大人の修学旅行~和歌山編

6月某日。
[08:25 関西国際空港]
羽田からJL221便。前日3時過ぎまで仕事場におり、その後慌しく出発したため機内で爆睡。空港内のエアロプラザでレンタカーをピックアップ。

[10:30 丹生都比売神社]
紀伊国一の宮。つまり和歌山県内でトップの神社ということ。創建は今から1,700年以上前とされ、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に指定されており、重要文化財の楼門を始めとして、境内随所が美しい。

[12:00 高野町観光協会近くの駐車場]
和歌山側・国道480号線から高野山に入るルートはつづら折の山道で、眠気を催していたり、油断してハンドル操作を誤ると、対向車と接触するか崖から落ちてしまう。それくらいに油断のならない道で、車の無い時代に高野山を拓いた人々は凄いと、深く感心する。

その国道480号線が、高野山の大門のあたりで一気に視界がひらけ、きれいな街並みが目に入ってくるのだ。周囲を完全に山に囲まれ、本当にこの高野町の一帯だけが宗教都市を構成しているという、Googleの航空写真で見れば見るほど、不思議な気分になる。

メインの道路に面する駐車場はどこも満車だったので、一本奥まった公営駐車場に車を止める。

[12:15 丸万]
メインの道路に面する食事処。田舎の大衆食堂といった雰囲気だが山の上の店だけに値段が高い。何となく無難なメニューを注文した方が良さそうに思い、精進定食(それでも1,800円!)を注文。どのメニューもやたらと高い。精進料理とは肉と魚を使わない、僧侶にとっての修行の一環となる食事だが、当店の精進定食は既に冷蔵庫に用意してあったらしく、出てくるのは速かったが、味は撃沈。高野山参詣の際の食事処はよく事前にリサーチするべきだった。

[13:00 高野山金剛峰寺]
和歌山市内と比べて気温が5度低いのが高野山。6月というのにむしろ肌寒い。高野山はもともと先の丹生都比売神社の社領だったが、弘法大師空海が神社から土地を借り受けて816年に高野山を開創。なので、「丹生都比売神社」を参拝してから「高野山」へ詣でる、という順序が地元の人々にとっては鉄則。

高野山の中心名所のひとつである金剛峰寺。料金500円で内部を拝観させていただく。新別殿ではお坊さんが説法を行っており、お手伝いのおばさんが接待してくれたお茶と金剛峰寺オリジナルの麩焼きせんべいを頂きながらお話を聞く。

身内が同行していたが「歩くのが辛い」ということで残念ながらこれだけで下山。
次回ここを訪れる際は、私ひとり電車で、大阪方面から南海電車で高野山駅(ケーブルカーとバス)経由で当地をじっくり歩いてみたい。バスで壇上伽藍まで行き、そこから徒歩で無数の小さなお寺を巡りながら約3km先にある、弘法大師の御廟がある奥の院まで足を延ばしてみたいと思う。尚、春はスギ花粉が凄そうなので、秋が良さそうだ。

[17:00 関西国際空港]
また延々とつづら折の山道を下って、関空へ戻る。宿泊。

翌日。
朝食で飲んだ地元の早和果樹園「味まろしぼり」みかんジュースにいたく感激。

[11:30 関西国際空港]
出発。

[12:30 根来寺]
良い意味でも悪い意味でも何かと仏にまつわる名字の方と関係させてもらうことが多かった私のこれまで。その一つの根来さんの根来寺。

和歌山県は大阪・奈良に近い北部エリアと太平洋寄りの南部エリアに分かれていて、有名な寺院は北部エリアに数多く位置している。大阪・奈良の影響が及んだ中世の趣きを携えた地域であるが、車を運転していても歩いていても、パッと山の景色を見たときに、その一つひとつが絵になる美しさを持っているのが何よりも和歌山の素晴らしい所だろう。正直言って、和歌山がこんなに素敵なところだとは知らなかった。

和歌山に足を踏み入れることによって、「日本の奥行きを感じる」「日本がもっと好きになる」というのが今回の私の結論。

さて、根来寺は1132年に開かれた新義真言宗の総本山で、1585年に豊臣秀吉による焼き討ちに遭ったものの、1547年に建立された大塔(国宝)は今もなおその姿を遺しており、二重塔の間に白い土饅頭(どまんじゅう)をしつらえた威容は圧巻。明治時代の建築家で築地本願寺や両国の東京都慰霊堂の和洋折衷を得意とした伊東忠太という人物がいるが、その伊東忠太はこれを見て自分のデザイン路線に目覚めたのではないかと思うくらいに、あまりにポップで大胆すぎる大塔。この真正面に立つだけでも根来寺に来た甲斐がある。

受付で拝観料を納めた後は内部の見学が自由であるので、大日如来などの仏像の前で思い思いのひとときを過ごすことが出来る。有難い限り。

足を奥に進めて本坊寺務所の玄関で靴を脱ぎ、国指定の名勝庭園を拝観。紀伊徳川家の別邸を移築した「名草御殿」が庭園を囲み、光明殿で合掌。「一期一会」の掛け軸が印象的。光明殿の先の行者堂へ向かう渡り廊下をミシミシと歩いていると何だか感動してしまって胸がいっぱいになってしまった。

[14:00 粉河寺]
根来寺から車で30分もかからない。西国三十三所・第三十三番札所の「こかわでら」。観光地化されていない根来寺と比べて、粉河駅から商店街が寺まで続き、門をくぐった寺の境内にも土産物屋が並んでいる。ここは随分と庶民的なお寺で、参詣者も多く、鈴を鳴らして札所めぐりをしている巡礼者にもすれ違う。ここも石組を立体的に見せた粉河寺庭園が国指定の名勝に指定され、すぐ目の前が御茶屋だったから、ソフトクリームをいただきながら名勝と本堂の景観を堪能する。

そうしながらもお堂の方からはお坊さんの「あーだからおばちゃんね、戒名は気にしなくて大丈夫だから私が伺った時に」と電話で仏事相談をしている関西なまりの声がよく響いて聞こえてくる。なんと庶民的なお寺だろう。

駐車場の料金が参道の「かにい土産物店」で支払うことになっていたので立ち寄ったら、そこのおばちゃんが商売上手で「うちの自家製の桃や。美味しいで」と猛烈に押されてしまい、一箱購入。ちなみに私はバラ科を先祖とする果物(りんご・もも・びわ・さくらんぼ等)にアレルギーがあるので、世話になっている方へ差し上げることにする。

[16:00 養翠園]
車でしばらく南下して1時間近く。和歌山市内に入り、南海の和歌山市駅を横目にこれまた国指定名勝の養翠園(ようすいえん)。個人的に名勝庭園が好きな訳だが、一歩進むだけで景色が流れるように変わって行く庭のダイナミズムがこの養翠園も心地よい。もともとは紀州第十代藩主・徳川治宝(はるとみ)公の造営による約1万坪の池泉回遊式庭園。

[17:30 関西国際空港]
関西空港と対岸のりんくう地区を結ぶスカイゲートブリッジ(空港連絡橋)。ここを1回車で通過するだけで920円かかるのが痛い。エアロプラザでレンタカーを返却。
古くさい印象の伊丹空港に比べて、日本人よりも外国人が多く行きかう関空には何となく元気さが感じられる。JL228便で帰京。