先生方から「私学はひとつ」に対する恨み節が出てくるのは当然である。

過去記事で「私学はひとつ」の標ぼうは、募集に困っている私学にとっては横並びで救済、過激な募集対策をしようする学校に対しては「目立ったことをするなよ」と恐喝の意味合いを持つと書いたが、本校のそれはまさに負の事例である。

(2021年9月29日訪問)

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