一流の仕事とは

先日、出張帰りの夜のフライト。羽田空港着陸後のチーフCAの方のアナウンスに感激してしまった。

一週間ほど前線の影響で雨が続きそうだ。自分は幸いこの仕事に携わって、毎年7月7日には上空で織姫と彦星の出会いを見届けさせてもらえている。皆さまも是非心に一枚の短冊を掛けられてみてはどうか。私は皆さまの健康とご活躍を、そして航空業界の安全の願いをこめます。

という内容だったと記憶している。聞きながら思わず私も笑みがこぼれると共に、いたく感動してしまった。名アナウンスは数多くあれど、これまでに聞いた中で最も胸に響いたアナウンスであった。上記の文字起こしでは現場の感動の100分の1も表現できていないかもしれない。しかし、ことばの選び方、間の取り方、一言ひとことに心を込める話し方、そして語尾の微妙な上げ方と余韻の残し方。第一流のプロの仕事というものをまざまざと感じてしまった。

私もやはり、仕事をするからには一流の仕事をしたいと願っている。建築家の安藤忠雄が「一流と二流の違いは1mmの違いにこだわるかどうかやね」のようなことを話していた記憶があるが、完璧な仕事を求める姿勢というのが、このチーフCAさんの発することば一つひとつからヒシヒシと伝わってくるのである。

そう考えた時に、私が生徒に求めたいことも、一流の社会人になってほしいということであり、そのために一流の仕事術につながる徹底さのようなものを学生のうちから少しでも身につけてもらいたいのだ。例えばホテルに泊まろうと客室に入ったら、ベッドの上に髪の毛がたった一本落ちていた。これだけでルームメイクとしては失格なのだ。なぜならば客は些細なことで嫌な気分になるからだ。

社会人が一流の仕事をしなければならないのに、学生が二流の勉強で良いわけがない、と私は思う。学生時代二流だったら社会人になっても到底二流からはい上がることはできない。英語で三人称・単数・現在形のsまたはesがあるかないかで答案に×がつくのは、本当に些細な、大局的な英語力の養成にとってはくだらないミスで見逃してもよいとする向きも最近の英語教育のなかにはあるらしい。しかし、ここで細かいことにきちんと気づく、正しく処理をする、ということはまぎれも無く一流の仕事人になるための第一歩のようなものなので、これをくだらないことだと私は一瞥(いちべつ)できない。

世には徹底した一流の仕事というものが随所に散りばめられている。そこに気づき、学びとり、私自らも一流を目指したいと思う。

※関連記事「0.5秒の余韻」

※追記
7月7日は七夕どころか、全国的に集中豪雨による大変な大災害となってしまった。もはや地震・台風などの災害の種類は関係なく、予想もしないあらゆる方法で私たちは突然窮地に追い込まれることがまたしても、まざまざと見せつけられた。予期せず亡くなられた方々のご冥福を心から祈ります。