エキスを吸いつくせ

中3生の授業に過去問を使用しているのは、過去問の中に実になるエキスがふんだんに仕組まれているからである。例えば理科の問題を見てみよう。

(問) 実験の操作で発生させた気体について述べた文として正しいものはどれか。

ア:鼻をつくような特有の刺激臭がある

イ:空気中で火をつけると、爆発して燃える

ウ:気体中に火のついた線香を入れると、線香が激しく燃える

エ:漂白作用や殺菌作用がある

このたった一問でさえ、
『アはアンモニアのことだな、アンモニアはNH3だな、イは水素だな、水素はH2だな、2H2+O2→2H2O(一部数字は小文字)の化学反応式のことだな、ウは酸素のことでO2だな、さっきの水素は気体自身が燃えるけど酸素自身は燃えないで他のものを燃やすのを助ける働き(助燃性)があるのだな、エは塩素でClだな』
と、多くの基本知識の学びを得ることが出来る。

さらには
『イの水素とエの塩素を混ぜたらHClで塩酸が出来るな、塩酸は酸性の液体で、気体の塩化水素が溶けているのだな』
などと、いくらでもそこから知識を発展させていくことが出来る。

このようなことを各問題で一問ずつ繰り広げているうちに、ある問題とある問題が有機的に繋がって、点の知識が線の知識、線の知識が面の智恵へとグングン広がっていく。

生徒にはそこまで調べなさいよ、と言っている。

私が宿題で「調べる」ということを重点に置いているのはそういうことで、ただ授業の垂れ流しで話を聞いていただけでは右の耳から左の耳へと知識は通過して抜けていってしまう。そういうではなく、自分で調べて書き込んだことは自分の中に定着しやすくなる。

また、過去問には必要な問題しか出ないし、第一問題集を一ページ目から解くよりは断然面白い。成績が上がるノウハウだから実行しているのだが、そこまで根気強く調べることの出来る生徒(中3)が今年は本当に少ない。これではよい過去問集を使っても宝の持ち腐れ。残念なことだ。