苦手な文章題のつまずきパターン

問題「長さ20cmの針金を2つに切り、正方形を2つつくる。一方の正方形の面積が、もう一方の正方形の面積より5平方センチメートル以上大きくなるためには、小さい正方形の一辺の長さは何cm以下でなければならないか」(高校1年数学)

解き方
問題文を3つに分けると、
 ◎長さ20cmの針金を2つに切り、正方形を2つつくる
 ◎一方の正方形の面積が、もう一方の正方形の面積より5平方センチメートル以上大きくなる
 ◎小さい正方形の一辺の長さは何cm以下でなければならない

となる。

中学1年の「方程式」からの習慣で、「何cm」=「Xcm」だな、と分かる。(何をXと置けばよいかが分かるということ)

次にノートに「大きい正方形」と「小さい正方形」の図を描く。「小さい正方形」の4つの辺にそれぞれ「X」と記入。(※苦手な生徒は4辺それぞれに記入させる)

「小さい正方形の4辺の長さはの合計は?」→「4X」となる。

苦手な生徒はまずここでつまずく典型的なパターンがある。「2Xなの?」「Xの2乗なの?」「Xの4乗なの?」と頭の中が錯綜する。なぜ錯綜するかというと、これが例のイタコ型の思考に陥っていて、
https://kj-lab.net/archives/489

一つひとつ順序立てて地に足をつけて考えるという作法が確立されていない。だから思いつきで「2乗?」とか「4乗?」とか頓珍漢なことを言い出してしまう。ということで、先ほどの小さい正方形の図の4辺に「X」「X」「X」「X」と記入させることで、4辺の合計は「X+X+X+X=4X」だよね、という論理を頭のなかで繋いであげるのだ。この点はプロの指導者として最も大切にすべきポイント。

さて、そうすると残りの「大きい正方形」の4辺の長さの合計は「20-4X」となり、1辺の長さは「(20-4X)/ 4=5-X」となる。(※この手の計算がすんなり出来ない生徒は中学計算のさかのぼり練習が必要)

ここまでの情報をまとめると
◎大きい正方形の一辺の長さ=5-X
◎小さい正方形の一辺の長さ=X

◎大きい正方形の面積=(5-X)の2乗
◎小さい正方形の面積=(x)の2乗

となる。
数学の苦手な生徒は情報が散乱することが多いので、上記のように改めて「大きい正方形の一辺は」「小さい正方形の一辺は」と整理して書かせることが大切。これも指導のポイント。

次の難関は、これまでの情報を「一方の正方形の面積が、もう一方の正方形の面積より5平方センチメートル以上大きくなる」に当てはめる部分。

出来る生徒にとってみれば何てことはないが、苦手な生徒にとって文章題を苦手に感じる最大のネックがここだ。

苦手な生徒は、やたらと文章の順番を入れ替えたがる(これもよくあるパターン)。「Xの2乗-5≦(5-X)の2乗??」のように。これも、論理的な思考が確立されていないから起こる現象で、タクシーばかり乗っていると道順を覚えにくく自分でいざの時に歩いて目的地にたどり着けないように、細かな過程を軽視するイタコ型の思考そのものになっている。

ここでまた指導側の大事なポイントで、生徒には「おい、ちょっと待て」と。「余計な小細工を考えなくていいから問題文の順序のままに数式を当てはめなさい」と指示する。

「一方の正方形の面積が、もう一方の正方形の面積より5平方センチメートル以上大きくなる」

「一方の正方形(大きい正方形)の面積が、もう一方の正方形(小さい正方形)の面積より5平方センチメートル以上大きくなる」
(※苦手な生徒はここでも大小の順序を錯綜してしまうので、「小が大より5大きい」は変だよね、「大が小より5大きい」だったら話分かるよね、と丁寧に再確認してあげよう)

「”(5-X)の2乗”が”Xの2乗”より5平方センチメートル以上大きくなる」

のように、少しずつ問題文を変化させていく。

ここで、指導側のポイントとしては、
◎「は」「が」→「=」
◎「の」→「×」

に変換できる基礎知識を生徒自身が持っているかどうかを確かめることだ。

「1足す1は2」「1足す1が2」を式に直すと「1+1=2」。だから「は」「が」は「=」に変換される。という根拠だが、この基礎知識が身についていなければ、文章問題を解くことは致命的に厳しい。小学3年・4年の算数の文章題を例にとると

「昨日、遊園地に大人と子供が合わせて647人来ました」

「大人+子供=647」

「牧場に牛が324頭、馬が258頭います。牛は馬より何頭多いですか」

「牛=馬+何頭」

上の例で、「は」→「=」、「多い」→「+」のように、素直に変換させることを習慣化させなければならない。繰り返そう。大切なのは「素直に変換することを習慣化させること」だ。

ずいぶん遠回りしたが、
「”(5-X)の2乗”が”Xの2乗”より5平方センチメートル以上大きくなる」

「(5-X)の2乗=Xの2乗+5」

「以上大きくなる」を不等号に変換して

「(5-X)の2乗≧Xの2乗+5」

で、あとは2次不等式の計算を解くのみ。不等式の計算が苦手な生徒は別途不等式の計算問題を練習。それで、「X≦2」になるので「小さい正方形の一辺は2cm以下」となって解決。

この問題の模範解答を見ると
「面積の差は5平方センチメートル以上だから、(5-X)の2乗ーXの2乗≧5」と書いてあるが、問題文には元々「差」の概念は描かれていない。自分で問題文を読み取って「差」の概念を発生させて頭よく問題処理しているのが模範解答だ。この時点で模範解答そのものが階段を一足飛びしていることが分かる。

苦手な生徒には極力シンプルに、新しい概念を増やさずに混乱を抑えることがとにかく大切。生徒の段階によっては、即「(5-X)の2乗ーXの2乗≧5」にした方がよほど分かり易い場合もあるが、本当に苦手な生徒にとってはまず、問題文の順序のままで数式に置き換えることを習得させる方が先決だ。頭のよい人が必ずしも教えることに向かないというのは、こういうことなんだよね。

あと、本稿のような話題は、とても指導のエッセンスが随所に含まれているのだけれど、文字にすると読み返していて眠くなる。だからこそ生の授業で、現場では緩急をつけながら生徒の具合を見てリズミカルに進めていくことが大切だ。

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