開智日本橋中学・日本橋女学館高校(中央区)

なんと!である。JR浅草橋駅から橋を渡って徒歩3分、「バシカン」として学力底辺層を収容することの多かった日本橋女学館が大改革を始めた。さかのぼること2009年、新校舎の完成と同時に都立三田・戸山高校の校長を歴任された揚村洋一郎先生が校長として着任。英語科教諭を都立高校から引き抜き、英語の授業レベルを引き上げるなど、進学校化を開始していた。

今年、揚村元校長は大阪の東海大付属仰星高校へ異動。本校には埼玉の開智学園理事長である青木徹先生が理事長兼校長として着任された。本校は開智学園グループに入り、中学校を「開智日本橋中学校」へと改称することになる。昔の「バシカン」を知る人間から見れば、驚きの連続ではないか。

まず中学校について。平成27年度より、中学新入生から共学化していく。6年後に共学化が完成することになる。校舎設備は校舎の改築時に共学化を想定しており、特に問題はないようだ。

新体制では三本柱を打ち立てた。

【1】探求型の授業
例えば、数学の正負の数で「マイナス」と「マイナス」を掛け算したら「プラス」になるのは何故か、ということを生徒たちに考えさせる。グループごとに生徒は相談をして、コミュニケーション力を育みながら、問題解決への方策を探っていく。そして、それぞれの考えを発表することで、発信力・プレゼンテーション能力を身につけていく。こういったことを各分野において取り組むことで、「何のために学んでいるのか」「それがどのようにして社会に役立つのか」を常に考えさせることになる。

【2】英語力
英語に力を入れる学校は理数系が弱いという。それは、数学は数学、理科は理科、英語は英語ということでそれぞれ別のものとして、英語の強化ならば英語に時間を多く割いてしまうために他の科目に手が回らず理数系がおろそかになってしまうということらしい。ここで、英語を語学として扱うのではなく、英語の教材の中に数学・理科・社会の内容を入れてしまって、それらをまとめて学習させようというのが青木校長の考え方である。

【3】国際バカロレアの導入
国際的に認められている大学入学資格のひとつである国際バカロレア資格にもとづくカリキュラムを編成したクラス(グローバル・リーディングクラス)を設置する。海外留学ではなく海外大学への進出、創造力・発信力をもったリーダーの育成を目指す。

以上が三本柱になるのだが、コースはGLC(グローバル・リーディングクラス:国際系)、LC(リーディングクラス:特進系)、AC(アドバンスドクラス:本科系)の3コースに再編される。もはや学校改革というよりは新規開校と言った方が相応しいだろう。

高校についてだが、高校は現校名のままで来年度募集を行う。これは、現行生徒には現行のシステムの教育を基本的に提供し続けることが学校側が通すべき筋だということである。その旧システムを見込んで生徒たちは入学してきたのだから。学校改革はあくまで新入生からということ。よって新しい中高一貫の体制づくりに6年掛かりで取り組んでいくことになる。

3年後には高校も共学化を開始。恐らく、校名変更も同時になされるのだろう。これまで設置されていた演劇・芸術・デザイン・音楽の各コースも現在見直しの対象となっており、どのような結果となるか、興味深い。スポーツコースについては、現在の狭い校地では体育教育の責任が持てないということで来年度から廃止。普通科の授業についても、これまで幅広い科目を学ばせるカリキュラムとなっていたものを、私大受験向けに授業科目をしぼる。例えば文系の高校3年生に数学を学ばせることは、教養の意味では良いことかもしれないが、私立大学受験を考えれば無駄が多く、こういうものは排除していく、ということだ。

「ハーバード、ケンブリッジ、東大、京大、早慶・・・6年あるから夢じゃない」というキャッチコピーを掲げているが、まんざら大風呂敷でもないようだ。仮にハーバード大学を受験することになった場合に必要となる奨学金の体制も、本校独自で整えていきたいとのこと。青木校長が理事長を兼務する意義は、こういう所で発揮されていくのだろう。

日本橋を含めた開智学園グループの教職員採用は一括で行い、最新の採用試験は本校で行われた。日本橋女学館は既に開智学園なのだ。進学研究会によると、柏にある系列の日本橋学館大学にも改革の手が伸びていくのではないかとの推測。実際そうなりそうな勢いである。

ただし、従来から奉職されている先生方にとっては、これまでの自分達の取り組みを全否定されるようなものだから、反発も強いだろう。この日、私が正面玄関から退出する際、年配の男性教員が玄関口に立っていたため「どうも有難うございましたー」と挨拶したのだが、ムスッとした表情で無言のままであった。教職員の入れ替え、若返りがこの数年で一気に進むかもしれない予感がする。

昨年まで説明会では、地元日本橋の山本海苔店の協力を得ていた浅草海苔の養殖、中央区長への街づくり提言、お茶の伊藤園とタイアップした商品開発などを行う実習「にほんばし学」の紹介に多くの時間を要していたが、今はその面影は無し。同じく地元の榮太樓総本舗の相談役が元理事長であったし、日本橋の地元感が強く発揮された学校であったが、どのような経緯で今回の学校改革に至ったのか。その経緯を知りたいものである。

追記
来年度の中学入試については、偏差値30台後半から55程度の生徒が受験して、大体45程度で合否の切れ目になるのではないか、との見通しだ。当然GLC・LCコースは難度が高くなるが、それでも偏差値50以上があれば80%合格が出せる見込みとしている。

(6/11訪問)

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kamiojuku