明治天皇は生涯で93,000首の和歌(御製=ぎょせい)を詠まれている。声に出して読んでみよう。
世の中に ひとりたつまで をさめえし 業こそ人の たからなりけり
【意味】社会に出て、自分が自立自営することが出来るその職業こそは実に人の宝である
身にあまる 重荷車を ひきながら いそがぬ牛は つまづかずして
【意味】身にあまるような重い荷車をひきながら、のろりのろりと歩いている牛がかえってつまずかない。すなわち成功を急がぬ者がかえって良結果を得る
なすことの なくて終らば 世に長き よはひをたもつ かひやなからむ
【意味】何の為すこともなく、徒(いたずら)に生活しているということであれば、この世に長い寿命を保つ甲斐がないであろう
かたしとて 思ひたゆまば なにことも なることあらじ 人の世の中
【意味】とても困難であるからと言って途中で挫折するようなことでは、何事も成し遂げるということは出来ないものであるから、どこまでも困難と戦ってこれにうち勝つようにしなければならぬ
いく薬 もとめむよりも 常に身の やしなひ草を つめよとぞおもふ
【意味】いくつもいくつも薬を買い求めるよりも、まず心の修養に努めることが肝要である
論語にしても御製にしても、こういうものを読んでおくかどうかで人間の素養が決まるような気がする。知っているから偉いという訳ではないが、平常の心の持ち方であったり、人生の幅、ゆとり、奥ゆかしさを育むためにはもってこいの材料であると思う。また、子供だけでなく大人もお年寄りもこういう言葉に触れ続けるべきだと思う。