勉強に目覚める瞬間

ある日、テストは点取りゲームなのだ、と気がついた。その日から勉強の仕方が変わった。「どうすれば得点につながるのか」ということを常に意識するようになったのである。「点を取りさえすればよい」という目的が明確になってしまえば、今度はそこから逆算して何をするかである。

数学の場合はひたすら問題練習をする。ただ練習するだけでも駄目である。「自分の頭に残すための練習」という意識を持つようになるから、出来の不十分な問題には印を付けて、2日後、5日後と間隔をあけて再び解くようにする。

英語は試験用ノートを作成して、左ページに英文、右ページに和訳を書く。熟語や構文は欄外に書き出し、読みにくい単語には発音記号を記す。こうして「完璧な」ノートを作って、それを「英→和」「和→英」へひたすら音読する。理科や社会も同様にノートを作成する。(ノートに重要事項をまとめることで、頭の整理が出来る)

すると、それらの作業のためにどの程度の時間が必要なのかということも次第に分かってくる。1週間前では到底間に合わない。遅くても2週間前には始めていないと間に合わないという焦りが出てくる。そうするうちに、100点狙いの勉強の仕方、80点程度の勉強の仕方、というのも自分なりに分かってくる。

90点以上の勉強となると、ほぼ「完璧」を期さないといけない。ノート作りも完璧にした上で、それらを暗唱したり繰り返し練習したりする時間が必要になってくる。

次に、今度はそれらを実現するために自分の集中出来る環境、道具にもこだわりが見えてくる。自宅ではつい集中が途切れてしまうから塾や学校の自習室を使ったりする。また、練習する用紙にもこだわる。当時は広告の裏が書き込み可能な白紙になっていることが多かったから、それを使って練習する。これが無くなると文具屋で「コクヨの計算用紙」なる紙の束を購入して愛用した。筆記用具も同様で、鉛筆は飽きるから減りの分かるボールペンも使用する。

こうして、勉強が一種の仕事術のようなものに変貌していく。これが自分にとっては「目覚め」であった。