叡明(現・小松原)高校(越谷市)

JR武蔵野線の越谷レイクタウン駅南口から徒歩5分。現在、校舎部分の鉄骨を組み上げて建設真っ最中なのが、来春より叡明(えいめい)高校として新校地で再出発する小松原高校である。かつては自動車科・機械科を擁して、南浦和では不良の名高き「バラ高」と称された男子校である。2011年に小松原誠前理事長・校長が亡くなって以来、改革のスピード目覚ましく、進学校化に伴うカリキュラムの変更、校名変更、共学化、校舎移転が次々と成し遂げられていく。

新校では、普通科と情報科(情報技術科より変更)の2科体制となり、普通科は「進学選抜・特別進学・進学1,2,3類」の5類に分類され、純粋に大学進学を目指す教育課程となる。昨年度は、廃止された旧自動車科・機械科の授業の一部を普通科課程に盛り込んでいたが、これもいよいよ消滅することになる。

進学校化に向けて、今年度は教員を20名新規採用した。いずれも新卒ではなく、かつて各私立学校で教鞭を執られていたベテランの先生方である。学校の方向性としては、大学進学のための「予備校化」という印象を強く受ける。教員は学校の先生というよりは、各々のブランドを携えた予備校の先生というイメージが相応しいかもしれない。

新校舎は共学化に伴って、中庭にオープンカフェ(ランチデッキ)を設置したり、大学キャンパスのような印象。アリーナはバスケコートが3面確保される大きさで、500名収容の多目的ホールも併設される。

情報科については、来年度からCG作成、Webデザインも扱っていく。希望制で3年次にデッサン講座も設置する。かつての塾生が入学した頃の本校情報技術科は、デザインの要素はほとんどなく、ハードウエアやソフトウエア、プログラミングに絞られていたが、デザインを扱うようになれば、本コースの人気も高まるだろう。

さて、「小松原女子」から改称される浦和麗明高校にも触れておこう。
女子校らしい良きネーミングである。こちらの校地に変更はない。進学校化を目指すと共に体験実習型授業をコンセプトとし、来春から進学系3コースのほかに「保育」「福祉」「ペットマネジメント」「調理パティシエ」の4コースが設置される。進学系コースにも「情報ビジネス」「イラスト美術」「音楽」の細分類が施され、ファミレスのような「何でもある」総合高校となる。

以上が2校の来春の概要となるが、
色々な意味で「二流感」「イマイチ感」が拭えなかった小松原高校だったが、進学実績の向上とともに先生方の自信も年々高まり、このイメージからは既に大きく変貌を遂げている。またトップダウンではなく、それぞれの先生方が「自分達の学校」という意識をみなぎらせて改革に臨まれている点は最も注目すべきであろう。それでいて、形式的でなく、段階を踏んで学校を進化させていこうという地に足の着いた現実性と柔軟性がある。

説明会の最後に、入試広報部の市川先生がお話になったが、先生はサンドウィッチマンの伊達みきお氏に似ているということで、それよりも色黒で熟成させたようなお顔立ちなのだが、生徒から、『先生、その顔で(小松原は)共学になれるんですか!』と言われたとのこと。会場にいるのはかつての小松原高校を知る塾の先生方ばかりだから、大爆笑。そして、前方に座っておられた野村理事長、笹本・富樫各校長をはじめトップの方々も顔を見合わせながら楽しそうに笑っておられた。

和やかな空気を保ちながら前向きな一体感を出せている学校だから、本改革は間違いなく成功すると私は確信している。

—–

以下は昨年(2013年)6月21日の塾通信記事。
たった1年で学校はこうも変化するのか、という好例なので、掲載しておく。

—(過去記事ここから)

◎小松原高校(さいたま市)
現在南浦和駅から徒歩10分の距離に、小規模の新旧建物が将棋くずしの様にひしめき合っているのが現在の校舎。これが平成27年4月から、開発真っ只中の越谷レイクタウンに移転することになった。そして、男子校から男女共学化、校名変更、学科再編が一気に行われようとしている。

さかのぼって平成23年に小松原誠校長が死去し、所沢北高校から加藤正芳校長を招聘(しょうへい)した。この加藤校長の着任から、小松原高校が大きな変貌をとげていくことになる。今年で改革3年目。平成26年度の募集コースだが、「特別進学(国公立・早慶上理)」「進学選抜(GMARCH)」「総合進学・アドバンス(日東駒専)」「総合進学・スタンダード(大学推薦・AO・専門学校)」「情報技術科」の5類型となっている。上位2コースは1日7時間授業、少人数制、習熟度別の授業。特に特別進学コースは、本年度28名のうち16名が奨学生(特待生)扱いとなっている。

「総合進学・スタンダード」だが、カリキュラムの中に2年次・3年次それぞれ「専門教養」という週6時間の授業があり、ここに従来の「機械科」の要素を継承させて危険物取扱者・ガス溶接などのライセンス学習を選択出来るようにした。つまり、機械科は廃止になるが工業系を志向する生徒をここで受け入れることになる。これは重要なチェックポイントだろう。また、1年次には「コアベーシック」という週3時間の授業で、英数国の中学校までの基礎内容を徹底的に学び直しさせる。「情報技術科」は継続されるが、学科名は変更される予定。

ちなみに神尾塾の卒塾生も複数名進学した「機械科」「自動車科」は来年から廃止(説明会で『廃科』という表示を見せつけられるのは、やはりショックだ。公立中学校で勉強の自信が持てず、小松原の工業科に進んで資格を取り、中学校とは異なった上位の成績を収めて自信を取り戻した生徒が多かったからだ)。新校舎移転後の機械科・自動車科の最後の3年生は、専門学科のみ南浦和の旧校舎へ出向いて授業を受けることになる。

さて、加藤校長は埼玉県立高校の校長を何校も歴任し、県立高校の再編にも大きく関わった。マクドナルドの原田泳幸社長と風貌の通じる加藤校長のマネジメント手腕は目を見張るものがある。まず、各教員の先生方の一体感、自信、前向きな気持ちというものがこれまでになく強く伝わってきた。学校が変わるということはこういうことなのか、と私は他校では感じたことのない「衝撃」を受けた。これまでは先生方の気持ちの空振り、中途半端な印象があったが、現在は適切な形で物心両面の改革がうまく進んでいるようだ。

生徒の遅刻数の半減、大学合格実績の急増。地味なことでも結果が一つひとつ着実に形になっているからこそ、先生方のこのメラメラとした自信と気魄(きはく)につながっているのだろう。脱「バラ高」。小松原、要注目。大化けするかもしれない。

—(過去記事ここまで)

(6月25日訪問)