中学生になったら国語の「読解」に取り組んでいる時間の余裕はない。小学生の時にこそ「国語の文章読解」をはじめとして、「計算(整数・分数・小数の四則混合まで)」と「漢字の読み書き」を徹底して強化させておきたい。これらはまさに「読み・書き・算盤」の三本柱である。
国語の成績は今後の学力を占う一つの目安で、読解が苦手な生徒は全教科の学力も総じて弱い。それは数学も理科も社会も、文章を読まなければ答えられない問題を避けては通れないからだ。逆に読解力さえあれば、一時成績が低迷している生徒であっても改善の兆しは見えやすい。
また、読解力の弱い生徒に、文章を構成する単語の意味を尋ねても「うーん」と答えられなかったり、その単語を別の単語で言い換えることも不得手だったりする。そこで、腰を据えて取り組むべきが「問答」である。
「なぜ答えに(ア)を選んだの?」「谷ってどんな形?」などと、矢継ぎ早に質問を生徒に浴びせていく。つまり何となく設問や用語を通過させるのではなくて、一つひとつに考える節目を与えていくのだ。その問答にもってこいの教材を見つけたなと思うのが「徹底反復 文章読解プリント」(陰山英男・著、小学館)である。
ご存知陰山メソッドだが、既刊の「徹底反復 音読プリント」から問題集へ発展させた「名文編」「新美南吉編」「宮沢賢治編」に分かれており、古今の名文とともにそれぞれ4問程度が読みやすい大きな文字で掲載されている。
塾用教材となると、ついページ数も問題数も肥大化する傾向にあるが、この「文章読解プリント」ならば読解が苦手な生徒でも集中を切らさずに問答が続けられる良書である。
追記
「新見南吉」と言えば「ごんぎつね」で、私が小学生の頃は読んでも何の感慨もわかなかったのだが、今は辛くて読んでいられない。
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兵十は、今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。
(中略)
「ごん、おまえだったのか。いつも、くりをくれたのは。」
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
(※「ごんぎつね」より)
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この下りには胸が締めつけられる。切なさと愛おしさと情感をえぐる文章を書かれた新見南吉氏の感受性と卓越した表現力には心服するしかない。