受験が成り立つのは上位1/3

鎌ヶ谷で塾を開いて来年で10年になるが、公立中の生徒を見ていてこの地域で「高校受験が成り立っているのは学年上位3分の1」という仮説を私の中で立てるようになった。いわゆる受験勉強に没頭している生徒層、入試の合否に心から笑ったり泣いたり出来るほど一所懸命に勉強に取り組んでいる層は、鎌ヶ谷エリアの中学校では上位3分の1と考えている。

論語・述而(じゅつじ)第七 158番
子曰わく、憤せずんば啓せず、非せずんば発せず。一隅(いちぐう)を挙げて、三隅(さんぐう)を以(もっ)て反(かえ)らざれば、則(すなわ)ち復(また)せざるなり。

【訳】孔子が仰った。「問題意識をもって自ら取り組もうという情熱のない者はヒントを与えてもピンと来ない。解決の糸口を見い出そうと粘り強く努力する根気のない者は、何を教えても身につかない。たとえて言えば、四角いものの一隅(ひとすみ)を教えたら、あとの三隅(みすみ)を試行錯誤しながら解明する位の意欲がなければ、何一つものにならないのだ」

この孔子の言葉でいうところの「あとの三隅」を解明できるのが上位3分の1に留まり、ほか3分の2は「しなさい」「やりなさい」で指示されたことのみ動く、または指示されたことも十分に果たせないという段階であると思う。学校での中間・期末の試験前にワークなどの提出物が満足に出せるのも上位3分の1に留まっているように見える。

もちろん、昨年のH君のように学年順位にかかわらず自分の目的に向かってコツコツと努力を傾けて、H君なりの成功を収めるケースもあるが、これはほとんど奇跡に近いくらいに稀な現象だ。

ということで、素朴な疑問から県立高校の学力別の人数分布を調べてみることにした。

H.28年、千葉県立高校の普通科は前期選抜・後期選抜あわせて全体で28,000名の定員となっている。そこで偏差値ごとに人数の百分率を求めてみると(※SSは進研偏差値を参照)

SS65以上=4%
SS60~64=8%
SS55~59=12%
SS50~54=14%

となり、SS50以上で合計38%となっている。SS50~54の約半分より上位が先述するところの「受験が成り立っている層」である。

この辺りの県立高校を抽出すると、「SS52=市立習志野・柏の葉」「SS50=船橋芝山・市川東」「SS48=松戸六実・船橋啓明」が出てくる。

SS45~49=14%
SS40~44=22%
SS40未満=26%

このSS50未満で合計が62%。SS45未満で合計48%と、全生徒の半数となっている。SS50が学力、順位を含めた全ての中位という指標になるが、SS50を境に上と下に人数が半分ずつあるのではなく、SS45が境となって上と下に半分ずつ人数が分布しているのだ。

はっきり言って、SS45未満となると、学校の提出物がきちんと出せているかどうかが怪しまれる段階である。場合によっては学校ワークを解いても自力で正確に丸付けが出来なかったり(間違えている問題に丸をつけたり、正答を正しく書き写せないことを含む)、ということは全生徒のうち約半数は課題の提出について不安視できる状態だと言えてしまう。

偏差値は相対的なものなので、上記はあくまで一つの断面に過ぎないが、「高校受験が成り立っているのは学年上位3分の1」という仮説は大筋で間違いではないようだ。

問題はこのSS45未満の48%の生徒たちにどのような指導を施すか。基本的に「受け身」の強い彼らに、自発の取り組みを促すためにどうすればよいのか(指示されたことしか動けない、と割り切ることも含めて)頭を悩ませている。