すぐやる!必ずやる!出来るまでやる!

日本電産創業者・永守重信さんの著書より。

—(抜粋ここから)
▼トイレ掃除▼
わが社では、1975年ごろから新入社員は一年間トイレ掃除をするという習慣ができあがりました。しかも、ブラシやモップなどの用具は一切使わず、すべてを素手でやることになっています。

便器についた汚れを素手で洗い落とし、ピカピカに磨き上げる作業を一年間続けると、トイレを汚す者はいなくなります。

これが身につくと、放っておいても工場や事務所の整理整頓が行き届くようになってきます。これが「品質管理の基本」であり、徐々に見えるところだけではなく見えないところにも心配りができるようになれば本物です。
(P.63)
—(抜粋ここまで)

・・・トイレ掃除についてその是非をとやかく言う風潮がこの頃あるが、私自身トイレ掃除を自分でするようになってからトイレをきれいに使おうと心掛けるようになった。自分でトイレ掃除をすることの効果はこの点に尽きる。

つまり、トイレを使う「受け手」からトイレを使わせる「与え手」の立場に視点が転換できる。このように複数の視点からモノを見る考え方を「複眼思考」といい、永守さんのいう「心配り」にも繋がるのである。

—(抜粋ここから)
▼決断するまでのスピード▼
私は会社の命運を左右しかねない大きな決裁は月曜に下すと決めています。それは、日曜に丸一日かけてあらゆる角度から何度も検討することができるからです。

これに対して、通常の意思決定は一分以内を原則としています。これを可能にする秘訣は、基本方針、基本理念を自分自身で絶えず反芻(はんすう)、確認していることです。

どれほど多くの案件があったとしても、そのほとんどは基本方針、基本理念の応用にしかすぎません。この決断までのスピードが勝敗の分かれ目になったことも少なくありません。
(P.77)
—(抜粋ここまで)

・・・この話は、ビジネスのみならず勉強にそのまま通じる。つまり、基礎を徹底することで応用力を自在に使いこなせるようになるという話だ。

—(抜粋ここから)
▼プロの世界▼
数年前、渡米する飛行機の中で世界中に名前を知られたピアニストと、偶然席が隣り合わせになりました。その人は食事が済むと、ピアノの鍵盤の模型のようなものを取り出して、それをたたき始めました。

理由を尋ねると、「1年365日練習が欠かせない。一日休むと自分にわかる。二日休むとパートナーにわかる。三日休むと観客にわかる」といった答えが返ってきました。

プロの世界というのはすべて同様で、地道な練習を継続する以外に近道はないことを思い知らされました。
(P.93)
—(抜粋ここまで)

—(抜粋ここから)
▼人間の潜在能力▼
「火事場の馬鹿力」という言葉がありますが、32年間の会社経営の中で、本当に人間にはとんでもない潜在能力が秘められていると痛感させられたことを何度か経験しています。

この潜在能力が発揮できるかどうかは、ひとえに緊張感があるかどうかです。会社や職場、そして個人にも緊張感がなければ、奇跡とも思えるような逆転ホームランが飛び出すことはありません。

緊張感を生み出し、これを持続させることができれば、多少の能力不足は軽く補うことができると思っています。
(P.94)
—(抜粋ここまで)

・・・塾の宿題でいえば、入塾当初は生徒本人が緊張感に包まれているため、「火事場の馬鹿力」を発揮して正答率が高くなる。ところが、次第に塾慣れしてくるとダラダラとした気分でミスも多くなり、馬鹿力も封印されて正答率も下がってくる。

その生徒が伸びるか伸びないかの違いは、この緊張感の有無だと断言できる。教えられるだけの授業や、手取り足取りで面倒見の良すぎる指導でも生徒の力は封印される

「馬鹿力」を引き出すための、与え方の加減。塾の指導の成否はそこに掛かっているのだ。

—(抜粋ここから)
▼先んずれば人を制す▼
1980年度の入社試験は、試験会場に早く到着した者から順に採用していくというものでした。

「そんな無謀なことを」と思われるかもしれませんが、この試験を実施する前に、社内で一定期間調べてみると、出社時間の早いか遅いかによってその成績に差があることが、はっきりとデータにもあらわれていたのです。

「先手必勝」とか「先んずれば人を制す」という言葉がありますが、ビジネスの世界でも例外ではありません。時間的な余裕は心のゆとりにつながり、この積み重ねがやがて大きな差となるのです。
(P.107)
—(抜粋ここまで)

・・・当塾でいえば、例えば開始時間ちょうど、またはギリギリに入室する生徒と、5分から10分以上のゆとりをもって入室する生徒にその違いが出ている。どの世界でも同じだ。

—(抜粋ここから)
▼ベルサイユ宮殿のコイ▼
ベルサイユ宮殿には大きな池があり、たくさんのコイがいるのですが、観光客が餌を与えすぎたため、ブクブクと太って岩陰でじっと休んでいるそうです。

このコイをかつてのようにスマートで優雅に泳ぎまわらせるためには、コイの天敵であるナマズを一匹放つのが最良の方法だということです。

会社の中でコイに緊張感を与えるナマズの役割を果たすのが社長です。その社長が平日にゴルフに行っているようでは、会社はベルサイユ宮殿の池と同じ運命をたどるに違いありません。
(P.165)
—(抜粋ここまで)

・・・過去記事「ナマズはいるか」の話。

これは個人の実生活にも通じる。多少の悩み事や心配事が一つや二つくらい常時あった方が、むしろ緊張感を保てて良いのだろう。

—(抜粋ここから)
▼部下に仕事を任せる心得▼
部下に指示を与えて仕事を任せるときには、その人の能力より少しだけレベルの高いことを任せるのが最良の方法です。その後もあわてず、徐々にレベルを高めていくことが重要となります。

少し仕事ができるようになったからといって、部下をむやみに褒め続けるのは問題があります。わずかな成功にうぬぼれてしまい、それが大きな仇(あだ)となるケースも少なくないからです。

たしかに、叱ることも難しいのですが、それ以上に褒めることのほうがもっと難しいと私は思っています。
(P.170)
—(抜粋ここまで)

・・・世間の教育論に「褒めて褒めて褒めまくれ」の風潮があるが、私も褒めることが最も難しいと思っている。

褒めてその生徒が良くなるならば、いくらでも褒めるのだが、「褒めると落ちる法則」というものがあって、特に勉強が苦手な生徒はメンタルが弱い傾向があるから、褒められたら「このまま頑張ろう、更に頑張ろう」とならずに、「これでいいのだ」と思って油断し崩れが始まる。

結果的に「褒めなければよかった」と私自身、後悔することが少なくないのだ。

したがって、本当に褒めたいと思った時に褒める。当塾で褒める行為はそこだけに限定している。

『情熱・熱意・執念の経営~すぐやる!必ずやる!出来るまでやる!』
(永守重信・著、PHP研究所)
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-64030-3

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