中学生の進路と学習

松戸市を中心に活動されているBeansさん(軽度発達障害児勉強会)の会報「Jerry Beans No.51」に、「支援者からのアドバイス」ということで寄稿した。

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「支援者からのアドバイス~中学生の進路と学習」

個性ある子どもたちに対して、指導者としてどういう心構えを持つべきか。それは「人を見て法を説く」、この一言に尽きると思います。学習内容や教材、学ぶ速度をその子に適するように自在にアレンジする。この観点がまず大前提です。ただし、簡単なことばかり学習するのもいけません。ある程度は解きやすい問題に触れながら「僕は(わたしは)出来るんだ!」という自己肯定感を根本的に養いつつ、少し背伸びをしたら届きそうな問題にも触れさせていきます。固定観念に縛られず、目の前の一人の子どもに対して何をすれば、その子がさらにイキイキとしてくるのか。それを常に考えながら指導にあたっています。

さて、秋を迎えて、受験学年のお子さんは進学準備が本格化していることでしょう。学校探しについては、セカンドオピニオンを求められるのが良いかと思います。Beansさんの会員間での情報交換もあるでしょうし、学校や塾の先生に意見を求めるのも有力な一手です。お子さんを客観的に把握している先生方から提供される情報をもとに、学校見学をされてみてはいかがでしょうか。

他の学年のお子さんにとっては「宿題」がいつも大きな悩みの種となっているはずです。私がこれまで見てきた生徒の多くは、漏れなく宿題の処理に苦しんでいます。個人にあった内容・分量の宿題を出してほしい、というのが学校の先生方へお願いしたいことなのですが、なかなか容易なことではありませんね。

普通学級では、かなりの量の宿題が出されます。器用にバランスよくそれらをこなすことが出来れば何の心配もないのですが、スピードが遅かったり、ひとつの問題にこだわってしまって先に進めなかったり、その結果未完のまま提出することになったり、宿題を終わらせるという「形式」にとらわれて、その子にとって意義のある勉強が出来なかったり、その結果内申が低くなって「僕は(わたしは)出来ない」と自己否定の悪循環に陥ってしまったり。これは悲しい話です。

そういったお子さんについては、是非課題の「交通整理」をして頂きたいです。「この子にとって必要なことは何なのか」を考えながら、取り組みの優先順位をつけて下さい。必要度の高い問題には赤ペンで大きく○印をつけ、低い問題には問題文ごと×印をつけてしまいましょう(消えるボールペン、フリクションはこういう時に便利です)。そうして、お子さんの視覚にも分かりやすいように「するべきこと」「今はしなくてもよいこと」を明確に分けてあげるのです。これは、お子さんを甘やかす訳ではありません。出来るべきことを最小限にしぼりこみ、「自力で出来た」という達成感を体験させることが目的です。そして、残された優先順位の低いものは、解法を誘導するなりをして“わんこそばのおかわり”のごとく、“はい次!はい次!”とテンポを上げながら解答欄を埋めさせます。作業スピードを上げ、集中力も養うことができます。

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このNo.51号には、就労において必要なのは「コミュニケーション能力」と「愛される能力」である、といった話題、また、公立高校見学、茶話会(日大松戸歯学部の先生の話を聞く)、親子レク(書初め指導)などの行事案内が掲載されている。とても充実した内容。

Beanさんには今後も活発な活動を展開していただき、多くの不安を抱えるご家庭の更なる助けになっていただきたいと切に願う。