通信制高校の基礎知識

通信制高校といっても、
NHK学園やレポート課題を自宅で地道にこなす、昔ながらの「通信制」のイメージは大きく変わりつつあり、多様な教育スタイルのいち分野として近年認知度が高まりつつある。
 (※先の記事の東海大も、望星高校という通信制課程を開設している。こちらは昭和34年の設置でレジェンドである)

現在では制服を着て週5日間登校する「全日制スタイルの通信制高校」も登場し、もはや全日制高校との区別すら付かなくなっている。

ただ、私の感覚では関東に比べて、通信制高校に対する認知度、またはアレルギーのようなものを大阪では感じることが多く、当塾の移転直後に某模試会社の営業マンが教えてくれた「大阪は東京に比べて教育のトレンドが5年ずれている」というのは確かに実感するところである。

ずれている、というのは東京崇拝の意図ではなく、大阪は保守的なマインドが強いのだろう。それが悪いということではない。2020年春、大阪で通信制の認可校が複数開校したのは、そのトレンドが大阪でも始まった証左である。

【全日制 vs 定時制 vs 通信制】

◎全日制
朝から夕方まで校内で授業を受けて3年間で卒業する、いわゆる「普通の高校」。

◎定時制
午前部・午後部・夜間部のように特定の時間帯に所属して、4年間で卒業する。ただし、複数の時間帯で授業を受けて3年で卒業することも可能。今や定時制も、昼働いて夜学校に行く、といった昔のイメージではない。

◎通信制
昔ながらの完全通信制の学校もあるが、現在は週1回~週5回で通学スタイルの学校もあれば、午前から開始、午後から開始など、学校によって多種多様。校庭・体育館などのスポーツ設備が不十分だから全日制高校になれない、という通信制高校側の話を聞いたことがある。つまり、校庭・体育館を除けば全日制と同等の学校もあるということだ。スポーツが苦手な子には悪くないかもしれない。基本的に3年で卒業。

【学年制 vs 単位制】

◎学年制
高校生になると、新学年の4月に部活の先輩がホームルームで隣の席に座っていた、という経験をすることがある。「先輩、どうしたんすか」「俺…留年…。」
テストで赤点を取って進級出来なければ、例えば2年生を2回繰り返すことになる。

◎単位制
卒業までの3年間で必要な単位を取ること。
例えば4年制大学は単位制なので、1年2年で楽をしてアルバイトに明け暮れていると、3年生になって必要な単位数が確保できていないことに気付いて3年4年で授業をたくさん入れて、たくさんテストを受けることになる。テストに合格しないと単位がもらえない。規定の卒業単位数を満たさないと卒業できない仕組み。

通信制高校は単位制を採用しているケースが多い。
昔の通信制高校のイメージは「レポート課題を自宅でこなして郵送提出」だろうが、それを学校内で完結してしまうのが全日制スタイルの通信制高校。定期テストがレポート提出に変わっただけ。

また、昔ながらの通信制高校ではスクーリングといって一定期間、どこかの校舎に通って集中的に対面授業を受ける必要があるが、これも全日制スタイルの通信制高校では学校に通うことがスクーリングとなるので心理的な負担は減る。

もう一つは、「学校教育法の第1条」に定められた高校(一条校)を卒業することになるので、全日制であろうが通信制であろうが、卒業資格に変わりはないということ。このあたりの認識不足で通信制高校に対して偏見を持つ人は少なくない。

例えば不登校であったり、何らかの事情を抱えていたり、さまざまな状況に応じて、どこまで負荷に耐えられるか、無理なく有意義に学校生活を送れるか、途中でリタイアせずに卒業できるか。そういったことを総合的に判断しながら、学校選びをすることが大切。

【広域通信制 vs 狭域通信制】

◎広域通信制
広いエリアから入学できるタイプの学校。大阪在住の生徒が北海道の広域通信制高校に入学してしまって、スクーリングが北海道でスキーを含めた合宿とか。人見知りで集団行動の苦手な性格だったらどうするか。

◎狭域通信制
大阪府+隣接府県など特定のエリアに居住地が限られる学校。スクーリングの負担も比較的軽くなる。

【通信制本校 vs 技能連携校 vs サポート校】

◎通信制本校
教育カリキュラムを提供している本体が、生徒の通う学校にあるということ。
(「学習センター」「キャンパス」など、正式な施設なのか、後に述べるサポート校的な扱いなのか名称だけでは区別出来ないのが玉石混交でややこしい)

◎技能連携校
「高等専修学校」や専門学校の「高等課程」を名乗る学校が技能連携校。
例えば、扇町にある学校法人西沢学園が運営する「関西テレビ電気専門学校 高等課程」であれば、専門課程を学ぶために「学校法人西沢学園」と西沢学園が技能連携を結んだ通信制の「向陽台高校」に同時入学し、生徒は西沢学園に通学する。向陽台高校の勉強とレポート提出を西沢学園で面倒見ますよ、というもの。西沢学園に通っているので、スクーリングも西沢学園で完結する。つまり生徒にとっては向陽台高校に在籍している実感は薄い。ダブルスクールなので学費は割高。

◎サポート校
サポート校という名称は目にしたことがあるだろう。サポート校を含めると大阪府内だけでも200を超える施設が存在するという。
サポート校は、言ってみればただの学習塾。例えば当塾がどこかの広域通信制高校と提携すれば当塾がサポート校になる。実際、当塾の移転前に茨城県の某広域通信制高校から提携を打診されたことがある。つまり、教育環境の質は保証されないことと、生徒はスクーリングに際して本校に行かないといけない。それこそ沖縄が本校であれば海でスキューバ合宿のスクーリングといったこともあり得る。

以上、ざっと分類してみたが
大変ややこしいので、生徒・保護者にとっては何が何だか分からないだろう。

それこそ通信制高校に関する不祥事のニュースが流れれば「通信制高校はけしからん」という論調も発生し得る。

しかし、それは理解の不足から起きることが多く、以上のざっとした分類を知っておくだけでも、通信制高校が問題なのではなく、末端に位置する機関が問題なのだと、その病巣を知ることも出来る。

ということで、そういった煩わしいことに振り回されないよう、大阪府下にある私学を束ねる大阪私立中高連が「大阪通信制高校グループ」なる組織を立ち上げており、グループに加盟する高校は全て大阪府の認可を得ている。

認可校とは、大阪府に住む生徒が入学するならばこの学校が安全ですよ、というお墨付きである。角川ドワンゴのN高校など、新しいタイプの通信制高校も登場しつつあるが、そういった学校と同時に認可校は必ずチェックしておきたい。もちろん校風・内容は様々なので本校での説明会参加も含めて、足を運んで幅広く情報収集した上で、自分に合った学校をよく吟味すべきである。

【大阪府認可の私立通信制高校 11校】

◎英風高校(福島区)
女子限定の通信制高校は珍しい。

◎大阪つくば開成高校(北区)
2020年4月開校。全国に各府県の認可校を展開しつつある。

◎賢明学院高校(堺市)
全日制と通信制の2スタイル。

◎神須学園高校(岸和田市)

◎向陽台高校(茨木市)
早稲田摂陵の兄弟校。

◎秋桜高校(貝塚市)

◎天王寺学館高校(平野区)
天王寺予備校の系列。普通の高校生活は面倒で、大学受験に特化した3年間にしたい生徒にとっては最適か!?

◎東朋学園高校(天王寺区)
高等専修学校と分離して、2020年4月開校。

◎長尾谷高校(枚方市)
枚方・京都・梅田・なんば・奈良に校舎。

◎八洲学園高校(堺市)
当塾の移転前から本校の存在は度々耳にしていた。

◎YMCA学院高校(天王寺区)
水都国際中・高を運営。