「左脳=論理をつかさどる=男性系」「右脳=情感をつかさどる=女性系」という考え方は都市伝説だとする見方もあるが、どちらかと言えば計算に関しては男子の方が得意なように思う。どんなに勉強が苦手でも男子なら計算は比較的修復しやすい。逆に、計算が苦手な女子はいつまでもミスを繰り返し、作文を書いたり絵を描いたりすることには長けているのに、計算ばかりはまるでダメという女子が多かったりする。
今日はその、計算が上手くいっていなかった女子生徒に注目して、その改善のノウハウについてまとめてみる。
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(事例)
中3女子生徒。プラスマイナスや累乗の書き間違い、単純計算の勘違い(例:16×4=84)が続き、問題の分量を増やしたところで根本的に解決出来ないことが分かった。
(対応策)
10mm方眼ノートを使用。(7mmまたは8mm方眼でも良い。通常のノートは不可)
「1マスに1数字または1文字(つまり、大きな文字で)」「途中式は1行ずつ間を空ける(見やすく)」ことを徹底させる。
「式の計算だけ」「連立方程式だけ」のように同類がたくさん並んでいる問題ではなく、「正負の数」「文字式」「方程式」「式の計算」「連立方程式」など、各分野の問題がランダムに並んでいる問題集を使う。これは、計算ミスの多い生徒は注意力に欠け、集中が持続しないために同じジャンルの問題が続くことで「飽き」を誘発してしまうから。ランダムに並んだ問題の方が、一問ごとに計算方法が変わるので、その都度新鮮な問題を取り組むことにより、生徒の集中を持続させやすくなる。
開始当初は不正解が多いため、指導者が丸付けをして、生徒に直しをさせる。その際に連立方程式の計算は「代入法」を扱わずに、全て「加減法」に変換させるように、生徒の能力に応じてシンプルな解法に持ち込むという指導の柔軟性も必要。
尚、計算ミスの多い生徒は途中式を順序立てて書けない、または文字が細かすぎる、字が雑、といった問題も抱えていることが多いので、「大きな文字で」「見やすく」途中式を書かせるだけでも多少の改善は見られる。(これだけでは根本的な解決には至らないが)
やがて、指導者は赤ペンでの採点をせずに、間違えている問題数のみをカウントして、生徒に伝えるようにする。
「このプリントの中に、5問間違いがあるよ。見直しをしながら、それを探してごらん」
注意力のない生徒は字面を目で追うだけで、一つひとつの文字や数字の意味を確認することが不得手なので、一文字ずつ・一数字ずつを「指差し確認」させる。生徒が間違いを発見したら、消しゴムでは絶対に消させず、緑ペンで何が間違えていたのか「気づいたこと」「注意事項」を記入させる。例えば、「←ここで2乗を書き忘れていた」のように。そして青ペンで直しの途中式を書かせる。
色ペンは文字の消せるボールペンの「フリクション」を使わせる。通常の色ペンでは抹消線を引くと紙面が読みづらくなるし、まして修正テープなどを使うのは無駄。ここでは、時間を掛けてでも生徒自身に「ミスを気づかせる」ことが重要。指導者が「ほら、ここ間違っているよ」と指摘してしまったら、逆に生徒自身の自助救済の妨げになる。
「計算力」とは「注意力」でもあるので、「きちんと書く」「自分で気づく」プロセスを明確に構築させることがポイントだ。