近畿大学附属中・高(東大阪市・共学)

【アクセス】
大阪上本町駅から近鉄大阪線で10分、長瀬駅で下車して大学通り商店街を10分歩くと近畿大学の西門に到着。そこから広大な東大阪キャンパスを東に縦断すること徒歩10分。ようやく附属中学・高校にたどり着く。

なんば駅からは近鉄奈良線で八戸ノ里駅へ。1996年に建築家・安藤忠雄の設計で開館した司馬遼太郎記念館の最寄り駅が八戸ノ里(やえのさと)である。今から20年前に記念館を目当てに旅行で訪れたことがあるが、まさかこの地に仕事で訪れるようになろうとは…。

その八戸ノ里駅からは徒歩20分。歩きはちょっときつい。特に道中に面白い店があるわけでもないので、八戸ノ里駅からは迷わず近大シャトルバス(100円)に乗ってしまおう。

【歴史】
近畿大学のそもそものルーツは、大正14年(1925)、日本大学専門学校が設置されたところから始まる。日本大学大阪専門学校への改称を経て、昭和14年(1939)日本大学から独立して現在に至る。

現在では東大阪・大阪狭山・奈良・和歌山・広島・福岡にキャンパスを擁する西日本最大級の総合大学が近畿大学だ。(東洋経済による学生数ランキング2016年5月:1位日大、2位早稲田、3位立命館、4位慶応、5位明治、6位近畿)

創立者は日本大学教授でありその後衆議院議員となった世耕弘一。現経済産業大臣で前近畿大学理事長(4代目)の世耕弘成はその孫にあたる。新制中学校の設立は昭和22年(1947)となっているので、本附属中高の起源はこの年と見てよいだろう。

【生徒数】
2019年の中学全体で852名(中1で292名)、高校全体で2,778名。教員が約300名いるので、合計4,000名がこの中学・高校校舎で動いていることになる。

【衣替えの廃止】
今年から本校では夏服の標準期間を廃止した。一斉に衣替えすることは止めよう、ということで昨今の天候不順に対応して、その日その日の気候に合わせて自分で考えて服装を判断しよう、とのこと。

【大学進学】
全体で見て、近畿大学58%、国公立13%、難関私大12%となっている。大学附属校でありながら、進学校であることの両立を目指す。

【医薬コース】
近大医学部・薬学部との連携で、医薬系の体験学習を実施。近大医学部には5名、薬学部には7名の特別推薦枠(評定4.3以上)がある。また、医学部では毎年半数の学生が留年するほど厳しい勉学が待ち構えているが、本校からの進学者はこれまで1名も留年していない。

また、近年は獣医学部への志望者も増えている。というのは、医・歯では年間の学費が700万かかるところを獣医では年間250万で済むこと。そして、以前話題になった加計学園(岡山理科大学)の獣医学部が愛媛県今治市に開設されたことで、西日本からの獣医希望者が断然進学しやすくなった。これまでの獣医希望者は私大では関東以東に遠征しなければならなかったことを考えると、加計学園による学部開設で大変便利になったことが分かる。

【英数コース】
国公立大38%、難関私大25%、近畿大18%と、他大進学者が多くなるが、大学名や偏差値に囚われることなく、行ける大学ではなく生徒にとって行きたい大学を受験出来るよう教員・OB・生徒が一丸となって希望の進学を実現している。

【英数コースプログレス】
近畿大76%、難関私大5%(関関同立の指定校推薦)で、純粋な近大附属コースとなり、他大受験のカリキュラムにはなっていない。近大と連携して和歌山の水産研究所(近大マグロ)での体験授業が組まれていたり、近畿大への進学のために内部進学の勉強を充実させたコースである。

具体的には中間・期末テストで平均60点以上が毎回取れていれば第1希望で近大の特別推薦を利用できるが、高校3年で8000~10000字程度の論文が課されるなどのハードルもある。一般的な大学受験では四苦八苦しないが、内部進学のための継続的な勉強がなければ内部推薦にはつながらないようだ。部活が出来るから…といった優先順位の考え方でも勿論アウト。

先ほどの関関同立の指定校による難関私大の進学率は10年ほど前は15%程度だったが今は5%。それほどに近大志願者が増えている。

【ICT教育先端校の自負】
「すらら」やタブレット上で数学のグラフが描きこめる「Qubena(キュビナ)」といったeラーニング教材を積極的に導入し、自宅でも使用できるよう24時間生徒全員にiPadを持たせている。これらAI型教材も、実際に稼働させながら試行錯誤を続け、場合によっては別教材へ乗り換えることも厭わない。

「ロイロノート」は本校が開発にも参加。「iTunesU」の電子図書館も生徒は利用できる。6年前にiPadを導入するようになってから授業の方式が大きく転換したことで、先生方にとっても従来の授業ノートが通用しなくなってしまい、新しい教材研究を進めながらiPadでの授業に置き換えるよう研究授業や教員研修も実施している。

【実践力の育成】
「探究」の授業では例えばメニコンとアプリの共同研究をし、「コンタクトレンズにコンピュータの機能を入れて彼氏の笑顔を判定する」といったユニークな取り組みも。このプロジェクトを行っている生徒は東京でプレゼンテーションをして本案を提出し(立教大学で行われたクエストカップ2019)、今は週1回近大の研究室に通いながら開発を続けているという。

【ケンブリッジ・イングリッシュ】
All Englishの授業で留学生と英語でディスカッションをしたり、外国人観光客に京都・大阪の観光地のガイドをする取り組み。

【近大カフェ】
受験生向けのオープンスクールで運営される近大カフェ。現役生と受験生がテーブルを囲んで一緒にお茶を飲みながら、近大附属のよいところも悪いところも話をして交流する。親に勧められたから、ではなく「本人自身が行きたいから」という動機で入学しなければ、モノにならない、と。

【大阪のユニバといえば、近大やろ】
ということで最新鋭のキャンパス整備も進み、人気が高まっている近畿大学。1970年から研究を開始し、2002年に世界初クロマグロの完全養殖に成功。現在、梅田のグランフロント6階に「近畿大学水産研究所」なるマグロ料理のレストランを出店し、そこで近大マグロが味わえる。

【おわりに】
日本大学が、学科を独立させて学部に昇格させながら大学の規模を増殖させていったように、近畿大もメジャー大学としての成長が上手なのだろう。大学キャンパスを見ても斬新な最新建築の校舎が建ち並んでいたり、カフェテリアにモスバーガーやすき家が入っていたり、「マイナー」路線ではなくて「メジャー」路線としての展開と若い学生のハートをガッチリつかむ取り組みが他大に比べて一枚も二枚も上手なのだと思う。

細い公道を挟んで附属中高は、いわゆる「学校」の造りであるが、通学の往復に大学キャンパスを通り抜けて得られる刺激は、やはりたまらないものがあるだろう。

しかし、その人気の舞台を用意している教員の先生方の姿勢は「真剣」そのもので、「日々新しく」時代の先をゆく学校として、その在り方を模索し続けているのは間違いない。

さて、この日は先の大相撲春場所で優勝してアメリカのトランプ大統領から賜杯を受け取った「朝乃山」関の優勝パレードが近鉄長瀬駅から近大西門まで開催され、祝賀イベントも構内で開かれた。朝乃山は1925年創部の近大相撲部出身である。

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