【1】
(1)(2)正負の数の計算→中1
(3)文字式の計算→中1
(4)等式の変形→中2
(5)平方根の計算→中3
(6)2次方程式の計算→中3
→小問6つだけで30点分。ここで点数を取らないでどこで取るの?という話。計算ミスは許されない。
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【2】
(1)資料の活用→中1
→「範囲・中央値・最頻値・平均値」がそれぞれ何であるかをしっかりと練習しておかないとイザの時に区別がつかない。逆に、この分野をある程度学習していればこの問題は出来る。
(2)ルートの中に入るnの個数→中3
→学校のワークの問題を日ごろからきちんと練習していれば出来るはずだが、入試では焦って個数のカウントミスが起こるかも?
(3)円錐の体積→中1
→三角形を自分で回転させて円錐を作る。「円の面積=半径×半径×パイ」「錐体の体積=底面積×高さ×1/3」という基本公式を使うだけ。
(4)ねじれの位置→中1、確率→中2
→空間図形の「ねじれ」とサイコロを利用した確率の混合問題。
まさに『人間コンピュータ』の正確さとスピードが命。逆に、それに自信がなければ手を出さない方が良い。時間無制限であれば、ねじれの関係の線分を書き出して容易に結論が出せるのだが。
(5)三平方の定理・円周角の定理を含む作図→中1,3
→大きい正方形の一辺をa、小さい正方形の一辺をbとして、(aの2乗)-(bの2乗)を正方形に作図せよという問題。ここで(aの2乗)-(bの2乗)=(a+b)(a-b)じゃないか?などと因数分解でもしてしまったらドツボにはまる。また、三平方の定理だということに仮に気づいたとしても、その先に「円周角の定理(直径の円周角は90度)」という定理が頭に浮かんでこないと作図処理できない。脱ゆとり教育を象徴する、ハイブリッド問題。偏差値60未満の生徒は、もはや作図問題に手を出してはいけないだろう、という気がする。
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【3】関数のグラフ
(1)2次関数の公式→中3
→ここで確実に点を取ってくれ!と出題者のお慈悲にあふれた問題。ただし、2次関数の式を作る問題に慣れていることと、分数計算に習熟していることが条件。だから、正答率の高くなる問題だが、大問1の計算問題を余裕でクリア出来ている生徒でないと、この問題にはたどり着けないのである。
(2)1次関数と2次関数→中2,3
→関数好きにはたまらない問題。ただし、どこに点Q,Rを位置づけるかという所で問題文の解釈がスッと頭に入ってこないと、どうにもならない。つまり、これが「知能検査」型の問題なのだ。ただ関数が得意ならば解けるのではなく、ここに問題文の読解力を組み合わせないと、解けないのだ。結果として、この問題を処理出来る生徒と出来ない生徒の線引きは、高偏差値帯でなされることになるのだろう。
(3)1次関数と2次関数→中2,3
→(2)に輪をかけて、さらに1次関数と2次関数の処理に習熟していないとお話にならない。ましてや「線分QR=3」になる地点をどのように探すかということで、地道に付近の交点座標を調べることになるが、とにかく時間がかかる。こういう問題を試験時間内に解けるのは、将来弁護士や医者になる「人間コンピュータ」型の頭脳。
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【4】証明問題
(1)相似の証明→中3
→基本的な相似の証明問題に慣れていれば、(a)(b)はどうにかなる。ここで4点を確実に取って、大問1の計算が満点であれば、合わせて偏差値40。(c)は内角と外角の関係を利用することになるが、図に○×といった等しい角度に印を打ちながら、角が二等分される根拠を探す。といってもそんなにじっくり考えている時間は無いため、(c)の正答率は低くなる。
(2)相似比・面積比、三平方の定理→中3
→逆に(1)の(c)でドロ沼にはまることなく、先に(2)を解いてしまおう。証明のあとの面積問題は、(1)で出てきた条件を利用しながらスイスイ進められる。ここで「面積比1:16」に注目すれば、「相似比1:4」という数字がパッと思い浮かぶのだったら、この問題は8割決着がついたも同然だ。時間がないからこそ落ち着いて、三角形CFBと三角形ACBを描き抜けば、あとはそこに線分の長さを書き込んでいくだけ。最後に三平方の定理で仕上げ。
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【5】格子上の点→学年外
(1)格子上の点の個数
→中学受験でも充分扱われる「知能テスト」的な問題。「先生と生徒の会話」により話を進めていく展開は、都立高校の入試問題の影響を千葉県が受けて真似するようになった、と私は解釈しているのだが。試験時間を鑑みると、(ア)(イ)あたりでせいぜいタイムアップか。(ウ)(エ)で頭のプラグが繋がるのに若干時間がかかる気がする。
(2)(3)格子上の点の個数を一般化する
→それでも、(1)の(ウ)(エ)の仕組みを習得してしまえば、それを一般化(nを使った式に)することは難しくない。ただし文字式の処理を除いては中学校でこの手の問題を扱うことは極めて少ないので、多くの生徒にはハードルを高く感じるだろう。中学受験をしたことのある生徒ならば、ホイホイ解けてしまうかもしれない。でも、中学受験をしていたら、県立高校を受験することはまず起こり得ないが…。
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【総括】
どの辺の学力帯に注目するかによって話の内容は変わるのだが、最低限の学力の話で言えば、脱ゆとり以降、勉強の苦手が強い生徒にはますます点数の取りにくい試験問題になっている。平成23年度までは「平行線と角」といった、計算の次に点を取りやすい問題が出されていたのだが、今や入試問題にその面影は無い。
なので、とにかくまずは計算。計算がおぼつかない生徒には、計算に特化して計算力を高めることに集中するべき。ここで点を取らずにどこで取るのか。また、計算が出来ていれば私立入試は更に対応しやすくなるというものだ。計算が一人前に出来るようになったことを前提として、その先に「角度」「1次関数・2次関数の式」の習得を位置づける。
その意味で数学は勉強しやすい科目ではあるのだが、入試問題作成者はどうも偏差値エリートの方にしか目を向けていないように思われ、多様な生徒を活かす入試問題には全くなっていないということをこれからどう考えるか。
全ての生徒が弁護士や医者になるわけでは無いだろう。勉強そのものからドロップアウトしてしまう生徒もますます生み出してしまう。努力の先に高い学力、ひとつ高い偏差値を目指すのは一つの指標としては貴い考え方だが、神尾塾をこれまで運営してきて、その枠に当てはまらない生徒も少なからず見てきた現実を踏まえて言うと、このような入試のやり方は決して普遍的だとは言えないだろうと思うのである。