暗示をかけるな

昔勤めていた学習塾で、同僚のスタッフが授業後の生徒に盛んに「疲れた?大丈夫?疲れた?」という言葉を掛けていた。声を掛けられた生徒は、別に疲れていなくても「自分は疲れたのか?そうか、疲れたのだ」と認識してしまう。もしくは「授業後は疲れるものなのか、そうだ、自分は疲れている」と思い込んでしまうようになる。これを「暗示」という。

「お前は数学が出来ないから」「お前はバカだから」ネガティブな言葉を相手に吹き込み続けると、それが当人の暗示となって当人自身を縛るトラウマ、コンプレックスとなっていく。なので、私は出来る限り生徒に対して「暗示をかけない」ことを日々意識するようにしている。

もちろん「暗示」には2種類があり、上述した負の暗示だけでなく、「やればできる」のような善の暗示もある。後者は使い方次第ということになるが、私としてはいちいちそういう言葉の定義は用いず、淡々と目の前の自分の仕事に取り組める生徒に育てたいと思うのである。