桃山学院中・高(大阪市阿倍野区・共学)

【アクセス】
大阪メトロ御堂筋線の昭和町駅からあびこ筋を南に徒歩5分、または谷町線文の里駅から徒歩8分。で、私は谷町線の田辺駅から。ホーム階からエスカレーターを上がると改札階はすでに地上。桃ヶ池公園に向かう。この桃ヶ池公園の地形が気になっていて、一度歩いてみたかったのだ。
http://osumituki.com/event/nanikore/118612.html

池の真ん中に島があって、公園地帯なのに住宅地!?ということで、田辺駅から静かな住宅地を抜けて、路面電車の保存してある保育園の脇を通ってすぐに桃ヶ池公園へ。大阪市内全域そうだが、ここの住宅地もそれぞれに個性があって面白い。住宅地に個性があるのは東京で三鷹とか西の方に行くとやっと見られるが、大阪はどこを歩いても個性的な住宅に随所で出くわす。街歩きがひたすら楽しい。

島の突端の股ヶ池明神で軽く一礼して、由緒書きを見ると「飛鳥時代…云々」と。周辺は田辺古墳群ということで、とにかく歴史が古いのだろう。

桃ヶ池を抜けて、市立阿倍野中学の隣が桃山学院中学校・高等学校。(関東ならば「桃山学院中学・高等学校」となるが、関西では「中学校・高等学校」と称する。こういう関西と関東の細かい違いが多い)

前置きが長くなったが、田辺駅からの道のりが楽しかったので徒歩10分という感覚はない。

【歴史】
本校は明治17年(1884)の創立で今年開校135周年。英国聖公会による男子校から始まった。2011年に共学化している。

【伸びている学校】
雑誌「サンデー毎日」の特集、「大学合格実績を伸ばしている学校」の西日本15校のうちの1校に本校が3年連続で選ばれている。私としてはとても腑に落ちる話なので、以下じっくり本校を見ていこう。

【大学進学】
2019年春の卒業者数713名に対して、国公立大の延べ合格251名。近畿だけで見ると和歌山大現役31名、大阪市立大現役25名。前者の和歌山大は観光学部があり、大阪はインバウンドで外国人の訪日が多いため生徒がその外国人に触れる機会が多くなり観光を目指しやすくなっている。後者の大阪市大は地元志向との分析。

◎S英数コース(四天王寺高校と同レベル)
延べ合格で国公立大75%、関関同立89%、産近甲龍16%、他私大24%
◎英数コース
延べ合格で国公立大60%、関関同立50%、産近甲龍36%、他私大37%
◎一貫コース
延べ合格で国公立大32%、関関同立35%、産近甲龍36%、他私大90%
◎文理コース
延べ合格で国公立大19%、関関同立42%、産近甲龍57%、他私大74%
◎国際コース
延べ合格で国公立大11%、関関同立36%、産近甲龍38%、他私大78%
(→国際コースは外語大の進学が多く、他私大78%に含めている)

【進路指導】
高3生は全員校長面談を実施(志望校宣言あり)。上位層向けの補習「M1ゼミ」、リカバリの必要な層への補習「Rゼミ」、レベル別夏期講習、夏の勉強合宿など、多くの生徒のそれぞれ個々のニーズを的確にとらえる枠組みを用意している。

【自習ステージ】
伸びる学校は、やっぱりこれだよな、と思うのが本校の充実した自習スペースの整備。休日も使える、個別に仕切られた50席のプレミア自習室(今後増設を計画中)、図書館、廊下自習スペースと校内の至る所に自習スペースを完備している。

そして、英数・S英数コースの高1生が必須参加となる「自習ステージ」。これは平日の放課後の80分×2セット、夜20時までチューターのいる環境でみんなで自習をする。高1生に限らず、一定の成績を満たせばその他の生徒も参加できる。「自ら学ぶ」本校の肝のひとつはここにあるかもしれない。

【イマージョン講座】
オールイングリッシュで数学や社会といった他教科を扱う「イマ―ジョン講座」。受講料無料の任意で、高い学力を総合的に持つ生徒を対象に実施。

【質問対応スペース】
自習スペースと連動して、職員室脇には長机が並び、生徒からの随時の質問と面談に教員の先生方が対応している。

【高校入試】
2019年度のクラス配分は
◎S英数=2
◎英数=3
◎文理=7
◎文理アスリート(ハンドボール・バレー・バスケ・サッカー・水泳)=1
◎国際A(短期留学)=1
◎国際B(長期留学)=1
◎一貫=3
の計18クラス。

男女比は
◎S英数・英数は2:1で男子が多い
◎文理は男女ほぼ同数
◎アスリートは男子のみ
◎一貫はやや女子が多い
◎国際は女子が男子の2倍前後
なところ。

【服装】
中学生は制服着用で、高校生は標準服としての制服は用意されているが、選択は自由なので実際のところ3分の2以上(もっとかも?)は私服のように見える。

【部活動】
高校でも部活動をしながら勉強をするというスタンス。
中学校では部活動は火曜・金曜・土曜に限られ、月曜・水曜・木曜の放課後は先述の「自習ステージ」(16:40-18:00の必須自習)と、メリハリのある生活が組まれている。これも本校の肝のひとつだろう。

【修学旅行】
「自分で考える」というところで、中学の修学旅行は生徒が自分たちで設定する。1年間かけて交通手段まで検討し、その結果をプレゼンテーションして決めることになる。2019年の修学旅行は「関東制覇プラン」。山梨、秩父、東京と関東地方をくまなく回るらしい。

【英検】
中学修了時の英検取得率が2級以上10%、準2級以上35%、3級以上が84%。

【まとめ】
と、まあ各項目を挙げていったら書き切れないくらいに充実した教育システムになっている。生徒数の大きさに対して、細かくどのような生徒でも引っかかるような網が用意され、どの生徒も生き甲斐を持って本校で学び、生活できるように思える。その意味において、「高度に完成された総合学園」だと言えるだろう。

キリスト教の学校なのに和風の作法室があったり、屋上庭園では生徒たちがキュウリやナスを植えて育てていたり、また、図書館は10万冊の蔵書があるが(蔵書が多いと自慢していても古い本しか置いていない学校も多い中)本校では毎月200冊の新刊を導入しており、専門誌も含めた雑誌の最新刊も充実し、とにかくこの図書館は面白い!

ICTの導入も2019年から全生徒がタブレット所有となり、各教室に電子黒板も設置されたが、ほどほどのICTの付き合いかたは丁度よいバランスではないか、と私は思う。それよりも自ら学ぶ「自習スペース」の充実、そこで手を動かし頭を動かす勉強。自ら考えるイベント企画。ほどよいデジタルとアナログの距離の取り方を持ち、とても充実した3年または6年間が過ごせる学校だと、私は在校生が羨ましくなった。

先生方は派手な明るさでもなく、程よい落ち着いた(カチッとした)感じだが、生徒はこれまた程よく賑やかであり、優秀な生徒たちの典型的なメリハリのついた生活スタイルがこの学校に存在している。先生方の説明会の進行も極めて無駄がなくスピーディ&簡潔で、頭を使うというのはこういうことなのか、と私自身とても学びになった桃山学院への訪問であった。