日本体育大学柏高校(柏市)

柏駅から阪東バスで12分。国道16号線の戸張入口から開智国際大学(旧日本橋学館大学)を左手に、住宅街を抜けて更に奥に進むと本校が見えてくる。現在の校名は柏日体高校だが、平成28年から日本体育大学柏高校(略称:日体大柏)に変更される。

本校は厳密には日体大の付属校ではなく、姉妹校の位置づけ。だから他大学にも進学するし、日体大には指定校推薦で進学することになる。日体大は水泳の北島康介など国内の有名アスリートを輩出しているが、近年は児童スポーツ教育学部、保健医療学部も設置され、幼・小の教諭、保育士、救急救命士、柔道整復師の道にも進めるよう、体育の単科大学から総合大学への改編を進めている。2年後にはLCCの急成長により人手不足となっているパイロットを養成すべく、航空学部の新設も予定している(現時点では未公表)。

日体大柏高校としては、スポーツ校という定番のイメージを払拭して「礼儀正しくスポーツの盛んな進学校」への改革を進めている最中だ。10年前には逆井中の教諭など公立小中学校の教諭を務めてこられた白川先生が校長補佐として着任し、改革の陣頭指揮を執っておられる。以前はスポーツ志望の生徒しか集まらなかった学校が、今では近隣から選択される高校として根付きつつあり、受験者数も増加傾向にある。

今年9月には新校舎の1号館が完成し、進学コース・アスリートコースの生徒たちが主に使用している。10年前に建設された2号館は上位コースのアドバンストコースの教室が入っている。正門の正面にあったピンク色の旧校舎は現在解体の真っ最中で、跡地には陸上競技場が設置される予定だ。

進学に力を入れつつある本校では、生徒全員にタブレット端末のiPadを支給。全館にwifiが通じているので、授業で電子黒板と連動した授業も行われている。新築の1号館ではトイレに最新型のシャワートイレが設置されたり、売店を併設したカフェテリア・レストランも目玉施設となった。食事メニューも、白い四角の皿にトマトソースのチキンソテーがイタリアンテイストたっぷりに盛り付けられてあったり、まさにカフェテリア・レストランの名に相応しい。

新校舎に合わせて制服もリニューアルされ、イギリスのロキャロン社のデザインが導入される。黒系のジャケットにタータンチェック柄のスカート。女子生徒の人気の的となることは必至だろう。バッグも従来のビニール製から革系の素材へ変わる。

さて、コースを見てみよう。コースは「アドバンスト」(25名×3クラス)、「進学」(38名×6クラス)、「アスリート」(5クラス)の3コースに分かれている。

アドバンストコースは最上位コースだが部活との両立が可能で、1年次はブリティッシュヒルズでの語学研修、2年次はハワイ語学留学が組まれている。進学コースは日東駒専を目指し、朝読書・朝学習・各種検定・模試・放課後の個別指導が用意される。アドバンストコース・進学コースともに4年生大学への進学率はほぼ100%。アスリートコースは国内でも最大規模のスポーツ専門コースで、スポーツ実習だけでなく救急処置法といった人命救助の指導も同時に行われる。2年次には修学旅行の代わりとしてサイパン海洋実習に出掛ける。そこでスキューバダイビングのライセンスを取得することがメイン行事となる。

本校は全スポーツ施設でナイター照明が完備され、接骨院レベルの医療機材も充実している。正門前には元の県立高校教職員住宅を改装した100名収容の寮があり、現在は80名程度の強化指定された部活動の選手が全国から集まって居住している。今後は中国など海外への生徒募集も働きかけていく。

もう一つ、本校の特徴は「e station=個別学習支援センター」があることだ。これは千葉県初の校内予備校で、大手学習塾のTOMASと提携している。生徒全員が所有するiPadを経由して映像授業の配信を受けることも可能だし、TOMAS式の個別指導ブースも多数設置されているので、通常のTOMASの授業が校内で受けられる。隣には個別型デスクが90席配された自習室も完備。毎日21時まで利用可能。

このように、「スポーツの柏日体」から「スポーツの盛んな進学校の日体大柏」へと着実に変貌を遂げつつある。アドバンストコースの現3年生の中には特待生制度の1期生も含まれており、来春の進学実績の更なるアップが見込まれている。

吹奏楽、ダンス、演劇といった部活動も県上位のレベルで活躍している。運動系は言うまでもないが、サッカー部には何と200名が在籍しているという。柏レイソルと提携しているので、レイソルのユースの子供たちは皆本校に入学しているが、全体で300~400名程度がセレクションを受けた上での選抜200名だから、その先は更に過酷ということだ。

本校への受験だが、2016年から柏市の全私立学校でインターネット出願が開始される。オープンキャンパスなどのイベントも人気が高く、参加には事前の登録が必要になった。毎回1000名近くが参加する。

校舎の改築に当たっては6億円程度かかるはずが、オリンピックの建設需要で1億円ほど跳ね上がってしまったそうだ。そのため旧校舎跡地の整備も遅れる見込みのようだが、新校舎はシャワートイレとかカフェテリアとか設置してある割にはシンプルで、むしろスマートな雰囲気が魅力だと思う。華美にすることへの無駄な投資はせず、実質的な教育内容に関わることに積極的に投資をしている様子がうかがえて、好感が持てる。

最後に生徒の雰囲気について。アドバンストコースは2号館で集中してのびのび勉強をしている様子。進学コース・アスリートコースは見学者が通過する度に通路の方を気にする「猿」な様子も見られ、新築の1号館の中で所狭しと机が並べられているだけに若干窮屈な印象も受けた。それでも数年前に訪問させていただいた時は、旧スポーツコースを中心に机に突っ伏して授業中寝ている生徒もたくさん居たので、それに比べても本校は格段に進化したなあと、感嘆せずにはいられないのである。

(9月11日訪問)