指導報告書で”やってます感”

多くの学習塾・家庭教師センターでは講師に対して「指導報告書」の記入を課している。中小規模の塾になると、講師が手書きした報告書をそのまま保護者に郵送する場合もある。現在ではWeb上で打ち込み・閲覧のできるオンライン報告書も主流になりつつある。

私も身に覚えがあるが、指導報告書の記入は講師の気分として徐々に形骸化しやすい。生徒への洞察力が備わっていない段階で、複数の生徒に対して文面を一気に書くものだから、「今月はよく頑張りました。中間テストの結果が楽しみです!」「来月はもっと頑張りましょう!期待しています」のように、当たり障りのない定型文を使い回しするようになっていく。

言ってみれば、保護者や会社に対する「やってます」感を出す、自己アピールに執筆の目的が置き換わっていくのだ。

ちなみに、大学生をはじめとするアルバイト講師の時間給は90分ならば90分という授業時間に対してチャージされるものであって、その他の授業準備・予習・報告書の記入は無給での作業になる。そんな所までチャージしていたら経営的に持たないというのは、会社側としては確かにそうだろう。時間講師の立場からすれば、そんな状況だから報告書の記入はさっさと終えて、1分でも早く帰りたいのである。

こういった構図があるので、世に多く存在する「指導報告書」ほど形骸化したものはないだろう、と私は思っている。

尚、当塾では指導報告書を設けず、毎回の連絡ファイルに代えている。これは保護者への報告という意味もあるが、生徒への伝達・叱咤も含めて何よりも第一は、指導側である私の思考の土台になっている。本日の時間、内容、CT(確認テスト)の出来具合、宿題、最新のスケジュール、といった段取りを連絡ファイル上で戦略会議しているのである。

当然、この結果は私のPCにデータとしても転記しており、私が指導時間中にキーボードを叩いているのはその為である。すなわち、当塾において連絡ファイルが形骸化することはあり得ない。このように、指導報告書ひとつを掘り下げてみても、実は奥深い世界であることが実感できるのだ。