他人事でない話

先日、拓殖大学紅陵高校の学校訪問の記事を掲載したが、その際の森校長のお話の中でこのような話題があった。

「在校生の2-3割は就職を希望している。しかし、現実に就職は厳しい。現在40歳代を中心とする生徒の親の世代は、仕事に就くことがどうにかなった世代であり、家庭内では子供にも『就職は何とかなる』と話している。したがって子供自身の危機感が大変薄い」

また、

「上位大学へ合格することは現実的に困難の大きいことであり、上位大学を目指して必死で頑張って勉強をしている生徒と、推薦・AO入試の制度を利用して希望すればそれなりの大学に入れると思っている生徒、つまり学校や塾に通っているだけで安心感に浸ってしまって自主的な行動が出来ない生徒。この両者の意識のギャップが激しく、これをどのように埋めていくかが本当に難しい」

という内容。全く同感であり、仮に後者の生徒に対して学校・塾が再三にわたって奮起を促したとしても、家庭環境、生活習慣の中でその生徒に蓄積されてしまっているある種の価値観を変革させていくのは容易ではない。

このように、家庭ごとの差が生徒の差に反映され、それが生徒の今後の生き方にそのまま反映されていく。それは結果的に個人の問題だけではなく、社会全体の意識の問題、社会整備の問題と直結していくのだから、誰にとっても他人事で済むような要素は一つもないということである。