四天王寺東中・高(藤井寺市・共学)

【アクセス】
あべのハルカスの真下、大阪阿部野橋駅から近鉄南大阪線の準急で13分(各駅停車で29分)藤井寺駅の南出口から西に進むこと3分で本校に到着。系列の四天王寺大学も藤井寺駅下車となるので、学生の多い駅である。

本校は2005年に閉鎖された、プロ野球・近鉄バファローズの旧本拠地であった藤井寺球場の跡地に建てられ、現在は正門付近に藤井寺球場の記念モニュメントが設置されている。現在、パ・リーグに「オリックス・バファローズ」が存在するが、2004年に当時の「オリックス・ブルーウェーブ」と「近鉄バファローズ」の2球団が合併したことが由来である。

【歴史】
本校は推古元年(593)、聖徳太子が四天王寺敬田院を創設したところから歴史が始まる。聖徳太子は四天王寺のなかに四箇院(しかいん)を設置した。四箇院とは、「寺院=敬田院(きょうでんいん)」「薬局=施薬院(せやくいん)」「病院=療病院(りょうびょういん)」「貧しい人や孤児を救うための社会福祉施設=悲田院(ひでんいん)」。この中の「敬田院」は仏教の経典を学ぶ寺院という意味で、本校のルーツはこれに当たる。

大正11年(1922)に天王寺高等女学校が設立、こちらは現在四天王寺の境内にあり、大阪府内女子校の最難関である四天王寺中学校・高校にあたる。本校は昭和59年(1984)、系列大学のある羽曳丘(はびきがおか)に全寮制の男子校、四天王寺国際仏教中・高として設立され、平成2年(1990)に四天王寺羽曳丘中・高に改称された。平成21年(2009)、藤井寺駅前に四天王寺学園小学校が新設され、平成29年(2017)までに小学校と隣接して四天王寺学園中・高が順次新設。平成31年(2019)までに四天王寺羽曳丘中・高は閉校となるが、現在の本校には羽曳丘中・高の教員の先生方が半数異動し、実質羽曳丘中・高の後継校と言えよう。

その半数の羽曳丘中・高から異動された先生方は比較的年齢層が高く、本校に新規任用された残り半数の先生方は若く、それぞれの世代の先生方が混在している状況。四天王寺大学のある旧校地から現在の校地まで直線距離で2.7kmなので、特に新設・閉校をしなくても移転だけで済んだのではないか、という風に普通に思うわけだが、その辺の事情を知りたいところだ。

尚、令和2年(2020)からは校名を四天王寺学園中・高から四天王寺東中・高へ変更。小学校校舎の外壁色も新校名のロゴ色も、青・赤・白・橙などの仏旗をもとにしている。「東」というのは単に方向を示すのではなく、「春=日の出=発展・成長」の願いを込めたということだ。

【教育内容】
アクティブ・ラーニングの実施、全教室に電子黒板の設置、校内無線LANの整備、タブレットを授業に活用、全生徒がGTEC(ベネッセによる英語4技能の検定試験)受験、他に放課後個別学習といった、大学進学を踏まえた一般的な教育環境・システムを整えた学校。年間行事でもそれほどまでに仏教色が強いということもなく、強烈な個性をもった教育内容があるということでもなく、大学受験に向けた勉強をしながら、日々穏やかに学校生活を送っている学校、という印象である。新築の校舎はとにかく立派。

【特待生制度】
本校の年間授業料は従来が約70万で、大阪府内でも最高額に近い状況だったが、昨年より10万円値下げをして、
◎大阪府私立高校平均授業料:約61万
◎大阪府私立中学平均授業料:約63万
よりも低くなった。

教育特待生としては高校受験で専願・併願ともに受験者の上位10%を入学金(20万)無料とし、入学後も相応の減免をする。200名受験したならば、上位20名が対象になるということ。中学受験では同じく上位10%で入学金半額が免除される。

というのも現在、生徒数が学則定員の半数に満たないということで、大阪府内軒並み私学は苦戦しているが、本校は特に苦戦しているということだろう。従って「校名変更」「コース再編」「授業時間37時間を34時間に減らすことで授業料の値下げ」という3本柱で起死回生を願っているとのこと。

ただし、高校2・3コースおよび中学S特進コースでは課外演習が週2時間で年額48,000円~週3時間で72,000円かかるということなので、一概に安くなったというよりも、あくまで計算方法の問題のような気もする。

【まとめ】
本校の説明会は大阪阿部野橋駅直結のホテル、都シティ天王寺で開催され、本校を直接見ないのは意味がないなあと思いながら、終了後に私は一人電車に乗って藤井寺に本校を見に行った、という次第だが、説明会の終盤、参与の林先生が演壇に立たれて、「〇〇〇が〇〇〇でしてね、でもう一点、〇〇〇が〇〇〇でしてね、でもう一点、〇〇〇が〇〇〇でしてね、でもう一点…」と、何回もう一点するんだよ、とか思いながら拝聴していたが、先生方も校風もとても穏やかな学校で良いと思う。というのも、やはり四天王寺という巨大なバックボーンがあって、その背景を踏まえて、セカセカせずにのびのび本校が営みを続けているような印象を受けた。

新設校の認可を取るのも相当大変だろうに、羽曳丘中・高の閉校、中学校新設6年で校名変更と、外から見てゆとりを感じさせる取り組みが出来るのは、そういった背景が所以なのかな、と。例えば宗教教育であったり、本校ならではの「これだ!」というものが見えてくれば、受験生も増加するような気はした。