岩倉高等学校(台東区)

JR上野駅入谷口の正面に位置する本校。明治30年に創立し、校名は岩倉具視公に由来する。国内の鉄道高校は本校と池袋の昭和鉄道高校の2校のみ。機械科および商業科は既に廃止され、旧スポーツコースも普通科総進コースに吸収。現在は普通科(S特・特進、総進)、運輸科(鉄道総合)の2コース体制となっている。運輸科では1年次に駅業務(旅行管理、観光)、2年次に車掌業務、3年次に校内にある運転シュミレーターを用いて運転業務を学ぶ。

近年、JRや地下鉄を乗っていても女性乗務員を見かけることが多くなったが、男子校であった本校も今年度より共学化。女子生徒に対応するため、ベテランの50歳代女性教員の採用も進めている。生徒の通学範囲は広く、宇都宮、静岡、浜松、那須塩原など遠方から通う生徒もいる。新幹線通学ということだ。房総半島の千倉からローカル線を乗り継いで通う生徒もいる。

卒業後の進路は進学と就職が約半数ずつ(大学30%、専門学校20%、鉄道関係の就職25%、一般就職25%)。ただし、来年度の生徒募集が普通科275・運輸科175で、運輸科を抱えながら進学校化を進めているため、進学割合の方がこれからは高まっていくだろう。就職については秋田内陸縦貫鉄道などの地方私鉄に就職する者もおり、また場合によっては希望の就職が叶わずに立教大学の観光学部や日大理工学部の交通システム工学科など、鉄道関連の進学先を求めて、その後大卒の形で鉄道関連に就職する生徒も出てきているという。

校舎は5年前に完成した中央校舎を囲んで、正門付近に電車運転実習室、他に実習施設を収容した古い校舎が建ち並ぶ。校庭は無く、中央校舎7階の体育館および屋上で体育を行う。ちなみに体育館は人が歩くたびによく揺れる。野球部とサッカー部は、武蔵境の西東京グラウンドへ移動。部活動は、高校には珍しくワンダーフォーゲル部(野外活動)、ラクロス部もある。鉄道研究部に鉄道模型部、工作研究部(ミニSLの製作)もある。また、共学化にあたって女子も入部しやすいようダンス部や吹奏楽部も設置された。吹奏楽部には特別顧問として大滝実先生を迎え、大滝先生は校長補佐にも就かれている。

さて、私としては2年ぶりの訪問であったが、少々元気に欠けている気がした。正門脇の警備員室の前を通って入場したのだが、「おはようございますー」とあいさつをしても警備員はウンとうなずくだけ。ウンとは何だ。

案内の先生方も、小さな声で挨拶をする方ばかりで、逆に面食らってしまった。「おはようございますー」とこちらが発すると、ボソッと「こんにちは・・」という感じ。浅井校長も、開始前の説明会会場でも立ったり座ったり、手持ち無沙汰な様子だった。学校によっては校長自らが正門に立って大声であいさつをしながら来場者を迎えてくださる学校もあるのだが。開始後の浅井校長のスピーチも、震災後がどうのこうのという今更感が否めない話でメリハリがない。むしろ、閉会のあいさつに立たれた大滝実先生の方が、独自の話題を提供するとともに声に迫力があり、聴衆の関心をひいていた。

2年前の訪問時には元気な岩倉高校があっただけに、今は何かがあるのか、それともたまたまか、私の思い込みか、気になるところではある。

追記
就職について。鉄道系を含めて、就職には万全の対策をとってくれている。授業も数学演習ではSPI対策をはじめ、小中高の各学年の必要な算数・数学力をおさらい、セミナー、面接練習にも力を入れる。校内で適性検査のクレペリンテストも実施。就職にはクレペリンテストや体力テストなど、就職先の試験の特徴と生徒の現状に合わせて「君は面接志向で行け」「君はクレペリンで行け」「君は学力を鍛えなさい」という風にアドバイスをしてくれる。

(6月9日訪問)