夏期講習と”お客様”

私が大学1年生の時に初めて講師アルバイトをした学習塾では、当然のことながら夏期講習を行っており、朝9時開始の夜9時終了、ほとんど立ちっぱなし、喋りっぱなしという40日間を送っていた。

喋りっぱなしというのは、先生が一方的に喋る講義が主体だったという意味で、反対に生徒の側からすれば「早く終わらないかな」と壁を眺めて他のことを考えながら過ごすのである。

生徒に問題を解かせる演習というのも、ただ生徒に解かせれば済む訳ではない。ある程度の熟練がないと出題が的確でなく、生徒の退屈を誘発して時間が間延びしてしまうのだ。

このように、夏期講習で何十コマ分の授業料を家庭側が投資しても、費用対効果が発生するのは成績上位3分の1以上が目安であり、残りの生徒は「お客様」になりがちなのである。

「お客様」というのは、生徒がそこに座っているだけの「傍観者」であり、「当事者」になっていないということだ。但し、その「お客様」が一定割合来てくれるから、塾の規模が大きくなるほど設備投資にお金を掛けられる。

随分前の話になるが、ベネッセの進研ゼミにおける添削の提出率は大体2~3割だという話を聞いた。残り7~8割は添削課題も着手せずに教材を受け取るだけの「お客様」ということだ。ところが、添削の提出率が5割を超すと、赤ペン先生の人件費が賄えず、ベネッセにとって事業が破綻するという。大人向けの通信教育でおなじみのユーキャンでも提出率は1割程度だろうという話も聞いた。教育産業がテレビCMなどに多額の広告費を掛けられるのは、多くが手の掛からない「お客様」だからだ。

夏期講習の話題に戻ると、「夏期講習を申し込んだことへの安心感」「学校のない夏休みに子供が塾に行っていることでの(勉強をしているだろうという)安心感」で、これまでの講習会ビジネスの多くは成り立ってきた。

そういった上っ面のビジネスモデルも、そろそろ終焉を迎えつつある。

この記事を書いた人