上野学園中学・高校(台東区)

JR上野駅入谷口から徒歩10分。岩倉高校の脇を抜けて首都高速上野線の下をくぐり、東京メトロ銀座線の車両基地踏切を越えた先に15階建てガラス張りの高層ビルが現れる。平面がほぼ正方形のこの校舎は2004年の創立100周年の際に新築され、敷地内には大規模なパイプオルガンが備え付けられたコンサートホールの「石橋メモリアルホール」もある。

今年で創立109年。元々は女子校であったが2007年に共学化され、現在は校舎の4-9階を中学・高校、10-15階を音楽専門の上野学園大学が使用している。上野学園大学といえば、世界的ピアニスト辻井伸行氏が2011年に卒業している。

15階には展望ラウンジと中高生も利用できるコンパクトな大学図書館がある。5階から9階までは中高の各教室、特別教室が「回」の字型に配置。中学・高校にも音楽科が併設されているので「回」の中央にピアノを置いたレッスン室などを細かく配し、廊下を挟んで普通教室がそれを取り囲んでいる。

4階は職員室と自習室。自習室は廊下の窓側にパーテーションで仕切りをつけただけなので後付けの感は否めないが、中央に職員室と隣接する多目的教室があり、生徒たちはそこで夜8時まで自習をすることが出来る。これらの席数を総合すると、100席以上の容量は軽く超えていると見えた。

さて、3階はワンフロア丸ごと食堂(カフェテリア形式)となっており、ここで中学生は給食、高校生は食券で好きな昼食を購入する。もちろん大学生も利用しているので、昼食時には各年代が入り混じってカオスの雰囲気。売店が食堂入口にあり、音楽学校なだけに五線譜など専門用具を販売している。

1階にはセキュリティゲートを据えつけており、生徒・学生はICカードをタッチして入館する。いわゆる学校の昇降口のイメージではなく、あくまでオフィスビルの出入口でしかない。靴のままゲートを通過し、エレベーターに乗る。エレベーターは3+1で計4機稼動し、建物両脇に階段がある。非常階段の方にはグランドピアノを運べる39人乗りの大型エレベーターが隠されていた…。

地階はこれまたコンパクトな体育館で、シャワー付き更衣室を利用する時もICカードで認証をしないと入室出来ない。体育館は客席が収納されており、講堂も兼ねている。本校は校庭が無く体育施設が限られているので、近隣の旧公立学校の校庭および浅草のリバーサイド運動場を借りて体育の授業と運動系の部活動を行う。

校舎の説明だけで息切れしそうだが、高層ビルであるために各教室の窓ガラスは開閉不可能。完全空調となっており、教室前方には空気清浄機が設置されている。教室内は床、机ともに木質で暖かい雰囲気。黒板ではないホワイトボードにプロジェクターも装備されている。廊下は白い壁だが、私としては2年前の訪問に比べて大分汚れてしまった印象を持った。エレベーターホールの壁は階ごとに色分けがなされている。

中学は20名弱、高校は30名程度。これが本校の1クラスあたりの人数配分だ。全日制の学校でここまで少人数の体制を組んでいる学校は他ではあまり聞いたことがない。

校舎のあちらこちらにピアノが設置され、音楽演奏の出来る環境に満たされているわけだが、中学生では普通科でも1人1楽器を習得させ、中3でアンサンブルの演奏会を行う。また土地柄、上野公園内にある国立科学博物館、東京国立博物館と連携して、観察レポートの課題を長期休みの期間に行っている。

高校の普通科は「特進α」「特進β」「総進」の3コースに分かれる。ただし、「特進α」の教室を覗いてみたが、教卓の頭上に「目指せ!日東駒専レベル」と額が掛けられてあった。そういうことか、と思った。20代から30代の若い先生がやたらと多いので、進学実績はこれから先ということになるだろう。

これまで述べてきたように上野学園は他校に比べて異色の校舎であり、その結果生徒の特性・属性も定まるように思う。いわゆる「箱入り」の感覚で概して大人しい、「ほわ~ん」とした印象。いずれの授業も整然とした様子で行われている。中学男女比は9:16、高校男女比は7:10。中学からの一貫生は多くが「特進αβ」に進むが、生徒の学力状況によっては「総進」へ進む場合もある。この場合、総進30名クラスのうち27名が外進、3名が内進となる。

通知表に所見欄がなかったり、人数が少ないのだからもう少し細かく個別にカスタマイズをした指導が出来てもよいのに、と思うのは本校に通う塾生を見てたびたび思ったことでもある。しかし、この学校はこれはこれでいい。今回の訪問でそう思えてしまったのも事実である。

2年前の訪問時は杓子定規的な、説明も棒読みな型通りで他校から移植した進学ノウハウをただ実行しているような感があったのだが、この2年間で若手の先生方が成長を続け、のびのびとした雰囲気が出てきたように思う。また、それぞれの若手の先生が各自学校を引っ張っていこうとする自負が出てきているように感じた。そして、ベテランの先生方もそこによい刺激を受けているような気がする。

石橋校長があまり表に出て来られず、ある種雲の上の存在のようになっているので独特な指揮系統になっているように思うが、若手とベテランのよい相乗効果が今後高まっていくのではないか。私は期待している。