大人の修学旅行~京都洛西編

12月某日。

[05:02 初富駅]
外は真っ暗、新京成で津田沼に向かう。まだ成田スカイアクセス線が運行していない時間帯のため、京成本線を経由する大幅な遠回りをしないと成田空港にたどり着けない。そもそもアクセス特急の始発が新鎌ヶ谷発6時30分、空港第2ビル着6時57分であり、これでは早朝のLCCに搭乗できない。京成電鉄は始発時間を繰り上げて5時台のアクセス特急を走らせるべきだろう。

[05:30 京成津田沼駅]
京成本線成田空港行きに乗り換える。すでに座席は乗客で埋まっている。公津の杜あたりからさらに混雑してくる。

[06:16 空港第2ビル駅]
改札を出たら、検問所で身分証明を提示しないと空港に入れない。

[06:40 第2ターミナル連絡バス乗り場]
ジェットスターのチェックインを済ませて、保安検査場を過ぎて1階に下りると待合室がある。そこから駐機場まで連絡バスに乗車。

[07:00 成田国際空港発]
LCCの駐機場は建設中の第3ターミナル(LCC専用)付近にすでに移設されていた。GK201便で関西へ向かう。今回もキャンペーン価格を利用して片道2,990円。

[08:55 関西国際空港着]
日本海側で猛烈な大雪を降らせている爆弾低気圧の影響により向かい風が強くなったため、到着が25分遅れた。

[09:31 関西空港駅]
電車への乗り継ぎタイミングが合わず、待ち時間が長くなってしまった。日帰り旅行の最大の敵は時間のロスである。JRの関空快速に乗車すると、天王寺より大阪環状線に乗り入れて西半円をぐるっと回って梅田へ。

[10:43 大阪駅]
西日本最大の駅、大阪駅。ミナミの難波に対して、キタの梅田に位置する。大阪駅の在来線ホーム6面11線をまたいで架けられた大屋根は2011年に完成した。当駅を訪れたら、必ず天井を見上げるようにしよう。ただし、冬は風が吹き込み、ひたすら寒い。

10時47分発の東海道本線で京都方面に向かうが、あまりの寒さで家に帰りたくなり、車中で東京行き高速バスの時刻表を調べたりしている腰抜け野郎が私である。

[11:11 高槻駅]
大阪と京都のほぼ県境にある高槻。駅前は大きな商業施設が立ち並んでいる。松坂屋の脇を抜けると下町的なアーケード街があり、そこを何となく歩いてみると阪急線の高架橋が見えてきた。大阪は一本路地に入るとダウンタウン的な年季の入った商店街や、質素な住宅地に出くわしたりする。都市化が高度に進んだ首都圏を見慣れている自分としては、そのギャップが新鮮に感じられるのだ。

[11:21 高槻市駅]
阪急京都本線に乗る。

[11:34 桂駅]
桂離宮の桂である。11時42分発の阪急嵐山線に乗り換え。

[11:44 上桂(かみかつら)駅]
徒歩の旅はここから。とにかく寒く、気温は5度程度。水田に目をやると、水溜りが凍結している。

[12:05 西芳寺]
世界遺産に登録されている西芳寺は通称「苔寺(こけでら)」と呼ばれている。正面入口に着いて、事前申込がないと拝観出来ないということを初めて知った。まだまだ予習が甘かった。仕方なく、寺を囲む道路を歩いて塀の内側の雰囲気を想像する。

[12:15 鈴虫寺]
西芳寺を離れ、小さなバスだまりを過ぎると鈴虫寺の看板が見えてきた。「ここが鈴虫寺か」と、寺の名前は聞いたことがあったので看板の示す矢印に従って進む。

石段を登ると山門脇に、お願い事を叶えてくれるというお地蔵さんが現れた。恋愛成就とかお願い事といった『祈願をあおる』のぼりや掲示物が目につき、私はそういったことを好まないので、手前のお堂で手を合わせて下山。拝観受付のおじさんが、引き返す私を見て「あれ~??」という声を上げていた。

[12:25 松尾大社]
5~6世紀にかけて、朝鮮から秦氏(はたし)一族が渡来してこの地域に住むようになり、松尾山の神を秦氏の氏神として祀るようになった。秦氏は酒造を得意としたため、当社は酒造の神ともされている。鈴虫寺に引き続き、こちらも鳥居から拝殿まで「結婚式受付中」などののぼりがずらっと並び、他にも祈願のPRに躍起になっているように見受けられたので、「長居は無用」と、拝殿での参拝を済ませて、そそくさと境内を出る。

[12:45 嵐山駅前]
1m幅の小川沿いに嵐山の住宅地を歩くと、阪急線の終点、嵐山駅が見えてきた。

[12:55 渡月橋]
桂川の河川敷では創作灯篭コンテストを行っていた。紅葉シーズンはとっくに終了しているのに、観光客は多い。真冬はそんなに絵になる景色でもなかろうに、と思うのだがあちらこちらで写真を撮っている。観光客のうち半数近くはアジア系を中心とする外国人のようだ。

[13:05 天龍寺]
後醍醐天皇を弔うために足利尊氏によって開山された天龍寺。後醍醐天皇が幼少期に過ごした場所でもある。庭園は国の史跡・特別名勝に指定されており、世界文化遺産。苔むした庭はどこを眺めても美しく、どのようなディテールであっても抜かりなく、味わいがグッと、こもっている。「地上天国」とはこのことなり。

[13:30 嵐電嵐山駅]
土産物店で囲まれた通路の先にひっそりと駅がある。京福電鉄嵐山線に乗車。ここまで上桂駅から3.5km。

[13:37 帷子ノ辻(かたびらのつじ)駅]
北野線に乗り換え。

[13:45 妙心寺駅]
御室仁和寺(おむろにんなじ)駅で下車するはずを、Suicaを探しているうちに一駅乗り越してしまった。

[13:55 仁和寺]
こちらも世界遺産である。二王門で拝観料を支払うと、左手の「御殿」に案内される。建物と四季を彩る庭の融合はもう完璧である。ここは宇多天皇が出家後に暮らしていたため、御室(おむろ)御所とも呼ばれていた。御殿を出て「さすが世界遺産」と感服しつつ境内図を眺めていたら、御殿は広大な仁和寺の一部でしかなかった。中門をくぐって、右に重要文化財の五重塔を眺めながら、正面の国宝、阿弥陀三尊の祀られた金堂へ進む。

[14:30 龍安寺]
仁和寺を出て、「きぬかけの路」を15分ほど歩いた。有名な石庭の前では、寒いのに多くの拝観者が縁側に座り込み、石の並ぶのを見つめて物思いにふけっている。私はその後ろをスタスタと進んで入場から5分で方丈を一周。勅使門から外に出ると、修学旅行の中学生グループから「写真を撮ってください!」と声を掛けられる。「写ルンです」のシャッターを押したのは何年ぶりだろうか。

[14:45 龍安寺前]
たったの1.5kmだが、京都市営バスを利用。Suicaは利用不可。全国共通ICシステムを導入すべきと思うが。

[14:52 金閣寺前]
バス車内もアジア系を中心とした外国人が本当に多い。

[14:55 金閣寺]
中学の修学旅行以来だ。教科書の通り、本当に金色である。分かりやすいシンボル的な観光地のため、外国人観光客でごった返している。庭園は国の特別史跡および特別名勝に指定されている。足利義満公もこの道を散策したのかと思うと、室町時代の北山文化が呼吸を通して自分の中に入り込んでくる。

15時10分、金閣寺を出て左後方を振り向くと、山肌に「大」の文字が刻まれた大文字山が目に入ってきた。すぐ近くだ。

[15:24 マクドナルド金閣寺店]
一人ということもあるし、特に豆腐や湯葉を食べるつもりは無かったので、ここで昼食休憩。

[15:50 平野神社]
マクドナルドから5分ほど。794年の平安京遷都の際より当地に鎮座し、「古都」の趣きを今に遺している。

[16:00 北野天満宮]
平野神社の正面鳥居を出て徒歩2分で北野天満宮の裏側にあたる北門に至る。北野天満宮は福岡の太宰府天満宮とともに菅原道真公を祀る全国の天神社の総本社となっている。社殿は桃山建築の国宝であり、三光門は重要文化財。境内では新年準備の真っ最中。

参拝を終えて正面鳥居を出ると「中立売通(なかだちうりどおり)」という道路標識が目に入る。以前、国語の古文でまさにこの「中立売通」が出てきた時に、私はこれを音読みして「ちゅうりつばい」などと頓珍漢な読み方をしてしまったのを思い出し、ひとり赤面する。現存する道路だったとは。。

観光客が通ることは無いであろう生活道路をひたすら南下して歩く。こういう所を歩きながら京都の町屋を発見していくのが面白い。町歩きのポイントである。

[16:35 ライフ二条駅前店]
鮮魚売り場で愛媛県産の「鱧(はも)」が売られているのを確認。旅行先ではスーパーマーケットを訪れて、野菜や魚の生鮮食品をチェックすべし。そこに地域の特色が出ているから。

ハモは京料理に欠かせない食材であるが、温暖な地域に生息する魚であるため、瀬戸内海から九州にかけて漁獲されている。関東で食べる機会はまず無いだろう。

[16:43 二条駅]
二条城は16時で入城終了。間に合わなかった。地下鉄東西線に乗車する。東京メトロ南北線と同じ、ホームと線路を完全分離する大型ホームドアが東西線の各駅に設置されている。

[16:56 烏丸御池(からすまおいけ)駅]
地下鉄烏丸線に乗り換え。

[17:14 京都駅]
東大名誉教授の原広司が設計した烏丸口の京都駅ビルは1997年に完成。当時の設計コンペでは黒川紀章、安藤忠雄ら有名建築家が競った。ガラス張りの原広司案には京都らしくない、と景観論争も沸き起こったが、そもそも京都における景観論争を起こすこと自体がこの建築の目的だったような気もする。また、原さん自身がこの建物について当時あまり語りたがらなかったような記憶が私にはある。

ダイナミックな人工谷をエスカレーターで中層階まで昇り、巨大なクリスマスツリーを眺めてから1階に戻る。改札を抜けて5番線から新快速・播州赤穂行きに乗車。

[17:52 大阪駅]
通勤ラッシュ真っ只中の大阪駅は大混雑。乗り換えも大変である。

関西のエスカレーターでは「左列から追い抜いて、右列に立つ」という習慣があったような気がするが、これは大分崩れてきたような印象がある。私の知る限り、大阪・京都圏以外の全国では「左列に立ち、右列から追い抜く」のが定番だと思うが、ここ大阪・京都でも、先頭の人間が左列で立ち止まってしまえば、後続の人間はそれに従って左列に立ち、急ぐ人間は右から追い抜くという光景が少なからず見られた。だから地元に住んでいない観光客が「関西では右に立つんだぜ」と粋がって右列に立つのは、もう好ましくないのかもしれない。

さて、大阪駅ではJRの関空快速に乗り換え。あえて有料特急には乗らない。ここもまた超満員。乗車した編成は、途中の泉佐野駅で関西空港行きと和歌山行きに分離された。

[19:00 関西空港駅]
空港内をくまなく歩く。「551蓬莱」のレストランもあり、たこ焼き・お好み焼きなど、大阪名物がここで一気に味わえると言えるほど多くの飲食店が並んでいる。

[20:20 関西国際空港発]
往路と同様、キャンペーン価格2,990円でGK210便に搭乗。

[21:40 成田国際空港着]
往復の飛行機代、現地での鉄道運賃、寺社の拝観料、食事代すべて込みで15,000円でお釣りが出た。新幹線ならば、片道だけで13,000円かかるということを付記しておこう。