アスペルガー症候群【3】 大人の思惑通りにいかない

通常の学習では、一つの問題を解くのにしても途中式を書きながら順序立てて考えていくように、階段を1段2段と下から順に昇っていくのが定石だが、アスペルガー症候群の子にその方法は通用しないことが多く、むしろそれは彼らにとって苦痛であったりする。

また、例えば学校の定期テストにおいて「あれほど練習したのに…」と悔やまれるほど練習を繰り返した問題が解けず、逆に練習段階で触れさえもしなかった問題が正解していたりする。極めて大人の思惑通りにいかないのだ。

彼らは学校の授業を「聴いているようでいて聴いておらず」、また、「聴いていないようでいて聴いている」ことが多い。だからノートが上手にとれていなくても、断片的に頭の中に授業で学習した内容が入っていたりするから、そのためにテストでは低空飛行にならない程度の一定以上の点数が取れたりする。

ただ、行動面においても勉強面においても、一般に求められる学生としての態度から程遠い表現を繰り返してしまうため、理解のない大人からは「何をやっているんだ!」と怒られ続けることが日常で、通知表を含めて他者からの評価は低く、結果として本人自身の劣等感を強めてしまう悪循環となっている。

先日の塾通信で「アメリカのスーパーエリート教育」を紹介したが、これと比べて日本の教育は学習の選択肢が少なく、その少ない必修科目の中で生徒に評価を下すため、アスペルガー症候群のような独特の特性を持った生徒にとっては息苦しすぎるのが現在の日本の教育だ。

この点で、必ず学ばねばならない基本項目の学習は含めるとして、選択肢の多い柔軟なカリキュラムと授業設備というものを構築していかなければならないのは言うまでもない。神尾塾でも、いち私塾として出来ることを追究していきたいと考えている。