人生の土台

◎靴をそろえる

◎はい、の返事

◎椅子を奥まで仕舞う

◎相手を見て挨拶する(対象に向かってあいさつする)

◎両手で渡す

◎相手の向きに回して渡す

新入塾の生徒でこれらが出来ている割合は5人に1人いるかいないか位だろう。5人のうち4人は、必ずこれらの注意を入塾当初に受けることになる。(5人のうち1人は、私から一切の指摘を受けることもなく最初から完璧に出来ていたりする)

学校の通知表には「行動の記録」という欄があって、「自主・自律」とか「思いやり・協力」とかに○印がつけられるのだが、近年私はこの欄に○がつくことの価値をほとんど感じなくなった。「行動の記録」にたくさん○がついていても、適切なタイミングで「はい」と返事の出来ない生徒は多いし、まして両手で相手に物を渡せない生徒もザラであるが、入塾して3ヶ月以内には上記6点を完璧に出来る生徒に育てたい。

こんな程度のことを?と思うかもしれないが、こんな程度のことも仕向けられないのが現代の日本の教育だ。だからこれからの教育で考えなければならないことは「英語4技能」でも「大学入試改革」でもなく、人間の最もベーシックな行動を正しくしつけていく、このシンプルな取り組みに尽きる。

現在の入塾パンフレットのキックオフシートにはあいさつ関係の手引きを詳細に記しているが、このきっかけになったのはかつての卒塾生、T・R君である。T・R君は中学校では荒くれ者であったし、警察に補導されたこともあった。勉強も得意ではない。しかし、そんなT・R君が塾内では入室から退出まで一つひとつの場面で理想的な振る舞いを見せ、当時の塾生がみなT・R君の影響を受けるようになった。

「トイレ借ります」「トイレ有難うございました」と生徒が口々に言うようになったのもこの頃からである。ならばこのT・R君の行動をそのまま文字に留めようと書き記したのが現在のキックオフシートの手引きだ。(今春の教室移転と2教室の統合にあたって、旧教室で出来上がった空気感が新教室でどれだけ達成出来るのか、にこの8ヶ月間腐心している)

極端な話、勉強なんか出来なくても行動がきちんとしている人は単純に好かれるし、一目置かれるようになるのだ。私は塾生に幸せになってもらいたいし、生涯好かれる人物になってほしい。適切な職を得て、人間生活を謳歌できる人生を送ってほしい。そのための土台づくり、種まき、きっかけ作り。

正しい行動を習慣化すれば、それは一生ものになるし、幸運はそこからやってくる。新しく入塾した生徒のご家庭は、塾なのに勉強面以外でいちいち言われるな、と感じているかもしれないが、上記の話を是非理解して頂ければと思う。