都立足立特別支援学校(足立区)

東武スカイツリーライン谷塚駅からバスで10分。足立区の端で、通りを挟んで埼玉県草加市、また八潮市もほぼ隣接している。
本校は知的障害を対象としており、普通科(足立区、荒川区と葛飾区の一部が学区)および職業コース(全都対象)が併設。低層校舎が校地に分散して建っている。築35年の校舎は近年改装を経て、大変きれいである。

全校生徒220名で、都立の特別支援学校としては小規模校となる(400名を越える学校もある)。今後、板橋区、江戸川区でも特別支援学校が開校の予定で、他校では生徒数が年々増加しているが、本校の生徒数は横ばい。

小回りが利き、丁寧な指導が可能となっている。全31学級で、普通科25学級、職業コース6学級。1クラス普通科6-8名、職業コース8名で、重度学級は1クラス3名となる。担任は各クラス普通科2-3名、職業コース1名が配置。つまり、1学年あたり普通科は50名、職業コースは16名程度ということになる。部活動はスポーツ4種類(バスケ、卓球他)、文化系5種類(音楽・読書他)が活動している。

入学に際しては、療育手帳または医師診察記録が必要。また、夏休み以降、本人および保護者が事前相談を受けないと出願できない。

【普通科】
本校は進学ではなく、就労・社会参加を目的としている。陶芸・園芸・木工・折物・ビルクリーニング・縫製・モザイクタイルなどの作業学習が充実し、指示の理解・勤務態度の涵養・一人での通勤が出来るよう企業自習も1年から3年まで毎学期行われている。実習はまず近隣の企業から段階的にスキルアップを目指し、3年生で実習企業とのマッチングを図ったうえで採用につなげる。(ただし、全員パート採用であり、正社員採用には至っていない。勤務先は自宅から1-1.5時間程度が多い)

昨年の卒業生49名のうち、16名は本校卒業段階での就業スキルが不足しており、更に職業訓練を受けさせるために「就労支援施設」に進んでいる。
尚、カリキュラムにおける普通科目(国語・社会・数学・理科・英語・音楽・美術・保体)は全体の1/3程度になっている。

【職業コース】
普通科と同様に、職業コースもあくまで就労を目的としている(大学・専門学校の進学には単位数が足りない)。職業コースは各学年2クラスで16名と少ない。就労率は94%でほぼ全員が就労していることになる。週1回の企業実習に加えて、漢検などの資格取得も支援。作業実習では、物流、フードサービスを全て実務で経験する。例えばパン作りであれば、一人ひとり異なるパンを作らせている。それにより、上からの指示を待たずに自分で考えねばどうにもならない、という状況を経験させる。このようにして製造だけでなく販売、会計も実務として体験させている。

ちなみに企業実習は即就労につながるもので、就職が決定するまで、実習を続けることになる。就労支援が徹底しているということだ。雇用形態は近年契約社員がほとんどだという。クラス8名が全て1人ずつに分かれて実習先へ向かう。東洋大学図書館、イエローハットなど8つの事業所。

本校の職業コースは、普通学校と特別支援学校の中間に位置していると考えればよい。普通科に対する上位コースの位置づけだ。だからこそ人気も高いのだが、生徒本人および家族がしっかり納得した上での入学でないと、厳しい就労訓練が続けられなくなり、挫折する可能性もある。よって、本人の意志と家庭の全面的なバックアップが不可欠だ。

普通科目の授業は、普通科の逆で2/3が普通科目、1/3が作業学習・職業学習となる。

【その他】
11月に都立永福学園他の出願と試験(入学相談)が行われる。これを前期と位置づけて、その後12月に永福学園の後期、または足立特別支援学校職業コースの出願と入試(入学相談)が並ぶ。これらに不合格となった場合、各学区域の特別支援学校普通科に出願し、これは必ず入ることが出来るようになっている。

いずれにしても、全ての学校、それぞれのコースで事前相談を受けないと、出願が出来ない。

学校の印象としては、作業中心と少人数ということだけで、校内や生徒の雰囲気は他校とほとんど変わりが無い。むしろ、廊下に生徒の作文が掲示されており、きれいな文字で書かれた大人顔負けのしっかりした文章が大変印象に残った。