勉強がうまくいかない理由は「書かない」から

勉強がうまくいっていない生徒の特徴とは、ズバリ「書かない」ことだ。勉強が苦手だという生徒ほど、書くことを嫌がる(または書く習慣が身についていない)。例えば数学は情報処理の教科であって、途中式をひとつずつ順序立てて書いたり、図を描いてそこに角度や線分の長さを書き込むことで、それを見ながら次の一手をどう打つか、と論理的に思考するようになっている。

ところが、この書くことが苦手な生徒は、問題を見て、何かウーンと考えればポンと天から答えが降りてくるような、勉強とはそういうものだと無意識のうちに思い込んでいる節がある(塾通信で過去に何度も書いてきた話だが、これを青森の恐山になぞらえて「イタコ型の生徒」と呼ぶ)。霊能者でもないのだから、問題を眺めて正答が透けて見えてくるようなことは起こり得ない。論理的な思考でないから、パッと思いついたことばを答えて、大体×をもらう破目になる。

したがって、この手の生徒とは「途中式書いた?」「あ、書いてません」「図描いた?」「あ、描いてません」という不毛なやり取りが続く。

社会人で仕事の上手な人にはメモ魔が多い。するべきこと、思いついたこと、何でもどんどんメモをしてしまうのだ。今年100歳を迎える中曽根康弘元首相も、ためになる言葉を聞いたりするとすぐにメモを取るらしい。書くことで頭の中が整理され、また書く行為そのものが記憶の固着をうながすので、「大丈夫だよ、覚えているから」と自信満々で何も書かない人に比べれば書く人の方が仕事の正確性が高いということになる。

勉強の話に戻るが、特に数学の苦手な生徒ほど途中式を省いたり、暗算に頼りすぎたり、書くことを見事に軽視している。だから、なんで数学が出来ないの?となった時に「それは書くことを嫌う怠け者だからだよ」という答えしか私の中からは出てこないのだ。