新入塾の生徒に思うこと

現在神尾塾で普及している礼儀・あいさつの類は数年前の卒塾生T・R君が遺していってくれたものだ、ということは度々この塾通信で書いている。当時、中3生だった大山口中のT・R君は学校では時々問題を起こすガキ大将だったが、塾内ではとても紳士だった。「失礼します!」「こんにちは!」「お願いします!」「はい!」「分かりました!」「有難うございました!」「さようなら!」「失礼しました!」・・・ハキハキとしたあいさつと、その発するタイミング。両手で物を渡したり、相手の向きに回して渡したり。

勉強は苦手でも、礼儀・あいさつの面では非の打ち所がなかった。当時の塾生が感化されて、彼を真似するようになった。それが現在の神尾塾で繰り広げられている礼儀・あいさつに繋がっているし、私としても明文化して塾規約に盛り込むようになった。

トイレの利用前後で「トイレを借ります!」「ありがとうございました!」と、よく考えればそこまで言わなくても充分だろう、と思えるようなことでも現在の塾生に継承されている。これが文化というものなのだろう。きっかけを作ってくれたT・R君の功績は大きい。

現在、新入塾の生徒を見ていると、もちろん当初から立派に礼儀・あいさつが出来ている生徒もいるし、また塾規約を熟読してから緊張感をもって初回授業に臨んでくれる生徒も圧倒的に多い。しかし、これとは真逆に、「え、これも注意しないといけないの??」と私の中で疑問符が何個も浮かび上がってくる生徒が現れるのも事実だ。

「ほら、物を渡す時は向きを変えて相手に渡さないと・・・」「両手で渡す!」「今、ここであいさつをするんじゃないの?」と、一つひとつを指摘していくのは本当に疲れる。「メールを受け取ったら返信する!」こんなことでさえ注意しないと分からないのか、と暗澹たる気持ちになるのだが、一つひとつのケースを規約に盛り込んでいったらキリが無い。

(現在の規約には「押印はブレないように」とか「月謝袋は大切に扱う」とか、非常にレベルの低いことを書いてあるが、私としてはそんな下らないことは書きたくないのだが、守っていただけない例が過去に少なからずあったから、仕方なく書いている)

ご家庭においても、初回授業料は第1回授業時に月謝袋を渡されたら、第2回授業時に持参するのが10人のうち9人だが、中にはなかなか持参していただけない場合もある。どうしても苦しいならばきちんと事前に事情を伝えてくれさえすれば良いものを。無言のままで生徒だけ寄越されても、それは飲食店における無銭飲食と同じだ。こちらはボランティアではないのだ。あくまでも、少しでも高い品質の指導を届けようとしているプロなのだ。

神尾塾でさえこのような感じなのだから、世の中はもっとグダグダなのだろうと思う。

確かに、昔私が勤めていた学習塾では授業料の滞納というケースも複数見た。大人まで話を広げると際限がなくなってしまうが、少なくとも生徒は「おっ、この子はやるな。しっかりしているな」と周囲から好感を持たれる生徒に育てたい。世の中は厳しく、また、どんな場合でも見ている人は必ずいるものだ。「何、あの子?大丈夫?」とか思われてしまうような人間にはなってほしくない。