習うより慣れろ

「慣れよ」ではなく、「慣れろ」と書いてみた。

中1の数学は「正負の数」、具体的には「プラスとマイナスの概念」「自然数」「数直線」「絶対値」「数の大小(不等号)」という所から教科書が始まるのだが、私はそれらを飛ばして「正負の数の計算」から先に習得させてしまう。これは塾だからこそ出来る指導方法なのだが、先に「加減乗除」の四則計算に慣れさせてしまう。

教えることは「カッコを外す」ということと、「++→+」「--→+」「+-→-」「-+→-」という符号の処理だけだ。

(途中式をしっかり書かせる習慣もここから培っていかないといけない)

例えば「(+8)+(-12)」ならば「+8-12」のようにカッコ外しをさせてしまって、「+8」と「-12」というそれぞれの項を認識させる。その上で「プラス軍が8人」と「マイナス軍が12人」をぶつけさせて、どちらが強いかを比べさせる。すると、「マイナス軍が4人分強い」ということは容易に分かるから、「だからマイナス4だよね」と。

他に、カッコ外しをして、「-9-5」となったら、「マイナス軍が9人」と「マイナス軍が5人」だから、「全部でマイナス軍が14人になったね」と。これは一つの方便であるから、生徒の理解度に応じて異なる説明をする場合もあるのだが、数の処理が苦手な生徒には上記の説明が理解させやすい。これならば「加法」も「減法」も関係ない。

最初から「絶対値」だの「自然数」だの「交換法則」だの「結合法則」だの、という理屈を機関銃のごとく教え込んでしまうと、吸収に時間の掛かる生徒にとっては頭の中が混乱するだけで、場合によってはここですでにドロップアウトが始まってしまう。

まずは各問題に通用するシンプルな方法だけを伝えて、計算処理に慣れさせるのだ。理屈の方は、問題慣れするうちに何となく自分自身で気づいていくこともあるし、指導者としては必要なタイミングで、その生徒の習熟具合に応じて理屈を継ぎ足して理解力を増強させればよい。

味噌汁の作り方と同じで、最初にじっくり出汁(だし)をとる。具や料理酒などは後から適宜付け加えていくのだ。

確かに正負の数ならば「交換法則」も「結合法則」もあるけれども、それは後になって「確かにそうだよね」と思えればよいことであって、最初から別個に扱ってしまうと、よほど柔軟に対応できる生徒でない限りは混乱に陥ってしまう。大人だってそうだろう。「この問題はこの方法で」「あの問題はあの方法で」と別な話を聞かされていたら、どう対処したら良いのか分からなくなってしまう。

まずは「習うより慣れろ」で、学力の下地を作っていきたい。