プール学院中学校・高校(生野区・女子校)

【アクセス】
JR大阪環状線の桃谷駅から南に向かって徒歩5分で、西側の通用門に到着。
このあたりはJRの線路を境に、西側が天王寺区、東側が生野区となる。通用門から狭い路地を更に南へ進むと、勝山通に面した正門が見える。本校には通用門(西門)近くにメアリーズホール、正門近くにチャペル「清心館」があり、両ホールの間をH型の校舎がつなぐ。

【校舎】
現在の校舎は平成19年(2007)の完成だが、ひと世代前の旧校舎は近代建築の巨匠、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計を手掛けた。「ヴォーリズ?誰?」と思うだろうが、建築家ヴォーリズは大阪でも大丸心斎橋店をはじめ、各地で数多くのキリスト教に基づく建築を遺している。

現校舎は今年で築14年になるが、新築と言ってもよいほどの綺麗さで、年数を感じさせない。一方、チャペルを収容する清心館は、築年数が浅いにも関わらず重厚な雰囲気を醸し出しており、創立142年という本校の重ねた年月が校舎に趣きを与えているのかもしれない。

さて、本校の名称は「プール学院」だが水泳用のプール(pool)は存在しない。校名の「プール」は明治12年(1879)に本校を設立されたキリスト教の主教、アーサー・ウィリアム・プール師(A.W.Poole)に由来する。私が小学生の頃、中学受験の問題集で「プール学院」の名前を何度も目にした記憶があるが、その度に「プール(pool)の学校なのか」と妄想していた。全国向けの入試問題集に採用されるということは、価値ある入試問題を作成してきた学校だったということである。

【プール学院の「らしさ」とは】
私の本校訪問は2019年に続いて2度目となるが、今回は2名の先生方の案内で校内見学をさせていただいた。お一人は教務部長の原先生で、メインで誘導されていたもうお一方の先生と競うように(?)「ここは僕に語らせてください」と校舎設備の工夫について細かく話を伺うことができた。

例えば、家庭科室の教卓の上にはカメラが設置してあり、調理中の先生の手元の動きが大型ビジョンで生徒に向けて映し出される。これは、私の経験では調理師を目指す高校でクッキングスタジオ形式で同様の設備を見たことはあったが、普通科の学校でこれを見たのは初めて。理科室にも同じ設備が施されているという。このように、教育効果を追求した細かな配慮が随所で見られる。

コンピュータ室も見せていただいた。生徒個人ごとのiPad配布は今後実施予定だが、数年前コンピュータ室のPC更新の際、画面だけのタブレット端末に置き換えるのではなく、従来型のパソコンを刷新することにこだわった。キーボードとマウスを操作しなければ、本当の情報処理は学べないというのである。これは私も大いに同感。さまざまなデバイスを使える能力を身につけさせたいと、原先生。

2021年7月発行の『プール学院報』第92号に書かれた原先生のコラム。

「…同じ学び舎で笑い合い、議論して高め合い、夢を語り合う友となって、やがて巣立っていく。そんな昔ながらの学校にあるべき姿を、不器用に真面目に守り続けているところが、プール学院の<らしさ>であり、私が本校に感じる大きな魅力でもあります」

休み時間になれば楽しくはしゃいでいる生徒もいるし、元気な女子校といえば元気な女子校。しかし、その元気さは「成り上がり」的な元気さではなく、家庭的で品のある元気さ。これもキリスト教を土台に142年間紡いできた学び舎の薫陶(くんとう)があってこそなのだろうと思った。

こういった様子はやはり学校見学をして初めて雰囲気から体感できるものである。

【王道の伝統校の空気】
キャリア教育、グローバル教育と、近年多くの学校で取り入れられている多様な教育手法を本校も導入しているが、本校として明らかに軸が定まっているのは、職業選択やコミュニケーションといった実業性・実務性に重きを置くのではなく、あくまで勉強、あくまで進学に力点を置いていることだ。そういう意味で、王道の伝統校の空気感を今に残す学校だと言えよう。

2021年の進学実績では、卒業生198名中
◎4年制大学 82.8%(164名)
◎短大 5.6%(11名)
◎専門学校 5.1%(10名)
◎海外・その他 6.6%(13名)
となり、大学進学が中心となっている。

そのうち4年制大学の現役進学者164名の内訳を見ると
◎国公立6.7%(11名)
◎関関同立14.6%(24名)
◎産近甲龍12.2%(20名)
◎四女子大(同志社女子大・神戸女学院大ほか)22.0%(36名)
◎首都圏大学10.4%(17名)
◎薬学・医療・看護系5.5%(9名)
◎芸術系3.0%(5名)
◎その他25.6%(42名)
となり、長年かけて成熟してきた学校、その独特の<バランスの良さ>がある。

【これからの学校法人プール学院】
平成30年(2018)プール学院大学は学校法人桃山学院に譲渡され「桃山学院教育大学」に改称された。令和3年(2021)にはプール学院短期大学が廃止され、学校法人プール学院は中学・高校のみを設置する学校法人となった。

2019年から2年間に渡って務められた吉田幸一理事長・校長に代わり、2021年春からは磯晴久・日本聖公会大阪教区主教が理事長に着任。磯晴久理事長は現在、学校法人桃山学院の学院長も兼任されている。校長には神戸にある啓明学院の元校長である安福朗先生が着任。

桃山学院もプール学院も、キリスト教の一教派である日本聖公会に属しており、それ故の学校連携だろうが、先の明浄学院の記事からも分かるように少子化のなか学校再編も待ったなしで動き始めており、本校においても今後の動向は注視していきたい。

(2021年9月14日訪問)

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