追手門学院大手前中・高(大阪市中央区・共学)

西郷さんは忙しい中でも墓参りを欠かさない人でした。ある日、高輪の大円寺に高島鞆之助(とものすけ:後の陸軍中将)を連れて墓参りに行った帰り、突然に大久保邸を訪ねました。そして、挨拶が済むとすぐに、「この頃、参議連はみんな立派な邸宅を建てるそうな。しかし、大円寺の戦死者墓地は全く草ぼうぼうとしている。あれはどうするつもりだろう」と言い出しました。

その頃、大久保さんも二本木に大きな邸宅を建築していた時だったので、むっつりして一言二言、あいまいな返事をしただけでした。西郷さんは「鞆どん、もう帰ろ。今日は御機嫌が悪いようだ」と、そのままさっさと席を立ちました。

門外に出た西郷さん、ひょいと立ち止まって、「鞆どん鞆どん」と呼ぶので「どうかされましたか」と聞くと、「今な、カステラが出ていたな。アレを貰って来ないか」とのこと。高島もなかなかの男。「ああ、そうでしたね」とすぐに引き返し、そのカステラを貰い、市ヶ谷の西郷宅へ帰ったそうです。

『西郷どんの逸話』(西郷隆盛公奉賛会・刊、P.48-49より抜粋)

ということで、その「鞆どん」こと薩摩藩士の高島鞆之助が明治21年(1888)に大阪偕行社(かいこうしゃ)附属小学校を設立したのが本校の起源。その後の変遷を経て、現在の追手門学院大手前中学・高校は1950年に設立の形をとっており、2020年に創立70年を迎えることになる。

【概要】
追手門学院は系列校として豊中市に幼稚園、中央区大手前に小学校、茨木市に中学・高校・大学・大学院を擁し、3歳から27歳までを途切れなく扱う総合学園である。

本校の現在のコンセプトは「グローバルサイエンス教育」と謳っており、「新たな学び」「ICT活用教育」「志の教育」の3本柱に分かれる。

「新たな学び」のメインはプロジェクト学習。疑問を持ち、調べ、考え、納得のいく答えを求めて、発言・発表し、意見をシェアする。授業の冒頭で講義を10分間受け、グループで対話しながら考えを深める30分、リフレクションといって発表・確認テストなどのアウトプットを10分間。このような流れが授業の基本的な構成となっている。

「ICT活用」においてはタブレット端末による学習システム「すらら」の導入、OM(追手門モジュール)と呼ばれるeポートフォリオの入力。電子図書館(電子書籍)、G-suite(Googleが提供するGmailなどのワークシステム)、ロイロノート(授業サポート)といった各種システムを導入。
※eポートフォリオの説明はこちら
https://kj-lab.net/archives/1385

【ロボット・プログラミング教育】
最も特筆すべき点は「未来のAI・ロボット人材を育てる、ロボ五輪常連校の超実践授業」であろう。本校では中学1年から学年に応じて段階的にロボット教育が施されており、「ロボット製作から工学の基礎を学ぶ」「ロボットプログラミングの基礎を学ぶ」「実体験から物理の基礎を学ぶ」のように、楽しくロボットを学びながらも学問まで昇華させる一連の流れが授業で体験できる。

ロボットを通して答えが一つでない課題に向き合う。そこでたくさんの失敗を通して学ぶ。ここで考え抜いた経験は必ず高い学力に結びつく。

そう仰る福田哲也先生のスピード感、のめり込み感が本校の他の先生方と異なるかも、と説明会で私が感じた事だが、実際こういうことであった。
http://mirainomanabi.up-edu.com/column/theme05/612/
こういった優秀な先生が既存私学の突破口になることを示す分かり易い例と言えよう。

ロボットサイエンス部は、小中高生が参加する世界最大のロボコンであるFLL世界大会(USA)で2017年、2018年と総合優勝。2017WRO世界大会で手話通訳ロボットを製作して銅メダル。国内で比較してもずば抜けた実績である。

福田先生が仰るには、「魚を腹いっぱい食べさせるのではなく、魚の釣り方を教える教育がロボット・プログラミング教育である」「魚の釣り方を一度知ったら、一生自力で食べていくことが出来る」。生徒自身のモチベーションが高まり、自らC言語を学んでプレゼンテーションまで作成してしまう。「成功する生徒としない生徒の紙一重の差は、最後まで努力したかどうか」に尽きる、と。

【ハワイ・パスウェイプログラム】
関西の私学で初めてとなるハワイ大学との提携(本校高校を卒業後、ハワイのコミュニティカレッジで2年間一般教養、2年間大学に編入して学士号の取得または大学院への進学の道も開いている。何がメリットかというと、当プログラムでは年間の費用負担が89万で済むこと。日本の大学の約半分と言えよう。

【入試】
2019年度私立中学入試の定員充足状況を見ると、大阪府37%、兵庫県53%、京都府61%、奈良県55%、和歌山県50%と、大阪府が特に低い。10年前に始まった大阪府内の私立無償化により府内私学の競争は厳しい。

そんな中で本校は現在2年連続で定員到達を達成している。またロボット・プログラミングなどの顕著な教育成果により学力上位生の入学も年々増えており、受験者も豊中・吹田といった北摂・北河内エリアがどんどん増えている。高校入試は「スーパー選抜コース」が府立清水谷(SS61)~布施(SS56)の併願がメイン、「特進コース」が南(SS55)~阿倍野(SS53)がメインとなっている。

【まとめ】
本校は京阪電車・大阪メトロ谷町線の天満橋から徒歩4分。西には大阪合同庁舎や法務局、大阪府庁などの官庁が立ち並び、東側は大阪城が一望できる絶好のロケーションである。都市型の最新校舎の1階外壁には、大阪城の石垣を模した石が貼られている。

電子黒板を中心とした近未来の教室で生徒がタブレット端末を操作しながら、考えた結果を送信すると、正面の電子黒板に全員分のアイディアが一覧表示され、先生が画像をピックアップしながらそれぞれの生徒に根拠を問うていく授業スタイル。

まあ、中学1年で「3a-9a=-6a」の講義をわざわざ電子黒板でしなくても、パッとチョークで黒板に書いた方が速くて臨場感も出るんじゃないの?という気もしたが、先ほどの福田先生のような先進的なスピード感と、恐らく本校が従来持っていたのんびりとした雰囲気でICTを使っている感じ、そこに大阪都市部のお坊ちゃんお嬢ちゃんが集まっている、という二者が校内で共存している印象を受けた。

本校に限らずICT教育について私が思うことは
今はどこの学校もICTありきで環境整備が進んでいるが、ICTを関与させることに終始してしまって、実際に手を動かして紙に書いた方が処理・理解が速いのではないか、と「ゆとり教育」以上の弊害を生まないかどうかが気になるところ。ICT化は使う先生の能力によって授業の質の差が激しくなるような気がする。