ネガティブ学校訪問

過去の資料を探っていたら、昔の東京・千葉の学校訪問の記録が出てきた。塾通信メールでは配信し、ホームページの方で一旦掲載してその後削除したといういわく付きの記事。

で、なぜ削除したかというと、その学校についてネガティブな内容を書いたからである。ポジティブな記事よりもネガティブな記事の方が明らかにアクセスは伸びる。「人の不幸は蜜の味」は真実なのだろう。ただし、特にK高校の方は「K高校」でGoogle検索すると、当塾の記事ページが検索画面の上位に表示されるようになってしまい、いくら真実であってもさすがにK高校に対して生徒募集の妨害になるだろうということで、削除を決めた。

あれから数年。今は大阪に教室が移転してしまった、ということも含めて、その削除してしまった記事を再掲してみる。固有名詞、学校を特定できる名詞は全てアルファベットに置き換えた。

つまり、だ。校内運営が上手くいっていない学校とはどういうことか。その実例が理解できる記事になっている。

■学校訪問2016/5/11~K学園中学・高校(東京都K区)

K線O駅から商店街を歩いて徒歩3分。ほぼ毎年訪れるこの商店街も、年ごとに店が減っているような気がする。進んで信号の先、右手に見えてくるのがK学園。1933年の創立の女子校からスタートし、2003年に共学化が完了。現在は中学生が男女比1:2、高校生は男女の人数差が例年20名程度に縮まっている(女子が多い)。

2012年には系列のK中学・高校の入試委員長であったM先生(現・教頭)が本校に異動され、2012年以前を否定するところから始まったM改革が現在継続中と言ってよい。2013年に教育理念を分かりやすくするため「B・F」から「B・R」に切り替えた。

最先端の研究者や著名人を招いた講演会の開催や英語の課外プログラムの導入など、2020年の大学入試改革を見据えたアクティブ・ラーニング型の取り組みも始まっている。

ここからは否定的な内容になるが、私個人としてはM教頭の描く理念・理想が本校教員にあまねく浸透しているのかということが気になっている。「B・F」の教育理念をわざわざ平易な「B・R」に変えてその重みを失くす意味があったのだろうか、と腑に落ちなかったのは3年前の話になるが、

塾対象説明会において、K線沿いの下町の学習塾のおじちゃん・おばちゃん先生(おじいちゃん・おばあちゃん?)がこぞって本校説明会を訪れていたのはM改革前年までのことで、近年はそういう先生たちにとって本校は敷居が高くなり、大手系の若手の塾関係者が割合として増えたように感じるのは私だけだろうか。

釈然としなかったのは、説明会会場となる講堂の入口で、本来来場者を迎え入れるはずの教員男女2名が来場者そっちのけでペチャクチャと私語を交わしていたことで、私のような来場者が「おはようございまーす」と通り過ぎても、明後日の方を向いて私語に興じているという、急激な改革で教員の方向性がバラバラになっている学園に見られるパターンの現象がそこにあるように思えてならなかった。

また、細かい話だが、11:40終了の説明会を「皆さんの負担も考えて早めに終わらせました」と11:24に終了させたのは良いが、その後希望者は4階の中学教室フロアに上がって校内見学をして良いという。しかし11:30から40分までが生徒の休み時間で、11:24のタイミングで来場者が休み時間中の中学生フロアに上がることは大変気が重いし、そうなると授業見学もせずに帰途についてしまう来場者が大半ということになる。16分間の待ち時間というのは、この場合非常に長く感じるものだ。

生徒たちが廊下に出てキャンキャンしている中で塾関係のおじさん・おばさんは身の置き所がないということは、学園には分かって欲しい。この数年は授業見学のアナウンスさえなかったので、それに比べれば改善度が増したと言えるかもしれないが、意外とこういう所の細かい配慮は大切だったりして、上手くいっている学校は説明会の運営も総じてスムーズであるので、本校が上手く行っていないと言うつもりは毛頭ないが、今年も「なんだかな」感を胸に、授業見学を断念して私はO駅へ向かった。

■学校訪問2016/10/15~県立K高校(千葉県K市)

教務主任の先生からご案内を頂き、県立高校を訪問させていただくことになった。K高校はS駅西口から徒歩18分の位置にある。畑に囲まれており、校舎奥のグラウンドに隣接している道路はM市とK市の境界線になっている。本校の在籍生740名のうち、240名はM市からの通学であり、KS市からも211名が通っている。K市からは98名にとどまっており、Kの生徒はむしろFF・FKなどのF市北部の公立高校に進学することが多いようだ。

本校は開設が1980年(昭和55年)で、今年で34年目ということになる。校舎は老朽化が進んでいるようにも見える。建物は当然ながら公立学校の仕様になっており、公立小学校、公立中学校があって、その延長線上に公立高校の校舎があるといった雰囲気。廊下に掲示物は少なく、トイレは男女それぞれに入口の扉がなく、個室ブースや男子用の小便器が廊下からそのまま見える。

私の学校訪問では私立学校へ訪れることが多いが、公立高校と比べると私立はやはり「やりすぎ」というか、充実しすぎというか、それぞれの私立学校の独特さとは全く異なるスタンダードな校舎が公立高校にはあると言っていいだろう。

各学年の授業を覗かせてもらったが、それぞれ騒いだり、歩き回ったりという生徒は居ない。ただし、あからさまに寝ている生徒(多いクラスでは10名近く)、また、書道の授業中、作業の合間だったのか、スマホをいじっている女子生徒が数名見受けられた。先生はこれを注意しない模様。他のクラスでも抱き枕のようなクッションを抱えながら授業を受けている生徒もいたし、実技系の教科ではグループの作業中だったのだろうか、女子生徒は椅子の上に体育座りのような格好で座りながら、太ももを大きく露出させていたりもする。

ああ、これが公立高校なんだな、と、この生活指導の面では私立との差に歴然とした違いを感じる。

むしろ、男子の方は真面目に授業を受けているか、寝ているかのどちらか。女子の方はギャル化している生徒が少なからずいる。そんなところだろうか。

進路の方は、今春の卒業生のうち大学・短大は30%程度で、50%強が専門学校または就職への道を進んでいる。今は選ばなければ大学と名のつく大学には名前さえ書けば入れる時代だ。従って大学進学そのものの価値は落ちており、それよりも専門学校で手に技術を身につけて就職したほうがメリットが高いと考える人が多い。これは当然の流れだろう。従って本校も、大学進学率は以前に比べて下がっている。

部活動は陸上、野球、吹奏楽、科学部が特に活発に活動している。また、保育体験、インターンシップも充実している。インターンシップについては、K市近隣の美容院、保育園、鉄道会社、動物園など、多彩である。生徒たちの感想文を読むと、この体験が進路選択の大きな動機付けとなっていることがよく分かる。

入試について見てみよう。前期選抜においては、学力検査160点、内申80点の合計240点で、合格率80%となっている。合不合のボーダーは220点前後。合格者の平均内申は83(分布は70から90台後半)、つまりオール3程度とのことである。ちなみに、公立高校の場合は、審議対象になる場合もあるが、仮に評定に1が入っていたとしても、あくまで合計点で審査されるので、1があっても受験を諦めてはいけない。

後期選抜は、学力検査180点+内申83点が合格者の平均となっている。学力検査については、5教科の合計が100点を切ると合格が難しくなる。後期の方が入学者の学力差が大きい。

以上が本校の概要となる。K高校には、ありのままの学校の様子を内覧させてくださったことに、心から感謝と敬意を表したい。

今回参加された塾の先生方はK・M市近隣の14名であり、中には市内の有名塾(大手、という意味ではない)の先生も来校されていた。質疑応答の時間に、その先生が繰り出す質問と提案にはなるほどと頷かされる部分が多々あり、そういった先生の見識と能力の高さには目を見張るものがあった。

1本目が、中堅校が急激な学校改革で進学化を図ったけれども、教員の先生方のモチベーションと意思疎通が足りていない状況。目に見える現象は会社も全く同じだ。

学校によっては新しい経営陣が入り込んで旧来の慣習に染まった先生方が一斉に退職してしまい、新規採用で新しい教員をどんどん投入して方向性をまとめていく、という思い切った改革をする学校もある。また、もともと普通科・工業科・商業科が同じ比重でひとつの学校に共存していたのを、専門学科を廃止してその先生方を解雇。普通科を拡充するとともに進学校化を図って先生方を一新した学校。急激な学校改革で比較的うまくいっているのはこの2パターンではないかと思う。

東京の千代田区に麹町(こうじまち)中学校という公立中学校があって、近年宿題・担任・定期テスト廃止という大胆な施策を打ち出して全国的な話題になっている。この下に麹町小学校という公立小学校があって、ここは東京都心のど真ん中ということもあり、大半の児童が中学受験を目指している。地域によって中学受験をするとクラスメイトから珍しいまなざしで見られる小学校もあるが「麹町小学校に行けばみんな受験するよね」ということでわざわざ越境入学で中学受験をするために麹町小学校に入らせる家庭も少なくない。

このように「我が家は中学受験をするのだ」と意気込み高く受験に突っ走ってきた生徒が、中学受験に失敗し、挫折して入学してくるのが最終滑り止めのK学園、という図式である。だから家庭も生徒もやたらとプライドが高く、でも手先が全然動かない(勉強が上手くいっていない)という非常に危険な生徒を私は東京勤務時に何人か接してきた。(※K学園の家庭・生徒が皆そうだ、ということではない)

先生方の姿勢、目つきひとつでその学校の統一感、目的意識の共有を見て取ることが出来る。それゆえに一つの学校を複数回訪れたり、平日にアポイントをとって校内見学をしてみたり、また他校も同じようにじっくり観察してみることで、一つの学校の特徴が俯瞰的に見えてくるようになる。

記事2本目は公立高校で、近年になって少しずつ公立高校のプロモーションが以前よりも活発になってきている感はあるが、このK高校はある意味その先駆けであったと言える。ただ、授業があまり機能していない学校は、概ね説明会の場では「入試システム」「入試制度の概況」といった「枠組み」の話に力点を置いている傾向があり、「うちの学校はこんなことをしているのですよ!」というよりも、「一般入試がどうのこうの…」「教育委員会の情報によると…」といった、中身の薄い人物が外見ばかり気にしているような、そういう所も完全にひとつのパターンにあると言えよう。今年私が見てきた大阪の私学も、見事にそこへ分類される学校があった。