JR市川駅から徒歩15分、京成本線菅野駅から徒歩5分に位置する日出学園。住友鋼管の工場跡地に新校舎が完成したのは2008年で、西側は国府台女子学院が隣接し、東側では東京外環自動車道の建設工事が進められている。外環道を挟んでさらに北東側には東京歯科大学市川総合病院もある。
現在、校舎の北側にはホームセンターユニディがあるのだが、昔はそこに東京歯科大の病院とポプラ並木のラグビー場があったんだよね、というのは昔の話。
昭和9年の創立で今年80周年を迎えた本校は、幼稚園・小学校・中学校・高等学校を擁する15年一貫教育の共学校である。極端な話、人生の5分の1を本校で過ごす生徒もいるというわけだ。コンクリート打ちっぱなしの頑丈な校舎の中を、高校生と体育の教室移動をしているピチピチの小学生がすれ違ったりしている。幅広い学年が一つのキャンパスで過ごしているのは圧巻である。
日出学園は、多彩な生徒を集める学校というよりも、縁故であったり、親子2代とか、そういった濃い血のつながりの構成で生徒が入学していることが多いように思える。その点で殺伐とした雰囲気はなく、アットホームな優しい雰囲気が校内を流れていると言えよう。中学・高校で生徒数は700名しかいないが、生徒数700名でよくこれだけの立派な校舎が作れるな、と思ってしまったりもする。仮に神尾塾が35個集まったとしても、到底このような立派な校舎は作れないだろう。
今年から校長が勤続34年の堤先生に交代し、現場肌の校長の指揮によって学校に活気が出てきたように思う。前回私が訪問した3年前は、「ガラパゴス」的な閉じた印象しか感じることがなく、当時の塾通信には結構否定的なことを書いていたような気がする。それはそうだ。私が説明会での受付を済ませて会場に着席すると、外の受付の方から「え~!神社~??」の声が聞こえてきたのだ。いくら名刺にそう書いてあったとしても、随分失礼な人たちだな、と思ったのは否めない。これは3年前のこと。
堤校長の新体制になって、よい活気が生まれつつあるのは間違いないように思う。過去には教員の手取り足取りが欠かせなかったが、堤校長の方針としては、生徒主体での各種活動を考えさせていこうとしている。その結果、その行事運営に携わる生徒一人ひとりが「自分は何に向いているのか」または「何に向いていないのか」を考えるようになり、人との関わり方もそこから学ぶことが出来るようになる。そういったことを学年ごとに受け継いでもらっていて、学校の伝統にしたいということ。素晴らしいことである。
クラス編成は各学年4クラスずつで、今年の中1は小学校からの内進生が40、外進生が73、高1は内進生が93、外進生が30となっている。授業は中2から数学と英語で習熟度別の授業が組まれるが、少人数だからこその柔軟な授業編成を心がけている。レディメイドではなくオーダーメイドの、ということで個人個人にあった指導が展開されている。2013年度からは週6日制が導入されている。
部活動は加入率が中学92%、高校84%。中1、中2の臨海学校では遠泳を実施。今年は53名の生徒が完泳した模様。昼食は全員が弁当を持参することになる。食堂は”あえて”設置していない。初代校長からのポリシーとして、家庭からの温かいご飯を子供に持たせて欲しい、という願いが込められている。
大枠としてはこんなところ。
授業中の教室を複数覗かせてもらったが、総じて皆真面目に授業を受けている。ただし、1つのクラスに1人くらいは机に突っ伏して寝ている生徒がいた。私学なのだから、そういう行為は校則を設けて排除していくべきだろう。授業を受けたいのだけれども眠くて仕方がなくて眠ってしまう、というのは許されてもいいかもしれない。でも、机の上に上半身を横たえて、明らかに寝る気満々で寝ている生徒を許してはいけない。これは絶対にダメだ。
総じて平和な、安全地帯のような学校と言えるだろう。その空気の親密さ、血統が濃くなってしまっているような感じがひとたび悪い方向へ進めば「腐敗」してしまう。この辺のギリギリの際どさを持っているのが日出学園のような気がする。
人間の体内の話だが、善玉菌と悪玉菌はそれぞれ1%ずつで、その他の98%は日和見菌というものが占めていて、善玉・悪玉のバランスによって日和見菌が善にも悪にも転じるのだそうだ。ちょっとの誤差で善99%、または悪99%の状態が出現するらしい。
堤校長には是非善玉菌となっていただいて、学校を明るく醸していって頂きたい。先生方もそれぞれご自身の言葉で学校について語られる熱意が強く感じられる。その熱意はきっと生徒にも伝わることだろう。善き日出学園であり続けていただきたい。
(9月11日訪問)