四天王寺中・高(大阪市天王寺区・女子校)

【概要】
大阪メトロ谷町線の四天王寺前夕陽ヶ丘駅から南に徒歩5分。推古天皇元年(593)、聖徳太子により創建された四天王寺。その四天王寺の境内に建つのが大正11年(1922)に創立された四天王寺中学校・高校である。

西側に大阪星光学院(男子校)、東側に四天王寺中高(女子校)と、大阪における最難関校が南北を結ぶ谷町筋を挟んで双璧をなしている。本校は中高生徒数2000名のうち、30%は他府県からの通学、全生徒のうち70%が理系を選択している。

※藤井寺駅前にある系列の四天王寺東中・高はこちら。

【指導の特徴】
聖徳太子の十七条の憲法「和を以て貴しとなす」を建学の精神として、女子の特性を踏まえた指導を展開。以下が三本柱。
◎質問しやすい環境(安心感)
◎先生が課題とノートをきめ細かくチェック
◎理解度とスピードのバランスを踏まえた授業
授業時間は公立の1.5倍実施されるため、中2末までに中3単元を終える。理科実験(体験)に力を入れているため、理系を希望する生徒が増えている。

授業は「基礎型学習」と「探究型学習」を区別し、希望制で「キャリア講座」「病院建学(京大医学部一日体験)」「京大法学部一日体験」といった生徒の志向に対応したイベントをコースに関係なく選択し、参加できる。

【女子教育】
◎共学の女子→男子に対して容姿を気にしてしまう
◎女子校の女子→異性の目を気にせず自分づくりができる。男子に頼ることなく積極的に行動できる(女子校出身者はリーダーシップが強くなる)

【生徒の気質】
「明るさ」「強さ」「安心感」「自信」。
毎朝、合掌しながら正門をくぐる。四天王寺の神仏に守られている安心感。そして、その合掌も先輩の動きを真似して習得するという本校に流れている気脈の「継承」と卒業後に活躍している先輩から得る「勇気」。

【大学入試改革に向けて】
発信力を鍛えるプレゼンテーション大会、eポートフォリオのClassi(クラッシー)を全員に導入。英語4技能(書く・読む・聞く・話す)を自動対応できる「Torepa AI」を企業と共同開発し、AIが相手だから生徒は物怖じせずに、堂々と4技能を磨くことが出来る。

【学びたい場所で学ぶ】
学びたい時に学びたい場所で学ぶことが最も力になるという女性の特徴。ということで、学習プラザ・教室・談話室・図書室・食堂で放課後自習が出来るようになっている。図書室で下級生がうるさければ上級生が叱る文化がある。食堂では放課後卒業生が学習サポーター(阪大生など現在15名登録)として在校生の宿題等の質問に答えている。

一般的に、学力の高い学校は校内の自習環境が充実しており、本校はまさに全校を挙げて勉強する環境になっていること。そして、随所に上級生から下級生への継承が行われていること。この辺りは本校の大きな特色と言えるだろう。

【進路】
今春の卒業生は458名で、医学部進学者が多い。
事例では英数1コース(592名受験、448名合格)の入学順位440番でも本校に入学後、コツコツと頑張って医学部に進学している者もいる。

推薦は国公立10(現在国公立大の定員の約2割が推薦となっている)、私大指定校推薦が早稲田6、同志社6、立命館6など、全308枠用意されているが実際に利用している生徒は35名に留まっている。

【医学部への進学】
本校のコースは「英数1→英数2→医志」と難度が上がっていき、医志コースは関西最難関。

【女子校出身者が強い】
東大理3の女子合格者を見ると
◎今年の合格者100名中19名が女子、そのうちの12名が女子校出身者
◎昨年の合格者100名中16名が女子、そのうちの12名が女子校出身者
となっており、女子校は全国の7%程度の割合でしかなく、医学部自体が定員100名のうち女子枠が20-30名程度だが、女子校出身者が実力を有していることがこの数字から理解できる。

【中学入試】
◎合格のための得点率(算数)
医志コース68%
英数2コース53%
英数1コース41%

◎合格のための得点率(理科)
医志コース80%
英数2コース64%
英数1コース53%
※物理分野の問題が特に大事。

◎コース別の募集人数
医志コース35名
英数2コース90名
英数1コース120名
文化・スポーツコース20名
→在学中のコース変更は行われない。

◎受験者割合
3科入試22%
4科入試78%
※算数・理科を得点源にすることを推奨。

◎合格倍率
H31=合格者数552/受験者数695
H30=合格者数492/受験者数621
H31=合格者数438/受験者数512
→概ね倍率1.2~1.3倍になるようにしており、年ごとに難易度を変えることはしない。

◎合格者の得点率
医志コース75-80%
英数2コース70%
英数1コース60%

【まとめ】
校地面積は他の近隣私学とほとんど変わらないはずだが、比較的小型の新旧の校舎が東西に隣接して建っているので、全体がコンパクトな印象を受けるが、一方で地下2階に大規模な講堂である「和光館」が存在していたりと、校舎ごとに異なる新旧の建物の風合いと相まって、何となくキャンパス全体に迷宮感がある。

校舎がきれいかと言えば、窓サッシや床のじゅうたんに埃がたまっていたり、生徒が通りすがりにそんなに挨拶をするわけでもない(する生徒もいる。しない生徒が多い)。でも、私から見たら本校はこれでよいのだと思う。

学力にそう自信の持ちにくい学校は、生徒が芸能人のような振る舞いでやたらとコミュニケーション能力が高く大声で挨拶していたり、何というか全体を足して2で割ったら人類皆平等、というところだろうか。だから学力の高い学校が偉いわけでもない。

いずれにしても本校は知力と内面の知恵を磨く「アカデミック」の学校である。説明会における先生方のお話も「大脳皮質が…」といった文言がところどころに織り込まれて理知的であり、学力の高い学校特有の「明解な論理性」のようなものが貫徹しているように見える。

さて。
正門を出て、お彼岸真っただ中で人がごった返す四天王寺境内を散策し、六時礼讃堂で線香の煙を浴びながら手を合わせる。大阪自体が歴史遺産のような街だが、殊に四天王寺は飛鳥時代の面影そのものというか、日本の古代の空気感がそのまま現代に息づきながらも、その先に最新鋭ガラス張りのあべのハルカスの超高層ビルが見えるという、何とも大阪らしいカオスな感じがたまらない。