東武アーバンパークラインの新柏駅からスクールバスで10分。住宅地を抜けて山林が見えてきたと思ったら、それが増尾城址総合公園であった。鎌倉時代から戦国時代にかけて増尾城という城が築かれていた。その公園の東側に位置しているのが、通称「芝柏(シバカシ)」である。
本校は付属第一高校を経て1980年に開校し、当初は男子校であったが、1990年に共学化された。今年は隣接していた旧資材置き場の土地を買収して第3グラウンドとした。拡張された校地を活用して今後校舎を改築する方針も出ている。
教育理念は「創造性の開発と個性の開発」。注目ポイントは、徳目をうたっていないという点で、公正・中立であって昔の公立高校のような伸び伸びした雰囲気を大切にしている。
また、特定の生徒を集めて特進コースを作ることもせず、あくまで全体を伸ばすことを目指している。大学は東大を含めた国公立に29名進学(のべ合格45名)、早慶上理が65名進学(のべ合格144名)となっている。現在、芝浦工大が難化しており、GMARCHクラスの大学よりも芝浦工大に入る方が激戦になっているという。よって本校から芝浦工大への合格者数は3年前は100名前後あったものの、今年は88名にまで下がっている。その分、埼玉の難関高校が芝浦工大の合格を多く勝ち取っているらしい。(芝浦工大の1年次は埼玉の大宮キャンパス)
菅沢校長が掲げる今年度の本校の目標は「アクティブ・ラーニングの研究」「県立東葛飾中・高との競合対策」「進学実績の向上(センター得点率75%)」で、アクティブ・ラーニングについては与える一方の授業ではなく、生徒が自ら考え、自ら行動していくための土壌を学校が耕す、と言えば良いだろうか。
例えば手帳を使用した生徒のタスク管理や、毎回テストが終わった時点での次の目標設定。これらを通して「自ら計画を立て、実現する力」を養っている。進路の手引き・学習の手引きを充実させ、ノート術(使い方)、記憶術(覚え方)という道具の使い方をふんだんに用意していく。現代は勉強をしない子が増えているけれども、課題をドカンと大量に与えるのではなく、ひたすら勉強の仕方を教えることに徹しているのだ。
それにより、自ら学び続ける生徒への脱皮を目指していく。近年ではリクルートの「受験サプリ」も活用して、生徒の学力が停滞している場合は「受験サプリの過去学年のここに戻れば良いのだよ」と指示して学習させている。
「グローバル・サイエンス」も本校の重要テーマだ。本校は2004年から5年間、文部科学省よりスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)の研究校として指定され、指定が外れた現在もその理念を継承した取り組みを行っている。特徴的な事柄で言うと、1人1台のPC所有によって「Web教材開発コンテスト」に参加したり、海外の科学教育にプレゼンテーション参加をしたり(この生徒には千葉大から飛び級入学のオファーが来ている)、福島県の自校所有の山林の保全を行ったり、というものもある。中3(15万円)高2(20万円)では必修の海外研修もある。
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様々な学校を訪問しているが、芝柏のような難関校になると、先生方の頭脳のキレの良さもお一人お一人が際立って見えるし、お話を聞いていても面白い。話の内容も洗練され、無駄話がひとつもなく、どれもが簡潔。それでいて考え尽くされた上での発言だから、聞いているこちらも頭の細胞がグルングルン巡ってくるような快感を覚える。そして、「与えられたから」「そうなっているから」という受身の姿勢ではなく、「自分が考えるんだ」「自分が行動するんだ」というポジティブな姿勢から来る「明るさ」があり、だからこそ学校全体が「創造性」の空気に包まれている、という何とも至福を感じてしまった学校訪問であった。