大谷中・高(大阪市阿倍野区・女子校)

【立地】
大阪メトロ谷町線の阿倍野駅からあべの筋を南へ3分、更に路地を西に進んで5分で大谷中学校・高等学校が見えてくる。阿倍野墓地は見えないけれど、墓地のすぐ南側を通って学校に向かうイメージ。

校舎は最も新しい建物でも1999年築で、他築50年以上の重厚な「THE学校」の趣である。上町台地の岩盤の上に載っており、西側の天下茶屋方面は一気に崖のように下がって低地になっているため本校からの見晴らしはよい。

【歴史】
ルーツは1909年(明治42年)、真宗大谷派(南御堂・東本願寺系)の難波別院にて開校した大谷裁縫女学校(現・東大谷高校)にさかのぼる。1924年(大正13年)にキャンパスを現在の阿倍野に移した際に併設して大谷高等女学校を開いたのが本校の直接の始まり。東大谷高校が2013年に堺市に移転したため、グランドリニューアルなど校舎周辺の校地の再編を現在行っている。

【理念】
教育方針は「やさしく(生活指導)」「かしこく(学習指導)」「うつくしく(宗教的情操教育)」。

聖典・念珠を持ち講堂での朝礼、宗教行事、登下校時の一礼など日々の合掌で報恩感謝の心を育んでいる。中学生から高校生まで、授業見学をさせてもらったが、座学の時は全員しっかり授業を受け(当然居眠り・よそ見など居ない)、グループワークの時に楽しくワイワイ取り組んでいるように、メリハリの効いた授業風景であった。一人ひとりに分けて見ると、真面目タイプの子が集まった印象。

【進路】
大学合格は2019年で京大・阪大ほか国公立48名(うち現役42名)、関関同立113名、他私大398名、医学部8名、歯学部9名、薬学部100名、看護56名。一人の学生が複数大学・学部を受験するから延べの数字は大きくなるが、卒業生260名+浪人生が受験してこの結果。進学に強い学校である。目安として、9割の生徒が現役大学進学、残り1割が更に難関大を目指して浪人している。

【コース】
中高一貫では
◎医進(ハイレベル理系)
◎特進(国公立大)
◎凛花(りんか:私大文系・海外)
の3コースに分かれる。中学のクラスは「清(さやか)組」のように和名が充てられ、可愛らしい。

長年中高一貫のみであったが2019年度より高校3か年課程のコースも設けられ、こちらは
◎プレミアム文理(国公立大・医学医療系)
◎アドバンス文理(国公立・難関私大)
に分かれている。中高一貫コースとは別クラスになる。高校のクラス名はA,B,C~と一般的な呼び方。部活動の加入率は70%。

【理科教育】
先ほどの進路結果を見ても、本校は理系進学率がとても高い。その理由は、本校が力を入れているひとつ、理科教育にある。なぜ理系進学者が多いのか。詳細に見ていこう。

<生物>
本校ではよい意味での先生と生徒の距離が近い。ゆえに分からないことはすぐに質問できる雰囲気が出来ている。そして先輩と後輩の距離も近く、今後の実験予定など情報が上から下へ流れてくるので、下の学年の生徒にとっては「楽しみ!」となってくる。

生物においては生体を用いた実験も多いため、宗教教育の中で「いただいた命を最後の供養まで」、命の大切さを感じながら自分たちで葬るところまで全うさせている。

説明会ではカエルの解剖の映像が放映されたが、学校で育てたカエルに麻酔をかけ、手足をピンで留めて腹を裂く。内臓の位置を確認してメスを進めると、その先の心臓がドクンドクンと動いているという・・・なかなか衝撃的な映像であった。

死んだカエルを用いて解剖する学校も多いようだが、本校では中途半端なことをせず、命をありのままに生徒に突きつける。

<化学>
数値・単位を適切に扱えること。表・グラフを正確に読めること。女子にとっては男子に比べてこれらが苦手であるが、「無理」と言わない習慣づけ、理系教科における知識の獲得と、理系人間に期待されることの基礎をきちんと学ばせている。

分からなくても頭を使う授業、教室で黒板の前に出て2人組で演習をさせる授業。実験室も他校に比べて実験台が広く、グループワークの環境も充実している。生徒用のドラフトチャンバーも設けているため、高度な実験も可能。

<物理>
物理は豊田將章先生という大物の先生が教諭として着任されており、豊田先生は東京書籍の理科教科書の筆者でもある。青少年の科学の祭典の運営も務められ、理科教育の全国レベルのエキスパートでおられる。

豊田先生がおっしゃるには、「現象の体験」と「独自のICT教材(映像)」で興味・親しみを持てる理科・物理にすることを心掛けているとのこと。また、単に暗記や反復練習に徹するのではなく、公式の導出過程を自分で白紙に書けるようにすること。その場限りでなく、本当の学力という意味で大学に進学して花開く授業展開にしているとのことだ。「当事者性のある授業」と形容されていた。

豊田先生ご自身でExcelを用いて波動の実験ソフトを作られてしまうなど、まあ本当にすごい先生というのは本当に実力がすごいのだな、と私は感嘆してしまった。

生徒の意見も反映させつつ豊田先生が作成された映像教材が東京書籍のデジタル教材に300点収録されており、このDVDのうち9割は豊田先生の手掛けられた映像であるという。60名も在籍している科学部員が作った実験道具が埼玉県など全国の科学館や高校で活用。郊外で開催される科学イベントには出展して、生徒が自分の言葉で説明をすることで、理科のスキルが圧倒的短期間で身につくという。ただただすごい。

【その他教育】
凛花コースは生徒全員がiPadを所有。全ての教室にはプロジェクター、Wi-Fiが完備されている。ポートフォリオ、アクティブラーニング実践のためのベネッセ「classi」も導入。

【生徒募集】
今春は中学校で172名が入学。中高一貫のコースで
◎医進コース:3クラス。大学受験を背水の陣で臨むよう、内部進学および他大の指定校推薦は無し。2019年で入学90/合格344/受験者447名。
◎特進コース:2クラス。薬学・歯学・看護の医療系指定校推薦が利用可能。系列の大阪大谷大学の薬学部に特進コースの希望者で推薦基準を満たした者は進学保証。2019年で入学54/合格191/受験者207名。
◎凛花コース:1クラス。関関同立40名、産近甲龍など指定校500名以上(うち近畿大20名)枠が利用可能。2019年で入学28/合格68/受験者73名。

医進コースは四天王寺中学との併願校になっており、医進コースを受験した生徒のうち105名が四天王寺第一志望。次いで清風南海38名、帝塚山35名。開明31名。大阪女学院を第一志望とする生徒は22名で、こちらになると特進コースが中心で、その他医進・凛花各コースに分かれる形。

◎プレミアム文理コース:2019年入学20名。五ツ木SS専願63,併願67で120%合格ラインとなる。
◎アドバンス文理コース:2019年入学24名。2年次から文系・理系に分かれ、推薦基準を満たすことで大阪大谷大学への内部進学(進路保証)が可能。五ツ木SS専願58,併願62で120%合格ライン。

【おわりに】
正門を出て、すぐ左手に書店があり、昭和の趣きが残る路地を通って阿倍野駅に戻る。この街歩きもなかなか楽しい。
大阪移転後初、一校目。実に充実した学校訪問であった。