当塾の運営で以前と変わってきたのは、板書の機会が激減していることである。先生が黒板に大切なことを書いて、生徒が黙ってそれをノートに書き写す、という従来の定番の手法は、ともすれば生徒の頭が働かず、ただノートに書き写す「作業」と化してしまっている場合がある。そういう無思考の状態を排除すべく、大切なことは口頭で伝え、その言葉を生徒は集中して聴き、稚拙でもよいから生徒自身の言葉でノートやプリント、連絡ファイルに書き込ませるようにしている。
同様に、はじめから完璧なノウハウを教えなくなってきたことの一つに、小学生の最小公倍数の求め方がある。最小公倍数といえば、割り算の筆算の際に用いる雁垂れのような記号を書いて求めるが、導入段階から「雁垂れの記号を書くのだよ」と教えるのではなく、例えば「18と12の最小公倍数は?」と、いきなり無茶ぶりしてしまうのである。
雁垂れの記号を書けば、6×3×2で36になることが容易に分かるが、それをせずに「18の倍数」「12の倍数」を頭の中で思い浮かべさせ、その交差する36という地点を見出させるのだ。
何てことのない話なのだが、決まりきったノウハウを初めから教えるのではなく、自力で解を見出させる方法。こういった積み重ねが「自分で生き抜く力」に繋がるのではないか。
※もちろん、初めからノウハウを教えた方が手っ取り早い場合はノウハウを教える。