足立学園中学・高校(足立区)

JR常磐線、東京メトロ日比谷線・千代田線・半蔵門線、東武スカイツリーライン、つくばエクスプレスが乗り入れる巨大ターミナルとなった北千住駅。その東口から商店街を通って徒歩1分で着いてしまうのが足立学園だ。

もともとは足立学園のために名づけられた商店街「学園通り」も、東京電機大学が2014年に神田から本校の目の前に移転してきて、すっかり学生の街へ変貌を遂げてしまった。かつてTBSドラマ「3年B組金八先生」で大森巡査(鈴木正幸)が『おい、待て!金八くん!』と金八先生(武田鉄矢)を自転車で追いかけていた場面も、この商店街である。

また、ビートたけしが自分の出身地を揶揄(やゆ)する時に「北千住」の地名を用いることはよくあるが、今や北千住は駅前にルミネも丸井も東急ハンズも紀伊国屋書店もBook-1stもある。欲しいものは何でも揃う最新の街になった。

さて、本校は文武両道の男子校で、昭和4年の創立から2019年で90年を迎える。千住の開業医をはじめ地元の有志22名で造られた学校。駅を挟んで西口に位置する潤徳女子高校も、経営は全く異なるが同じ創立者により設立されている。このように北千住駅を挟んで足立学園と潤徳女子、そして東京電機大学、東京藝術大学、帝京科学大学、東京未来大学と学生数1万人を超す学園都市となったのが北千住だ。

校舎は2008年に改築。震度7に耐えられる建物となったため、地元の千住警察署が災害時に使用不能になった場合は本校に臨時移転する契約が取り交わされているらしい。体育館は築50年だが頑丈な建物であるため、校舎改築時に3億円をかけて全面改修。今では体育館も含めた全ての設備に冷暖房が完備されている。(ただし、体育館は将来改築の予定)

進学実績は平成29年春で国公立22名、早慶上理50名。うち現役合格率は90%以上。

平成30年度からの大きな動きとしてはコース再編。普通科を含めて全体の学力の底上げを目的として、文理科を廃止して普通科を3コースに分割するということだ。

◎探究コース(新設)…文理科の上をいく、難関国公立大を目指すコース。
◎文理コース(文理科再編)…早慶上理の難関私大を目指すコース。
◎総合コース(普通科再編)…平均の学力でGMARCHに合格できるレベルを目指す。

現在、最上位の文理科「特別クラス」においても、トップ層は中学から入学した生徒で固められており、高校から入学した生徒でトップに食い込めるのは10人のうち1人に過ぎない。従って高校からではなく中学校から入学して欲しい、と本校の先生方は考えている。新しい「探究コース」についても高校からは高入生との混合になるが、中入生が1年前倒しにカリキュラムを進めているため、高入生が探究コースに入る場合でも、1年程度の先取り予習が自力で出来るくらいでないと授業についていけない、と。

では以下、項目ごとにまとめてみる。

【行くぜ!授業改革+ICTの導入】
アクティブ・ラーニング型の授業を試行錯誤しながら導入中。中学2年以上はタブレット端末を授業で用い、その場で電子黒板と連動させながら、生徒同士の議論、プレゼンテーションにも発展させていく。

本校のアクティブ・ラーニングに好感が持てるのは、「世の中の流れだから」的な消極性ではなく、これをしないと社会で生き残れないという先生方の本物の危機感をもとに、教室の中にたくさんのベクトルが流れるような、双方向の授業とはどのようなものか、ということを考え続け、実践と考察を続けておられることである。本校におけるアクティブ・ラーニングは成功・成立するのだろうな、と思う。

【年中無休の自習室】
足立学園の目玉は、旧校舎から続く「268席」「365日年中無休」「朝7時から夜8時まで」という地下1階の自習室ではないだろうか。テーブルは全てブース型・個別照明になっており、前後のテーブル間隔も広いため、ゆったりとして自習が出来る。お腹が空いたら食堂で軽食も食べられるし、ほとんど住み込みのようにして勉強が出来る。

特に中高一貫の高校生は高校2年で主な授業が終了し、高校3年は自分の受験に必要な科目だけを学べる予備校型の授業になる。そこで自習室の活用を連動させれば鬼に金棒。本校の進学実績の向上はこの自習室が大きな要因の一つだろう。

【部活動】
柔道・卓球が全国大会出場。剣道・野球・バスケは関東大会レベル。部活動の加入率は70~80%だが、中学の部活は火曜・木曜・土曜日の18時までに限定される。つまり、部活と勉強のバランスを大切にしている。「部活99・勉強1」と言ったら語弊があるかもしれないが、そのような感じの鎌ケ谷の教育風土は足立学園の爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいと思う。

【行事】
かつて高校1年で山梨の西湖の周りを走る「10kmマラソン」が全員必須で課されていたが、救急車のサイレンが毎年1度や2度必ず聞かれるというこの過酷なイベントが廃止され、代わって福島県喜多方市における「農泊体験」が設置された。その意味では昔ほど足立学園はスポーツ色が濃くはなくなったということは言えるかもしれない。

尚、中学生は本校から葛西臨海公園までを歩いて往復する30km強歩大会が始まって25年、今年も実施される。

【体育】
体育棟は体育館、テニスコート、柔道場、剣道場、卓球場を備えているが、校庭が無い。そこで、体育は徒歩5分の荒川河川敷で行っている。それこそ「3年B組金八先生」のオープニング映像で出てくる河川敷、まさにその場所が足立学園専有のグランドだ。サッカー部等もここで広々と活動している。ちなみに、プールは無い。

【授業料】
都内私学の授業料平均が46万円で、本校は40万円。従って私学の中ではリーズナブルな方だ。

【現在のクラス構成】
中学校は「特別クラス」38名が1クラス、「一般クラス」40名が3クラスとなっている。特別クラスの内訳は、特奨合格者8名、適性検査合格者が7名、他23名が特奨入試を受験したうちの上位者。特奨合格者は入学金・授業料が初年度無償。その後は年次審査で評定平均4.2以上あれば特別奨学生が継続される。

適性検査型の入試については、これまでは都立白鴎の形式、次年度からは都立両国の形式に沿わせるらしい。

足立学園といえば、卒塾生のM・H君が今春、本校の文理科・特別クラスを卒業して塾に報告に来てくれた。近所の藤川さんで鰻をご馳走してあげた訳だが、その妹さんのM・Nさんも神尾塾の卒塾生で、今は千駄木の駒込高校で和太鼓部の部長をしている。生徒のその後の話を聞くのは、実に嬉しいものだ。

追記
一点だけ忘れていた。今春、足立学園で中央大学の指定校推薦枠が余ったとのこと。それくらいに、足立学園の生徒たちは一般受験で上位大学合格を目指しているということだろう。

(2017年5月26日訪問)