連立方程式もシンプルに

2x-9y=1
2x-3y=3

という連立方程式があったとき、

2x-9y=1
-)2x-3y=3

という式を書かせて、『上の式から下の式を引かせる』方法が通例となっている。

ところが私は、生徒には『そんなことはするな』と言っている。『最初から、上または下の式をマイナス倍しなさい』と指示するのだ。

つまり、

2x-9y=1
-2x+3y=-3

とさせて、あとは『上の式と下の式を足すだけで済む』ようにする。何てことのない話に聞こえるのだが、これがものすごく重要だ。

前者の『引き算をする』というところでプラスとマイナスの符号が反転させられずに計算ミスをする生徒は実に多い。ミスが増えれば意欲も失せるし、直しの時間も余計にかかる。『最初から一方をマイナス倍して、あとは上下を足すだけ』という一本調子の方法にまず慣れてしまえば、計算ミスも激減するし、生徒自身も「どの問題も同じ考え方でよいのだな」という安心感をもって、勉強が不得意な生徒でも充分処理できるようになる。

先ほどの「正負の数」の話と同じことで、「この問題は足し算で」「この問題は引き算で」と問題によって処理が異なることを教えてしまうと、初学の生徒は全く別の次元の問題だと考えてしまって、柔軟な生徒でなければつまずきが発生しやすくなる。

極端に言えば、「加減法」「代入法」というそれぞれの方法でさえ、処理がうまくいかない生徒には『全部加減法に直せば解けるじゃないか』という安心感を持たせることが得策な場合もある。それでないと、「先生、この問題はどうやって解くのですか」といちいち人に頼らないと解けなくなってしまい、自立心を育むことが出来ない。

何事にもベーシックでシンプルな「普遍的な方法」や「普遍的な法則」というものがあるのだ。それさえ知って習熟しておけばどうにかなる、という耐性の強い生徒に育てることが大事だと私は考えている。