教材探しの旅

当塾では入塾からいきなりノートを使うことはあまりない。まずはプリントで慣らしてから、安定が見えてきた所でノートを使い始める。

ノートを使いこなすことは生徒の取り組みにおいてある程度の「質」が必要で、そこに至らない間はプリントに直接書き込ませる方が生徒のモチベーションも保てるし、指導側にとっての管理もしやすい。

さて、問題集選びはアレもコレもと浮気をせずに、コレと決めた一冊を徹底的にマスターするのが勉強の定石である。学校で教科書とワークをもらい、塾で問題集をもらい、それで足りないのでは、と親が心配して進研ゼミを始めさせたり、市販の教材を購入したりする。これは質と量を使いこなせるレベルの生徒であれば構わないが、一般的には愚の骨頂である。

ということで、当塾においてもコレと決めた一冊で完結させる塾にしたいということを常々考えている。

ところが、塾用教材にしても市販教材にしても、それぞれが一長一短で「コレだ!」と断言出来るものに出会うことが難しい。

例えば、育伸社の講習用ベストセラー教材『練成ゼミ』の国語では、現代文の読解問題に「言葉の意味を確認しなさい」という問題が必ずついており、安易に受け取る生徒は「確認するだけでいいんだ」と、まずその問題を空欄にする。

同じく『練成ゼミ』の英語では、並び替え問題で「並び替えなさい」とだけ書いてあるから生徒はその部分だけを並び替えるのみで全文を書かない。「( the / play / I ) piano.」という問題ならば正答に「I play the piano.」と印字されている所を、生徒には「I play the」とだけ中途半端に答えさせてしまうということだ。それならば「並び替えて全文を書きなさい」と踏み込んだ具体的な指示を印字すべきである。

こういったことは問題作成側のインターフェース(人間工学の視点)の落ち度なのだが、そういう細かいストレスがあって、育伸社の教材に没頭できない自分がいる。

教育開発の『新中学問題集』は私が子供の頃にも存在していた塾教材のレジェンド的存在で、今でもB5サイズを堅持して持ち運びやすく、その学年の内容をほぼ完ぺきに網羅している教材であるが、全ての生徒に対して使いこなせる教材でなく、中上位層にしか向かない。

スプリックス(森塾)の『フォレスタ』シリーズは解法のサンプルとそれに準じた類題が充実し、過去学年の反復用としても優秀な教材であるが、近年はスプリックスのコンサルを入れないと『フォレスタ』を導入出来ないように囲い込みが進んでしまい、自分のやり方で使いたい私にとっては残念である。

上記の教材会社は直販で基本的に取次店を介さないが、
京都の都麦出版は小規模な出版社で時代の流行に左右されることのない骨太な教材を刊行しており、こういった会社は取次店を介することになる。

取次店を介するような良質な出版社は多数あるが、小規模なゆえに<教科書改訂>という時代の波に都度対応することが難しく、そういった教材ばかり使っていると「学校の定期テストに対応できない」(改訂前の古い単元が載っている、改訂後の新しい単元が載っていない)といった現象が起きてくる。

とすれば、どうしても直販の大手教材会社と縁を切ることもできない。

ほぼ4年おきの「教科書改訂」が本当に意味あるのか?「時代の流れ」「生徒のため」は表向きの名目に過ぎず、本当は教科書会社の利権?が裏目的ではないのか?と勘ぐってしまうが、兎にも角にも、私は「じっくり “この一冊” に託せる教材」探しの旅を今日も続けている。