中央学院高校(我孫子市)

常磐線に乗って我孫子を越えると風景が次第に茨城っぽさを帯びてくる。本校は県境の天王台駅からバスで約10分。しばらく住宅街を走っていたのに、学校に近づくと突如田園風景に一変する。「親方様!」と戦国時代の武将が領主のいる城に馳せ参じるがごとく急坂をのぼって、小高い丘の森に吸い込まれていくと、本校校舎が見えてくる。

新校舎の6号館は2011年に竣工し、職員室の入る1号館、教室棟の5号館も改築されて間がない。弓道場は県内屈指の設備を誇り、食堂もある。現在は柔道場・剣道場・卓球場を収容する武道館が改築中で、残りは2,3号館の改築を残すのみだ。生徒たちが過ごす教室棟の5・6号館は開口が広く、壁面の半分以上を占める窓ガラスを通して豊かな新緑の森に各教室が包まれていることがよく分かる。

今春は8年間校長を勤められた古江俊雄先生が退職され、教頭であった藤森庸一先生が校長に着任された。かつては午前10時の説明会開始と共に古江先生が本校の概略や入試制度、千葉県の教育行政の動向などをダイジェスト的に説明され、「あとは資料に書いてありますから、みなさんもお忙しいでしょうし、この辺で…」と30分くらいで終了していた。「あらあら、まだ10時30分なのにもう終わっちゃったよ」と最初は度肝を抜かれたが、慣れてくるとこの小気味良い調子が心地よかった。

今年は藤森校長、入試広報の先生が分担して話をされたが、後半は特に資料に記載されていることをいちいち読み上げておられて全部で1時間以上も要したので、正直「長いな」とウンザリしてしまった。他の多くの塾関係者も下を向いたり、同様の感想を持ったに違いない。

随分塾関係者の出席が減ったな、という印象を受けたのだが、どうやら受験者数も減っているらしい。平成23年→24年→25年→26年→27年と見ていくと、A選抜(単願)で132→133→126→116→109、B選抜(併願)で1209→1115→1142→1004→962、S特進で139→147→170→134→110と、それぞれ出願者数が減少傾向にある。房総地域は少子化が進むが、東葛地域はむしろ人口増加しているので少子化の影響ではない。進学実績の点で前年と比べて目をみはるものがなく、受験生にとって本校が魅力的に映らないという所が致命的になっているようだ。この点は本校も重要課題として認識している。

今年の1年生は進学クラス7、S特進クラス1で、女子の方がやや多い。スポーツコースは2クラスで男子68名。スポーツコースは強化指定されている部活動で、野球22・サッカー29・剣道5・バドミントン4・陸上8となっている。系列の中央学院大といえば毎年箱根駅伝でおなじみである。数年前の卒塾生も将来箱根で走りたいがために本校のスポーツコースに進学している。尚、今年はチアリーディングが日本選手権出場、バドミントンはインターハイ出場、サッカー・剣道は関東大会出場。バレーボール・陸上・書道も実績を上げている。書道部は全国高校書道パフォーマンス大会で関東4位。袴をはき巨大な筆で字を書くため、体力が必要で筋トレをしながら体幹を鍛えるのが活動の一部になっているのだそうだ。

本校は毎年1500名程度の中学生が受験するが、その際の受験料収入が在校生への特待生制度・奨学生制度・授業料減免制度へ還元されている。平成27年度では全生徒1116名のうち53名が特待生、同じく53名が奨学生として決定。平成26年度の実績では128名が年間授業料の免除、97名が授業料の3分の2減額、48名が入学金軽減という、減免措置を受けている。私立=費用がかかる、という考えもあるが、本校のように減免制度を充実させている私学もあるので、受験する高校の検討は詳細に行うべきだ。ただし、本校の特待・奨学・減免制度は受験料収入に拠っているので、受験生が減ってしまえば制度の枠も縮小していくことになる。

本校ではコースに関わらず部活動の加入率は8-9割で高い。生徒達はハキハキとあいさつをしてくれるし、部活動ではグランドの脇で泥にまみれた身体で男子生徒がシャワーを浴びている。決して気位は高くないが、昔の学園ドラマに出てきそうな質実剛健な「青春」を感じさせてくれる学校。それが中央学院高校なのだ。

(6月20日訪問)

7月30日追記
「校技」として、男子は剣道、女子は弓道が3年間必修となっている。