黎明第24章「教育」

『黎明』(葦原瑞穂・著、太陽出版)第24章「教育」より抜粋要約

◎昔から本当の教師は、決して手取り足取りして教えるようなことはしませんでした。なぜなら、何であれその人が自分で導き出したもの以外は、その人にとって真に役立つものとは成らないからです。従って教師にできる仕事というのは、生徒が自分自身で答を出せるように手助けをするぐらいのもので、このようにして生徒が答を出したときに初めて、教師も答を得ることができるのです。

◎学習の価値はあくまでも、それぞれの生徒が現在の到達点からどれだけ進歩したかに置くべきで、他人との比較は何の意味もないことを、生徒は勿論、親や教師のひとりひとりが徹底して理解していなければなりません。

◎大人が自分自身の人生さえ謳歌していないのに、子供に対してこうしなければならないとか、ああしてはならないとか説教したところで、その人のいうことが真実ではないことは即座に判ってしまいます。まず大人自身が愛に因って生きることが必要です。そして子供のひとつひとつの行為を否定的に見るのではなく、子供に内在する神性の展開を、絶対的に信頼して観守っていくことが何よりも大切です。

例えば保育園でお遊戯をしようというときに、ひとりだけ皆と一緒にやらない子供がいたとします。このようなとき教師はどのように対応するでしょうか。もしこの子供に対して、皆と一緒にお遊戯をさせるように仕向けるのが教育だと考えているのでしたら、その方は速やかに退職して頂くのが世の中のためです。

子供がお遊戯をしない理由は色々ありますが、本人が心の底からそのようにしたいと言う気持が起きないのに、優しくなだめたり厳しく叱ったりして、皆と同じことをするように強要すれば、自分を偽って周囲の状況に合せることを覚えてしまいます。これでは世渡りは上手くなっても、真の生き方からは遠ざけてしまうことになるのです。そして周囲から良く評価されることを、自分の本当の意志に優先させることを続けていると、次第に自分の本当の意志が判らなくなり、その人の人生における役割を果すことができなくなってしまいます。同時に潜在意識の中では、自分の本当の意志が表現できないままでいるわけですから、これは色々なストレスとなって目に見える部分に現われてくるようになります。

教育は、子供達が人生上で出逢う様々な問題を、自分自身で解決していくことができるようになるための、手助けをするものでなくてはなりません。そのためには知識の伝達だけではなく、精神的方法について教えなければなりませんし、それが単なる知識に留まることなく、あらゆる状況において内在の智慧を発動できるようになるための、訓練を伴っているべきです。