大阪女学院中・高(大阪市中央区・女子校)

【アクセス】
大阪メトロ長堀鶴見緑地線の玉造駅から徒歩3分。1番出口を出て急坂をのぼると、すぐ本校の南門に到着。南門から入って手前に大学・短大の校舎、そして先に進んだ正門側に国登録有形文化財に指定されている、ヴォーリズ建築の「へ―ルチャペル」と中学・高校の校舎。この日の説明会は毎朝礼拝が行われているヘールチャペルで行われた。

【歴史】
本校は明治17年(1884)、ウヰルミナ女学校として現在の大阪市西区に開校。第2次世界大戦で政府の校名変更の通達により「大阪女学院」に改称。だから今でも正門には「ウヰルミナ」と大きく刻まれている。1968年に併設の短大、2004年に大学を設置している。

【併設大学】
大学の方は小規模で1学年150名だが、今年ベネッセの「世界大学ランキング日本版2019(国際性)」で全国4位にランクインしている(1位:国際教養大学、2位:ICU、3位:立命館アジア太平洋大学、4位:大阪女学院大学、8位:上智大学)。国際的な教育環境の充実を目指して、派手ではないが質の高い教育を中・高・大学ともに志している。

【探求型授業】
教員の役割を「Teaching(教える)」から「Facilitation(生徒へ活性化の働きかけ)・Coaching(導き)・Mentoring(気づきと助言)」へ。先生自身の変化とその認識。旧来の固定観念からの解放と言えばよいだろうか。生徒自身には世界で起きていることに注目させ、状況を読み解かせる。単に知識の暗記でなく、自ら主体的に考えることを強く意識させていく。

【高校IBコース】
高校(英語科)では国際バカロレア機構が定めるコア領域(知の理論・課題論文・学術外活動)をはじめとする国際バカロレアコースを設置。英語は異なるそれぞれの文化を理解するためのツールであること、学術論文への取り組み、前段階の中学においては期末テストの3割が記述式、高校IBコースでは定期テストを実施せず、オンラインでのノート提出とコメント・レスポンス、分析的・批判的プレゼンテーション、エッセイといった観点で評価される。

【学校ICT】
どうしても暗記しなければならない必要知識は通常授業でレクチャーと細かくテストを行い、決して大きなテスト前の一夜漬けにさせることはしない。また、自ら考えるプレゼンテーションを随時授業内で実施するために生徒が眠くなることも当然なく、そこからの授業内ディスカッションに繋げていく。先生方自身が授業のあり方を探究している、という表現が適切であろう。

【ビッグシスター制度】
指定校推薦等で大学への進路が決定した高3生は中学生への数学・英語の個別指導チューターを任ぜられる。また、学力面で伸び悩みのある生徒には教員による個別指導の制度もある。

【Classi】
ベネッセのクラウドサービス「Classi(クラッシー)」を導入して学校生活・日常の学習を記録するポートフォリオの蓄積を行っている。ボリュームとしては近畿圏で3番目の多さ。(文科省が主導するJAPAN e-Portfolioの利用は減っているとのこと)

このポートフォリオの活用も、制度の変化に流されて実施するのではなく、あくまで「生徒の成長のために活用する」という主体性を失わないことを心掛けている。

Classiの活用例としては、遠足に行ったらその振り返りをブログのような形で文章・写真で生徒が記録すると、そこに担任の先生がコメントを入れていく。また、進路相談の記録を先生が書き込んでいったり、その生徒が高校3年間で結局何をしていたの?という足跡を生徒と先生が事細かに記録していき、一発勝負の入試でなく、データベースをもとに大学入試の審査資料にしようというのが、このeポートフォリオの考え方。

【大学進学】
協定校である関西学院大は44名、同志社女子大は10名、神戸女学院大は4名と、それぞれ本校からの推薦枠がある。指定校としては同志社大学に10名、青山学院12名、他立命館・関大・ICU・早稲田など関西・関東の主要大学を網羅している。

本校の特徴としては、無理に難関国公立大の進学をすすめるのではなく、あくまで協定校・指定校の推薦も含めた選択肢で、行きたい大学を検討させている点。

【中学入試】
国際特別入試の方は、近年同様の教育システムの学校が増えているため入試倍率は下がっている。通常の前期入試は算数が合否の結果を握る。プレテスト・入試事前相談は実施していないので、本校を受験するなら実力を蓄えるのみ。(※ただし説明会などイベント時に成績表を持参し、本校の先生からアドバイスをいただくことは必須であろう)

【高校入試】
府立の併願として、岸和田・生野・高津・豊中・八尾・三国丘・四条畷がメイン。合格して本校に入学する割合を示す「戻り率」は大体30%程度。1月に中学校の先生による教育相談を実施。

IBコースの専願出願要件は「CEFR B1程度の英語運用能力、英検2級1次通過、GTEC960」とある。「CEFR」何のこっちゃ。CEFR=セファール(ヨーロッパ言語共通参照枠)といって、語学の熟達度を測る国際的な基準。易しい方からA1,A2,B1,B2,C1,C2となり、B1で日常不自由しない英語の読み・書き・リスニング・スピーキングが出来るレベル。GTECはベネッセ独自の英語4技能検定。
https://eigonotomo.com/hikaku/cefr

【まとめ】
ヘールチャペルの前の正門周辺は庭園となっており、丁寧に整備された木々が実に美しい。それにしてもこの数年で「CEFR」という用語を聞く場面が各学校で多くなった。入試だけでなく私立学校の教育システムも日進月歩でどんどん進化している。大阪女学院のように難関校に位置づけられる学校は、やはり先生方ご自身が一つひとつの取り組みを「探究」されているのがよく分かる。中堅校はそういった先生方が出した答えを形として模倣していく流れかな、とこれは私の解釈。とにかく有意義な訪問であった。